46話 幸多く
【 10歳 晩秋 】
今回エルフの里の収穫祭に参加する事になった。同行者はエルフの御三方とメイド 3名、それに上の妹と義妹が急遽来る事に決まった。来た事無かったからな、下の妹の事がちょっと羨ましかったらしい。リアネルティエさんに話を聞いたアルヒエルタが、ロァヴェルナさんにお願いし許可が下りたんだ。
ロァヴェルナさん曰く、どう見てもルァニエスより強そうだし平気でしょ、と……
1個しか歳が違わないので小さいとも言えず、俺より強いから危険とも言えず……
もちろん気を付けて貰えれば俺は何も言う事は無い。
エルフの里に着くと、ちょっとどころではない変化が起きていた。
いや、ウチでも生まれてるんだからそうなるよな……
赤ちゃんを抱えた女性が多いっっ
「聞いては居ましたがこんなに一気に増えて大丈夫なのですか?」
「相当大変みたいよ?」
「ですよね~」
今は良いとしても数年後には食料問題、その後は住宅問題が出るだろ。
「でも何でこんな事に? 肌が綺麗になって愛情が深まったと言うには多過ぎません?」
ロァヴェルナさんが言い辛そうな感じで説明してくれた。
「あ~ ん~ 子供に言う事じゃ無いんだけど、ルァニエスは思いっきり関係者だから教えるね。えーと…… 何と言うか…… エルフの女性って子供が出来ないようにする刻印を入れていたのよ。それで子供が欲しい時は刻印を消すようにしてるのね」
「刻印を間違って消しちゃった?」
「そこまで愚かじゃないわよ~ 要は刻印を削って消すって事が出産の抑止になってたみたいなのよ。ホントに欲しい人は気にしないでしょうけど、多少は痛いしね。それでみんな気が向いたらで良いや、って後回しにしてたみたいなの」
「そうなんだ……」
「だから、今回のは子供が居なかった人ばっかりみたいよ。それで羨ましくなったり、周りの雰囲気に流されたりとかって感じで更に増えたんですって」
「へ~」
「 100年近く生まれてなかったのに一気に来たから色々と凄い大変らしいわよ?」
「 100年…… まぁ、そりゃそうでしょうね~」
「私にも帰って来いって言ってくる位だもの」
「え~ 帰っちゃうんですか?」
「子育てで働く人が減っちゃって大変なんですって~」
「食料とかはウチから買えば良いとして、何が足りないんですか?」
「物だと衣類関連とかかな? 子供服は全部新規で作らないといけないしね。ただ、私がする事になるのは治療関連ね」
「治療?」
「そっ 今、治療関連の仕事に就いてる子は全員私の弟子だもの」
「お~ 凄~い」
「弟子が安心して休めるように手伝ってあげないとね」
「それじゃあ、しょうがないですねぇ」
「そだ! ルァニエスがエルフの里に学びに来たらどうかしら?」
「お~ 良いじゃん。ルァニ、おいでよ~」
リアネルティエさんが会話に入ってくる。
「ん~ 両親に相談ですかねぇ」
「まぁ、思い付きで言っただけだからしっかり考えなさい?」
「はーい」
「私はルァニの居る方に行くわ」
「ルティ姉は帰って来いって言われて無いの?」
「料理系は人多いから! 仕事貰うのすら難しいのっ」
「それに、子供産んだのはまだ子供の居なかった人って言ったでしょ? 料理担当の人達って経歴長い人多いから、新人の子ってほとんど居ないのよ」
「そう言うのもあるんだ……」
妹たちがきょろきょろと興味深げに見まわしている。
「凄い、凄い、凄~い」
「凄い大きいです」
「アリー達は今日は私の家に泊まりましょ?」
「わーい。ルティ姉のお家見たい~」
アルヒエルタとクラティーエはリアネルティエさんの家に泊まるようだ。
「夜まではお祭りの準備あるからロァヴェルナ達と一緒に居てね」
「「はーい」」
「ルァニはこっち手伝ってね」
「……何を?」
「料理の仕込み~」
「あぁ 了解~」
◆
リアネルティエさんの作る新作なんだが、ピザの変形かと思ってたら違った。
全然、薄くて小さい!
なんとタコスだった!!
もうさ、何と言うかさ…… 発想と言うのは収束して行く物なのだろうか?
小麦を扱って 1年でピザとタコスが出来上がるのって凄すぎないか?
同じ形状の生物なら必要な栄養は近いだろうし、それなら栄養を判別する味覚の好みも近いのかもしれない。そして顎の大きさが同じなら食感の好みも近いのだろう。結果、世界が変わろうと同じ料理に行き着くのかもしれない…… のか? どー考えても、早過ぎだがなっ
「ルァニー、とにかくいっぱい焼いてっ」
「はーい」
「私は中に入れる具材を焼くわ。今年こそ完売してやるんだからっ」
「おぉ~ 燃えてるな~」
「そう言えば、ルァニは何か作る予定なの?」
「いえ。ピザに絵を付ける道具作ったんですけど、思ってた大きさが違って……」
「あ~ 説明不足だったね。どんなのを作ったの?」
「これなんですけど……」
「これ、私?」
「ええ。髪型くらいしか似てないですけどね」
「おぉぉ 良いじゃん、良いじゃん! 使うの見てみたい!」
「一枚大き目に焼きますね」
「良いよ。楽しみ、楽しみ」
リアネルティエさんの似顔絵の焼き印を熱しておく。髪型が特徴的だから判りやすくて良い。料理するのに長いのは邪魔だそうで、短めの髪を両サイドの高い位置で括っただけのツインテール擬きである。
「じゃあ、行きますね~」
「お~、行け~」
大き目のタコスに絵が付いた。
「おぉぉぉぉ 良いじゃん! 良いじゃん! ねぇ、これ小さくできない?」
「できるかな? そのまま小さくする訳にいかないから絵を書き直さないといけないかな?」
「じゃ、お願い!」
「こっちの焼くのはどうするんです?」
「カルニナフを呼ぶ」
……ひでー
「じゃあ、作り直しに入りますね」
「よろしく~」
似顔絵の焼き印は何度か作り直したが小一時間ほどで出来たので、今はカルニナフさんとタコスを焼いている。生地を焼いては、焼き印を押して容器に保管を繰り返す。
隣ではリアネルティエさんが大きな肉の塊を煮ている。
「脂が凄いですね」
湯気が見えん…… 表面はほぼ油か?
「まね~ この後、引き上げて小さく切るけどね」
「ルティ、味見したいっ!」
「しょうがないな~、カルは~ ルァニも食べる?」
「戴きます!」
出来たものはぶつ切りにされた肉と脂に、凄く辛い大根と玉ねぎ、それと刻んだ蓮根を詰め込んだパンだった。蓮根なんて有ったんだ……
微妙にタコスと方向性が違うのかな?
大きさ含め、ほぼ稲荷寿司。
「うぉうっ 辛~っ」
「! 旨っ! このソース美味しいですね」
おろした果物が入ってる気がする。何かまでは判らないけど。
「ルァニは辛いの平気? これに合うソースを作るの苦労したよ~」
「辛いのが平気な訳では無いですけど、材料入れるの見てたので大丈夫でした」
「油断した。むっちゃ辛い……」
こっちの世界にはすっごい辛さに特化した大根があるんだ。サラダでは食べれないレベルのな。これはウチの方で採れた作物だから、こちらだと驚かれるんじゃないかな?
「……これは良いな。今年は行けるんじゃ無いかい?」
「だと良いんだけどね~」
◆
料理の仕込みが終わったのでロァヴェルナさんと合流したら、お弟子さんを紹介して貰えた。
「ルァニエス。紹介できてなかったから紹介しておくわ。この子がロニセ、前にあなたの蘇生の際にも手伝って貰ったのよ?」
「覚えてます。 ……あの際は大変お世話になりました。ルァニエスです」
「ロニセよ。命は大事にね~」
子供を抱えている。ちっちゃ~
「可愛いですね~」
「でしょ~」
母親のロニセさんの見た目が若い事もあり、細い腕で落とさないか不安になる。
「ところで、重く無いのですか?」
「?」
「あっと、その、抱えたり背負ったりする道具は無いのですか?」
「そんな道具があるの?」
「あれ? そんな珍しい物なのかな?」
「いえ、単に最後の子供から時間が立ち過ぎて無くなった可能性もあるけど」
「 100年でしたっけ……」
「そそっ」
「布が有れば作ってみましょうか?」
「用意するね」
念話で依頼したようで直ぐにきれいな布を届けて貰えた。
まだ小さいのであくまで落とさない事を優先した、前で抱える形状の抱っこ紐を作った。
「大きくなったらもうちょっと密着したのが良いかもしれないですけど、取り合えずは安全用にどうぞ」
「ありがとう…… なるほど~」
「赤ちゃんの大きさや体勢で調整した方が良いですが、少しでも腕が疲れないようにと思って」
「なるほど、なるほど」
「兄様…… 何故ウチでは作らなかったのですか?」
「まだ、会わせて貰って無いんだけど?」
「そっか…… そうでした」
実は腕が疲れたら魔法で回復してたらしく、疲れはしないらしい。ただ、抱っこ紐は安全面からエルフ領で普及する事になった。
こう言ったグッズが一切無いんだものな~
物かアイデアで供給しようかな。
現在エルフの里に史上最大のベビーブームが発生しており、女性達の同時の産休と数年後に起きる食糧問題の対策に追われています。
エルフの里ではルァニエス君最大の功績と記録されています。
食料など安い物は外部から買った方がお得なのです。エルフは平均年齢が600歳超えてるので人間国宝みたいのしか居ません。布団一組が結構な値段で取引されてます。
エルフ最年少グエルバーツ君 98歳。ここ最近やさしいお兄ちゃんモードに突入しており、人妻からの評価爆上げ中。
タコスと言ってますが中に具を入れてるのでピタパンです。ピタパンが一般的か判らず、主人公は知らない設定にしてしまいました。タコスもトルティーヤと書くべきか迷いましたがタコスにしてます。
赤ちゃんに一定期間会わせないって文化は人間側の文化でエルフにはありません。




