48話 収穫祭
【 10歳 晩秋 】
メイドさん達と朝の散策をした。昨晩の暴飲暴食の後だと言うのに、朝から結構な人が出歩いている。普段とは違う、朝市のような雰囲気だ。今は新鮮な果物が主役のようだが、朝食も普段より種類があってとても悩ましい。昨晩と同じく酒や醸造加工品も一緒に並んでいる。
販売してる人に聞くと、今年は妊婦が多いので例年よりお酒の出品を減らしたそうだ。もちろん、旦那も配慮して飲まないので尚更減らないんだとか。例年は前夜含め、朝から飲んで凄い勢いで減るらしい。
年間消費が減る分は輸出するのが良いと思う。酢にしても使わんだろしな。
それと、来年は期待して欲しい。ウチでも今年、原材料を増産した分の酒が出来上がるからな。好みに合うかは知らないが種類だけは楽しめると思うぞ。
リアネルティエさんに念話で連絡し、妹たちと合流する。ロァヴェルナさんはお酒飲んでたはずなのでちょっと悩んだ。まぁ、朝ごはんだけなのでそのまま起きるのを待とうかな。
メイドさん 3人と合わせ 7人で朝食を物色。朝から何とも姦しい。
今日の朝食は良く判らない木の実のお粥である。煮込んだ木の実の上に、炒った別の木の実が混じっており不思議な食感だ。ナッツ系だとは思うが砕かれていて元の大きさと形状は不明だな。
「「おいし~っ」」
妹たちには好評のご様子。
「この木の実は初めて食べましたが、凄いおいしいですね」
メイドたちにも好評のようだ。
「この木の実ってウチの領内には無いのですか?」
「見たこと無いと思います」
メイドさんに聞くが知らないらしい。
「無いんじゃないかな? 私たちがこの森に移植した木だし」
リアネルティエさんが教えてくれる。
「ふ~ん。そうなんですね」
食事をしているとふらふらしたロァヴェルナさんが通りかかった。
「! おはようございますっ」
慌てて呼び止める。
「……あら。 ……おはよう」
飲みすぎたんじゃあないかい?
「……少し寝てくるわ」
えっ? 今まで飲んでたんかっ
「前夜祭は故人の思い出を話したりするのよ……」
驚いているとリアネルティエさんが教えてくれた。
「……そうなんだ」
そっか、この祭りは盆と兼ねてるのか。
「まぁ、久々に深酒しただけかもだけどね~ あっちじゃほとんど飲まないでしょ?」
「ふむ」
ちょっとしんみりとしちゃったじゃないかぁ
◆
祭りの会場となっている場所では凄い種類の作物や料理が並んでいた。昨年消費しきれなかった加工品もならんでいるが、夜通し飲んだ方々が味の濃いものから消費したそうだ。
果物など比較的賞味期限の早い物ほど多く並べられているので、みんなで珍しい物は片っ端から買い食いして歩く。
「結構通ってるのに、未だに初めて見るものがありますね」
「人気は無いけど趣味で育ててる物とかもあるしねぇ」
「そうなんだ……」
今はまだ結構早い時間なのだが、広場に音楽が流れだした。
当然演奏している人が居るんだが、普段の一人でギターを弾いてるのとは違い、今回は色々な楽器を使った団体の演奏だった。
弦楽器、打楽器、鍵盤楽器まである。歌は無いようだが、ボイスパーカッションと手拍子まであり、何とも賑やかである。
よーも、まぁ
誰か転生者が居たりしないか?
鍵盤楽器なんて普通の発想で前世と同じような物が出来上がるのだろうか?
音も違うし、少し気になって鍵盤楽器に近寄って見てみると構造が全然違った。
なんと、弦が無いっ!
なんと言うか、木製のカリンバにチェンバロが組み合わさった感じ?
ピアノ線が無いんだし、そうなるのか?
道理で低音しか出ないわけだ。変な発展をしたもんだなぁ
「兄様! 凄いですね~」
「凄いよね~ こんなに楽器があるんだね。初めて見たよ」
「お義兄様も初めてなのですか?」
「そうだね。ギター以外の物は見た事ないよ」
「「そうなんだ……」」
演奏の周りにみんなが思い思いに椅子やテーブルを置いて座るから、周辺は大変な状態になってる。気付けば魔法で柱が建ち、2階席が出来上がり、リクライニングチェアで男女が寛ぎ始めたりと中々に無秩序だ。
「兄様、兄様、私たちも混ざりたいです」
2階席を見上げながらアルヒエルタが言う。期待されても……
「ルァニ! さぁ行けっ! 兄だろっ ここはど~んとやるんだ」
リアネルティエさんも煽る。
ん~ まぁ、材料もあるし、やりますかぁ
「席を作っておくので、メイドさんたちは飲み物を買ってきて貰えますか?」
「わかりました」
では 3階席を作ろうか……
「「おぉ~」」
出来上がったのは 3階席と半円のテーブル、そしてそれを囲む長椅子である。長居するかも、なのでテーブルの間に布を挟み炬燵風にしてみた。
椅子は造船作業で培ったハニカム構造による中空加工で、断熱と軽量化を行なった。
これに布を敷けば冷たくもあるまい。
「ルァニ~ やるねぇ これは評価高いよ」
そうは言っても、作ってる傍からエルフの男性が 3階を増改築して行く。
もう、そう言うゲームの世界に居るみたいである。
「今日の祭りって作物をみんなで食べる感じの催しなんですか?」
「基本的にはそうだね。ルァニの所と同じで余ったお酒や発酵食品の消費もあるけどね」
「この音楽も毎年してるのですか?」
クラティーエが質問する。
「そうだよ。音楽もだけど、楽器自体の改良の発表なんだよ」
「「へ~」」
ふ~ん。
そう言えば笛は無いんだな。
聞こうかと思ったが笛の現地単語が判らないっっ
止めておこう…… 他に転生者が居たりして、見つかるとかはイヤだし。
他にも吹奏楽器の類が無いんだな。金属が無いからトランペットとかは判るが、竹笛とかなら原理は難しく無いとおもうんだけどな……
まぁ、調べてからだな。
◆
飲み物や食べ物を随時補充しながら音楽鑑賞をしていたら、ロァヴェルナさんから念話が来たので合流して貰う事にした。
「おはようございます。体調は大丈夫ですか?」
「まぁ、何とかね」
ちなみに、生命属性魔法にお酒を分解するような都合の良い魔法は存在しないんだわ。
肝臓を強化しようが排泄しないと体内に色々残るからな。
「曲数も多いですけど、何回か人も入れ替わってますよね? 演奏できる人って結構居るんですか?」
「あぁ~ 7村、私の家系以外の村から合流した一族には楽団が居るのよ」
ロァヴェルナさんが教えてくれる。
「そうなんですか?」
「私の父が音楽が好きでね、それで旅をして、探索用の村を作る度に子供に教えてたからその流れね。7村は教える時間が取れなかったから……」
「ふむふむ。となると結構昔なんですね。凄い上手ですよね~」
「 1村だと 1400年近く前になるんじゃないかしら」
なーがーすーぎ~っ
「そんなになるんだ……」
◆
その日の夕方前、子爵領に帰る事に決まった。片付けがあるんだろうし手伝おうと思ったのだが、片付けながらまだ飲むらしいのでお願いしてしまった。
本来は前夜祭なんてものは無く、昼の祭りと翌日の休日だけだったのだ。それを誰かが前日の仕事終わりから騒ぐことを提案し、3日の行事となったらしいわ。
なので今日はエルフの森を越えて、国境近くの宿泊施設に泊まる予定である。
「帰りは気を付けてね」
結局、ロァヴェルナさんは残る事になった。
「はい」
「 2人が居るから平気だと思うけど、アルヒエルタ達はそのマスクは外して帰りなさい?」
「何故ですか? 少し暗いのでこちらの方が便利では無いのですか?」
アルヒエルタが聞き返す。
例の空調付きマスクの改良型で、現在は片目に暗視野を付与する機能が増えている。
何故かアルヒエルタはこのマスクが好きなのだ。
「でもそれ、体温が低いのは見えないでしょ?」
「そうなのですか?」
「そうだね。温度差で見るから動物以外は難しいかな」
「そうなんですね……」
「ルァニエスを食べたナメクジとかは見えないと思うわ」
「「食べた?!」」
妹と義妹がハモる。
あれ? 言って無かったかな?
「ナメクジってナメクジ?」
アルヒエルタが手で肩幅位を示す。
でけーな、おい。
するとロァヴェルナさんが右手を真っ直ぐ上に上げ、指先を曲げて左右に振った。
「この位ね」
「「ひゃっ!」」「そんなに大きかったんですか?」
「覚えてないの? ……よね。そうよ、寒くなって来たし居ないと思うけど、夜は自分の視力に頼る方が良いわね」
「「「わかりました~」」」
「もし食べられそうになったら身体強化して頭と首を守るのよ? じゃ、カルニナフ、お願いね?」
「ええ、気を付けて行きます」
何故か俺の両腕にしがみ付いて歩く 2人……
俺がピンチじゃないか? 動けねぇぇ
姦しいって表現ですが、悪口、悪印象のイメージはあるでしょうか?
意味を調べると煩い、騒々しいですが、賑やかくらいの印象で使うのはおかしいのかな?
不快な表現であればご意見貰えれば。
魅力的なヒロインってどう書くんだろ? 大人の女性ではあるんだけどなぁ
音楽鑑賞はライブとは方向性が違い、ステージの近くに張り付いたりはしません。音が届く範囲で邪魔にならない所で聞きます。と言うのも、飲食や話をしながら聞くのが目的だからです。もちろん音楽に興味ある人ほど近くに寄るので邪魔したくないと言う意図もあります。スピーカーはありませんが、聴力強化が可能ですから。
エルフのインスタント建造物は鉄筋の入らない石だけの柱ですが、気泡などが一切入らない一枚岩状態です。それと筋交いや梁なども順次追加していきます。感覚と気分で!
> 2人が居るから平気だと……
説明入れませんでしたが、カルニナフさんとリアネルティエさんの事です。
フラグは発動せず、無事帰宅~




