表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/69

66話  記憶と思い出

 【 11歳 晩秋 】



 いよいよ前夜祭。今年は俺も出品する。俺の作った料理は……

いや、俺が道具を作り、メイドが料理している物は型で作る人形焼きである。


少し固めの蕎麦の実(ガレット)円錐(コーン)に、甘さ控えめな冷やしたぶどうの皮のジャムを入れ、小麦粉でできた(たこ)の足が刺さっている。


反応は微妙…… う~む。夏に出せば良かったかも。


妹だけは気にせず口からタコの足を生やして笑っていた。



あと、お店では出していないが俺の作った調味料が一部のエルフに…… いや、一部の男たちに好評だった。その調味料はタバスコもどき。倉庫の片隅に仕込んであった物を今回、カルニナフさんに持って来てもらったのだ。


酢などの調味料と香味野菜で味を調え、ピザや肉料理に使ってみたが中々に合う!


ただ、一番にエルフの男たちの心を掴んだのが、大根の浅漬けだった。あの、(えっら)(カラ)い大根を角切りにし、塩を振って半日。その後、出た水を切ったそれに大量のタバスコを掛けた物に彼らは嵌まった。


そのまま食べても良いのだが、彼らは更なる改変をした。


その食べ方は豪快! 拳 2つ分もある焼いた肉塊に切れ目を入れ、間にネギ類と共に大量に挟むのだ。ホットドックの逆パターンで、噛み切り易く切り込みも入れてある。俺には辛過ぎて、食べれなかったがなっ!






 「うぁ~ あれが魔法が上手になるお料理?」

日も落ち、チリチリと炙られる『山越え』の丸焼きを見て妹が驚いている。


「あの奥にある、お鍋の方だね。アリーに聞いたの?」

「はい! 姉さまがいっぱい食べたって言ってました!」


「多分かなり後半まで無くならないから、先に他の食べ物を見てくると良いよ」

「え~ 先に行きましょうよぉ」

「最初に行くとお腹が辛いんだってば。まずは軽い物を食べようよ。

 ……あれ? 兄様は?」

あれ? いや、ホント、何処行った? さっきまで居たろ。


「エルフのお知り合いと食事するそうですよ?」

「あ~ 他の丸焼き消費に連れていかれたんだな……」


お兄ぃは 1村の警備隊と仲が良いから移動したようだ。


「じゃあ少しずつ、ゆっくり、いっぱい食べよ~」

「よーっ」


屋台のある会場には商人など外部の人が座って食べれるテーブルも用意されているが、俺たちは人形焼きの屋台の後ろでメイド達と集まって食事を開始した。



『ルァニ~ 通りの中央までおいでよ。そろそろメインディッシュ切り分けるよ~』

少しして、ルティ姉から念話が来た。


『 3村のところのお肉を貰う予定ですよ?』

『いや、もう一体の方だよ。提供者なんだから早く早く。みんなも連れておいで~』

『わかりました。向かいます』

『待ってるよ~』


「ルティ姉が料理切り分けるからみんなでおいで、だって」

「そおなのです?」


「若様が仕留めた、あの大きな獲物の事だと思います」

「どうやって食べるんだろうね。行ってみようか」

「はーい」

「お店閉じておいて良いから、みんなで行こう」

「「「「はいっ」」」」



「ひっ」

トンボの剥製(はくせい)を見て妹が小さな悲鳴を上げる。

解るぞ。驚くよね。


広場の一番広いところ、十字路じゃないと置けないくらいにデカいもの。


「に、兄さま。こんなのが居るのですか?」

妹がトンボの頭から目を離さず質問してくる。


「あの樹の反対側に居るみたいだよ」

「……」

妹が無言でしがみついて来た。


「大丈夫だよ。人間は襲わないそうだから。今回は『山越え』の狩りで偶然獲れたんだよ」

「「偶然?」ではないような……」「……」「若様が獲りました」

早速訂正するメイド達。


「ほら、分けて貰いに行こうよ。ねっ?」



「よーし! ルァニエスも来たなっ!」

会場に入るとヴェイザルトさんから声が掛かる。


「では、皆の衆! 今年の狩りには乱入者があったが無事怪我人も出ず、見事仕留める事ができた。各村から料理人を出してもらい色々な料理に調理した。みんなで戴くとしよう!」

「「「お~~」」」


料理に近づくとルティ姉が居た。

「ルァニー、来たねっ じゃ、良い部分をあげようっ」


ほんと、いろんな料理があった、焼いた物から蒸した物まで様々。中には生の物まで。

「虫の内臓を生で何て大丈夫なのですか?!」

「虫? あ~ 虫に限らず内臓の生はダメだよ。これも生に見えるかもだけど調理済み。これ付けて食べると良いよ。どーぞっ」

「……うーむ」


「んっ 美味しいですっ!」

「フィニ~?! 躊躇(ちゅうちょ)無いねぇ」

「ルティ姉さまが言うなら正しいのです」

「若様! これ、美味しいですよっ」


実際食べてみたら、かなり美味しかった。


トンボも大きい体を得た事で内臓が独自進化したっぽい。動物と異なる食感だった。だが、どこの部分を食べたかは不明だ! 言われても判らんっ






 トンボの会場は結構な人だかりで賑わっている。目の端で誰かが俺に指を指していたので目を向けると、少し遠くにグラリエントさんが居て、その横で兄が小さく手を振っていたので手を振り返す。


『お前のアニキに空での活躍を宣伝しといたぞ』

グラリエントさんから念話が来る。


『飛行制御の殆どはヴェイザルトさんなんで控えめにお願いしますよ~』

エンジン役の俺は上下と進む速度しか貢献してないからな。


『もうルァニエスがこいつを森に叩き付けたって言っておいたぞ』

『いやいやいや。方向を誘導しただけだし』

『はははっ それでもだ。自慢しとけ』

『うーむ』


後で兄に訂正しとかねば…… と言うか、お兄ぃ背が伸びたか? グラリエントさんよりは小さいけど体格が良くなってる気がする。成長期っていつだっけ?



ロァヴェルナさんが居た。

「ロァヴェルナさ~ん」

「あら…… 賑やかね。ご相伴(しょうばん)(あずか)りに来たわ」

「どうぞ、どうぞ」

「……」


どうも念話中っぽい。念話って並列思考、高速思考をしていても念話相手へ言葉を話す速度で思念を送っているので、同時に会話はし(にく)いんだ。もちろん並列思考のおかげで会話が抜けたりはしないけどね。


「……フィルトルァに念話してたのよ」

「母様? あれ? 母様って念話できるのですか?」

「色々相談したり報告する事もあるしね。夏頃に刻印したわ」

「ふ~ん」


「こっちの祭りが終わったら子爵領に伺うって伝えておいたわよ」

「そうですか、ありがとうございます」

大きな『山越え』を持って行かないとな。


「それと、ルァウフェイムから相談を受けたのだけど、ルァニエスが帰ってる間、エルフの里に居たいんですって。それも相談して許可が下りたわ」

「えっ そうなんですか?」

「余りこちらに来れないからね。良いんじゃないって」

「そうなんですね」

俺がこっちに来てる所為で兄が来る機会が減ってるんだよな、きっと。申し訳ない……


「帰ったら母様の念話教えて貰わないと。 ……あれ? もしかして、この前の全体念話って母様にも聞こえてました?」

「フィルトルァは特殊な振り分けにしたから聞こえてないわ。元々あなたのはいつか消すと思ってたから 7村の所属になってるのよ。あなたがちょっと特殊な状態ね」

「そうなんです?」

「そうなんです。 ……一斉念話は後で気付いたのよ。人間にエルフの緊急招集とか聞こえても意味ないでしょ?」

「そうですね。私も変更した方が良いですか? エルフの里内の秘密な話とかもあるかもしれませんし」

ぐっ これは……


「あなたは今更なのよねぇ 悪意があったとしたら、消してもあなた、書き直せるでしょ? ちょっと色々教えすぎたわ。修正するにしても少し実験しないと。記憶保護側に影響与えたく無いしね」

「ご配慮ありがとうございます」

それは助かる。深々と頭を下げた。国家間問題なら()む無しと諦めてた。


「いいのよ。他の長老たちとの会合で決まったのよ。変に記憶を消してルァニエスとの友好的な関係が壊れるのが怖いわ」

「助かります」

「メイドちゃん達に聞いたけど記憶保護を使いすぎっ 記憶が消えると凄い喪失感(そうしつかん)があるし、補間される記憶の所為で性格も変わりかねないのよ」


「メイドの 4人も拙いですかね?」

「あっちは性格までは変わらないと思うけど、あなたの事を忘れかねないわね~」

「うーむ…… 他にも子爵領で念話使える人は居るのですか?」


「フィルトルァだけよ。フィルトルァにはあなたにできない相談とかしてるから」

「そうなんだ」

「……隠し事とかじゃないわよ? ほら、下着の件とかあったでしょ?」

「ぐっ その節は……」

「まぁ そんな感じよ」


下着の件は…… 機会があれば話すとしよう。


あったらなっっ



記憶固定刻印を消すと、その上に載ってるアプリである記憶保護と関連の思い出が消えるので友好度とか親密度的な物が無くなります。

ロァヴェルナさんは言ってませんが、特に主人公の記憶は魔法関連が多いので、魔法を教えてくれた人や一緒に改良した人など、関連したかなりの人数との思い出も消えるはずです。そこへ喪失感が来るので再度友好的に接して貰えるかを懸念しています。通常では使用しな脳の領域を指定しているのが原因です。


書き直せるかは不明。記憶固定を消して再度書いた事例がありません。記憶は戻らないはずですが、脳をフォーマットした訳では無いので座標指定が戻ると記憶保護がどうなるやら。ロァヴェルナさんは念話アプリ上のアドレスのみを書き換える魔法の開発を検討しています。当然今現在無いです。



裏設定:

エルフの 7つの一族は現在、それぞれ魔法の属性を研究する事にしており、7村は精神属性担当です。現長老の内、ロァヴェルナさんだけは現役で精霊樹の捜索をしていたので、1村出身で父と共に旅を続けていた異母姉から生命属性魔法を教わりました。700歳近く年上で、内臓の機能など魔法以外の知識と経験を教わっています。


治療術の弟子が居るのは、今の里ができ 1村から 7村が合流したものの姉が亡くなったので恩として 1村に技術と知識を戻した為です。弟の陶芸師匠は 7村の村長業をしながら村の開発をしてました。今は師匠が長老なので、師匠の息子が精神属性魔法の研究をしています。あと、エルフの国から旅を始めた父親より習った刻印術と、精神属性魔法を組み合わせたのがロァヴェルナさんです。


主人公が知らない事は本編にはでてきません。

今後、本編で語る事はあるのかなぁ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ