51話 颯爽! エルフレンジャー
颯爽です。
【 11歳 春 】
それからしばらく経って漸くロァヴェルナさんが来た。
「お待たせ~」
「お疲れ様です。結構重症だったのですか?」
「何か所か骨が折れてたから、開いて確認しなければいけなかったのよ」
「そうなんだ。そんなに強い魔物が出たのですか?」
「いやいや」
ぶんぶんと手を振って否定する。
「飲みすぎて喧嘩になった挙句、止めに入った長老に暴言吐いて 2人纏めて殴り飛ばされたんですってぇ」
長老……
「……そうなんですか」
「じゃ、記憶固定をしちゃおうか」
「あ~ それなんですけど、何かへんな状況なんですけど……」
「ん?」
「記憶が増えたって言ってるんですけど、そんな事例ってあるのですか?」
「え? 待って。もう書いちゃったの?」
「消せるし大丈夫かなぁと」
「固定対象の調査魔法、知らないよね? んんん? もしかして、ルァニエスと同じ刻印書いたの? ……どうなるんだろ?」
「え? これ全員違うんですか? 固定の意味しか無いって言ってませんでした?」
「そうだけど、固定する対象は指定しないとダメだもの。じゃないと最初に教えれないじゃない」
「へ~ ……え? じゃ、もしかして私の頭の中が覗かれてる?」
「どうなんだろ? レイ、どんな記憶が増えたの?」
「色々な魔法でしょうか?」
「具体的には?」
「土魔法とか距離魔法です」
「あれ?? 念話は?」
「念話?」
「ちょっと待ってね?」
ロァヴェルナさんから念話が来る。
「「「「ん?」え?」」」
おいおい…… 全員着信?
『うぁ~ 何でしょう、これ』
『凄いです』『……』『わぁ……』
『……ちょっと待ちなさい、あなたたち』
「あなた経由で全員に繋がるわね……」
内線電話かよ。
「どう言う状況なんだ…… 消した方が良いですよね」
「そうね。不便でしょうし。 ……あれ? 不便なのかしら? と言うか、あなた魔法の知識を記憶保護してるの?」
「コツを覚えて、いつか本でも書きたいな~って思ってたんですけど」
「普通、一度使えるようになったら忘れないものよ?」
「混乱して使えなくなるって言ってませんでした?」
「理解度の問題なんだから、その場合は理解度を下げた原因を忘れる必要があるんじゃないかしら」
「保存してても無駄なのか……」
「どうする? 書き直す?」
「あ、あの。もし可能でしたら、このままにしていただけないでしょうか?」
「「「お願いします」」」
メイドたちが頭を下げる。
普段の記憶は見えないそうだし、しばらくこのままでも良いのかな?
どうやら記憶を共有すると理解度も共有する事になるみたいだ。流石に原子の知識なんかは記憶保護して無いから同じには成らないだろうが、一通り使えるのは良いな。
「魔法がある程度使えるようになってから消して書き直せば良いですかね?」
「どうかな? 使えなくなる気がするんだけど」
「そうなんですか? 使っていけば自分の経験なんじゃないのですか?」
「理解度の問題だからねぇ 普通は記憶共有しても使えないの。あなたの記憶保護に理解が含まれているからこそ使えるのよ? 理解した要因が消えたら使えなくなる可能性の方が高いと思うわ」
「そうなんだ……」
「まぁ、良いんじゃない。 ……ただ、エッチなのとかを記憶したらメイドちゃん達にバレちゃうからね。注意しなさい? うふふっ」
ちらっ
「えっ ダメですよ、若様~」
「今のところ無いですよ。大丈夫です!」「……」
「見なかった事にしますので……」
「仮に、私にもう一つ記憶固定と記憶保護の魔法の起動ってできるんでしょうか?」
「無理よ? 最初の刻印を決める魔法を改良しないと同じ座標になってしまうもの。どちらかと言うと、記憶の書き込みの魔法の方を改良するしかないんじゃないかしら。あ~ 思い出すのに別の魔法も必要になるのか…… 考えた事もなかったわね」
「そっちか……」
共有ホルダー化されてしまっている俺の記憶にもう一つ別の記憶ホルダーを作ろうと思ったのだが、必要なのはそれに新たに書き込む命令の方らしい。
「ちなみに、消したら固定していた記憶は完全に忘れるわよ? 覚えてた事すら忘れちゃうわ」
ちらっ
ダッシュで逃げるメイド。
小一時間の鬼ごっこの末、何を見ても他の人に教えないと言う取り決めがされた……
いくら相手が女の子とは言え、11歳じゃ 16歳に勝てないってぇぇ
◆
ロァヴェルナさんのお手伝いがてら治療でも習おうと思ったのだが、護衛担当が暇になる。そこで装備を整えた上で、エルフの警備隊に指導をお願いする事にした。
とは言え、まずは装備の強化。武器の鉈は全て魔導器にした。マナ共有でナマに余裕があるので切れ味も装備強度も強化が可能だ。
そうだ! そのマナ共有もちょっとした勘違いがあった。
どうやらメイドたちは俺とマナの共有をしてるらしい……
どうもこのマナ共有刻印って言うのは一対の刻印らしく、ロァヴェルナさんからマナの供給をされたいなら俺に書かれてる刻印を書く必要があったようだ。同じ刻印だと思って俺がロァヴェルナさんに教わって書いた刻印をメイドたちに書いてしまったのだ。
おかげで繋がってる先は俺!
考えたらそうだよな。送信先の情報が無いわけが無いっ!
どうやら俺の最大マナ容量はメイドより多いみたいなので、このまま放置する事にした。どの道、ロァヴェルナさんから離れるとマナ共有刻印は働かないからな。
話を戻して、武器なのだが、鉈には 2種類ある。鉈の峰側に小さな鶴嘴のような突起があり、先の方に突起が有れば牙付きと呼ばれ、柄近くに有れば爪付きと呼ばれている。牙付きは相手に刺してぶら下がったりでき、爪付きは刺したあと傷を広げるのが目的で手前向きの刃になっているんだわ。
爪と牙の両方が付いた物は無く、対で持つので手の代わりになるよう発展したっぽい。防具は使わないようなので作らず、盾は小さめの物で背負える物を支給した。
後はこの森の魔物の強さ次第だな。
時間があったのでメイドたちに記憶保護を覗いてどれほど魔法が使えるようになったのか聞いた所、結構バラつきがあった。まず、水は誰も使えず、土と火、生命はみんな使え、距離は 2人が使えた。同じ本を読んでも理解が異なる感じなんだな。多分覗いて得た知識以外に持ってた知識や経験、想像力が関係してるんだろう。
暇な時間に指導してあげようかな。使える魔法が増えた方が怪我は減るだろうしな。
【 晩春 】
エルフの警備隊の見学をさせて貰う事にした。今日はメイド担当も護衛として参加しているので、俺を含め 5人の参加である。識別の為に色違いの線の入った怪しいマスクを付けた 4人組。武器も両手に鉈、相当怪しい。もちろん俺もなんだろうが。
一先ず、ウチの護衛の力量を確認する事になった。
連れて行ける範囲が変わるからな。
まず、弱い生き物を 4人の前に誘き出し戦闘をさせてみる。不安だったのだが、あっさり撃破。それから徐々に強い魔物に変えて行きお昼頃に審査は終了した。
「想像以上に強いじゃないか。武器に頼りがちだが、落とさなければ問題も無いだろ」
「「「「ありがとうございます」」」」
「では今日は中盤手前の魔物の間引きを行なう。ルァニエスの護衛が優先だが、倒せたら倒してくれ」
「「「はい「判りました」」」」
そこから結構奥へ移動すると、中々雰囲気が恐ろし気なところに着いた。これは怖いわ。
エルフの警備隊は念話を使ってるのか無言で散開、俺の近くには 1人しか残っていない。
「ルァニエス、移動するぞ」
「はい」
更に森の奥へ歩くと矢鱈と口の大きな、バカでっかい百足と戦闘しているエルフたちが居た。百足っぽいのに口が縦に開くし、口の近くに鋏の付いた腕が 4本もある。
アカン奴だ。勝てる気がしない。
体長は 30mは軽く超えている。
「あれはそこそこ強いから、近づかず見学していなさい」
そこそこぉ?!
「はい。 ……みんなも注意ね。身体強化は切らさないで」
「「「「はい」」」」
そこからは凄い訓練された者の戦闘だった。近接武器、遠距離武器も無しに、百足の脚を次々と切断して行く。そう、この人ら全員素手なんだよねぇ
どうも、弓矢なんかは苦手らしい。
飛び道具は身体強化が乗らないし、消耗品を作るのも面倒だそうだ。
彼らは手刀や肘打ちなんかも使うが、圧倒的に踵落としが多い。
なんか、間合いが狭いしナイフとか得意そう。特殊部隊って感じである。
そして、そのまま 1時間ほどの戦闘で百足の頭を刎ねてしまった。
「凄いですねぇ 武器は使わないんですね」
「もっと大型だと流石に使うが、あの位だと柔らかいし素手の方が融通が利くのさ」
「柔らかそうには見えないんですが……」
「硬いのはホントーーにっ硬いんだわ」
「そうなんだ……」
会いたくねぇぇ
「よしっ 脚がいっぱい手に入ったし、昼は脚《これ》を蒸して食うか~」
食べるそうだ……
背後では未だ頭の無い胴体がグネグネと暴れている……
こえーよ。この森っ
こえーよ。エルフレンジャーっ
前書きに読みを付けました。ふりがなは多すぎるくらいが良いそうですので。
記憶固定で刻印しましたが、魔法のインストールしてないので念話受信などが一切ありません。ただ、刻印には参照先はこちら、とルァニエスの脳が指定されているので、ルァニエスが常時起動している魔法が反応しています。
インストールされている記憶保護魔法では別の領域指定を行ってますが、そっくりそのまま使えるメイドは指定先が見えるのです。
内線電話わかるかなぁ?




