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第七十三話 目に入れても痛くないピアノと産まれる愛情

第七十三話 目に入れても痛くないピアノと産まれる愛情

「子、子供って、俺の子供?!」

「当たり前ぢゃない、56すわよ、もちろん産むわよ」

「即答やなぁ〜 当たり前やん、産んでください。やっぱ俺の聖師は最強!!」

「パパになるんだから、会社、落ちる落ちないとかぢゃなくて、何をやっても良いから、家族を守ってね」

「わかったよ」

と、早苗ちゃんを抱きしめた。

 

実は、いつか別れるんかなぁ〜とか、正直想っていたがもう逃げられない。

 立ち飲み屋のマスターが言ってた

「いつか、時期が来たら若い女は逃してやれ」が頭の片隅に残っていたのだ。

 世捨て人ではなくなるのか?!と想いながらも、

 (この歳で子供作れるんやなぁ〜)

と自分自身に感心した。

 

 近くの女の子が、下手くそなピアノを弾いている、本当に下手くそだった。

 何度か「うるさい!!下手くそ、練習しろ!」と、全く矛盾した事を叫んでやったので、練習の質をあげるのかと思いきや、全く練習は改善されず、下手くそは治らなかった。

 下手すりゃ、夜の十一時くらいまで弾いている。親が阿保なんだろう。

 せめて夜の九時を回ったら、ピシャっと辞めろよ。とは思うが、子供が可愛くて仕方がないのだろう。世の中に甘え腐っている。

 けれど、自分自身にも娘が出来たらピアノを習わせるんだろうか?!遅くまで弾いても、うるさいのに剣道の竹刀で自転車を叩く馬鹿でも、

「可愛い可愛い」と言うのだろうか?!

 (道場行けよ)

 今日のいっちゃんは、下手くそなピアノも雑音には聴こえなかった。

 

「なー、女の子だったら、ピアノを習わせんの?!男の子だったら野球、大谷翔平!!」

「そうねぇ、普通の子でいいわ」

「俺は普通ぢゃないんだろ?!」

「だからよ、普通が一番尊いんでしょ?!あなたいつも言ってるぢゃん」

「めっちゃ、矛盾してるけどな、でも、

あなたって 、 奥さんかよ」

「お父さん」

「お母さん」

 二人で笑ってしまった。

「腹減ったなぁ〜 でもウヰスキー出して、お祝いでしょう」

「ご飯も食べてよ、これから晩酌は毎日は駄目よ、健康作って貰わなきゃ」

「そーやなぁ〜 酒とタバコならタバコを辞めるとか言いたいけど、タバコは当分辞めれそうにないし」

「明日は会社休んで病院に行って来るわね、間違いないわ、子供出来てる」

 早速、丸男に電話した。

「俺親父になったぞぉ〜」

「知っとるわ、かずみちゃんに聞いた」

「何や、知らんかったのは俺だけか?!」

「かずみちゃんと代るわ」

「おめでとう、お父さん」

「何や丸男とおんのかよ、ありがとう、就職も頑張るわ」

「早苗に、お祝い何がいい?!って聞いといて」

「うん、まだ確定していないけどな、くれるなら頂戴!!」

「馬鹿ね、間違いないわよ、おめでとう!」

「ありがとう」

 こう言う時は、同じ事を何回も言うもんである。

「さあ、明日はどうなるか?!」

「どうにも何ないでしょ!!」

「超能力はどうしたの?!」

「知らん」笑笑

そう言えば、早苗ちゃんは、どちらかと言えば少食なのに、すき焼きの残りを食べていた。

(やっぱり子供出来たら食べるもんなんや〜)とずっと観ていたら、

「まだ食べる?!」

 と言うので、

「いや、いいよ、母親になったら、やっぱ食べるんや」

 と言うと、

「豚になるから」

 と言って笑ってしまった。

「あっはっは、豚でも可愛かったらいいよ」

 早苗ちゃんは睨んでいた。


 続く〜

 

 

 

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