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26話  幻想世界の林業事情

 【 9歳 初夏 】



 最近は魔道具の製造に掛かりっきりだ。


そんなある日、ガラスペンを使っていてふと改良を思いついた。今の無色透明を花びら入りとかにしたらどうだろうかと。花は放置すれば酸化もするし枯れる。だけどガラスに混ぜてしまえば空気に触れないし水分の蒸発もしない。しかも魔法で加工なので熱を加えず、焼け焦げたりもしない。どうかな?


まぁ、それでも変色するなら煮るなりオイルに漬けるなりしてから再挑戦するさ。


できるなら中々凄い商品だと思うのだがどうだろうか。まず母様に聞いてみると、ガラスペン自体無いし花の保存も見た事が無いとの事。やってやるぜ~


まずは花びらをガラスに埋めて粘土のように捏ねる練習をした。結構難しいが軸に使うだけならなんとかなる。同じく草木の色素も混ぜて試作品(サンプル)を作った。


これならいけるんじゃないだろうか?


そして、ある程度色彩が纏まった円筒型のガラスを一気に引き伸ばして微妙なグラデーションを付ける。これなら壊れて直す時に元のように直せない可能性が出るだろう。


ペンが割れたら諦めて新しい物を買ってくれ!


どう? 良い感じだよな!





 最近色々と作成してきたわけだが、やはり木はどうにかならないものだろうか?

森の中で新しい苗が比較的簡単に手に入るのだし、伐れる樹齢や太さを調べるとか太くても伐れる方法を作っておいた方が良くないだろうか?


薪にする為ではなくて舟や家具用に欲しい。熱源はもっと魔道具の効率を上げれば良いし、多分この地で出来てないだけでどこかにはありそうだしな。


人の手では難しいなら魔道具に頼ろうぜ。丸鋸を作るとか、少ししか削れないなら夜間も無人で切り続けるとかさ。


使う量は少ないが現在も木材の需要はある。扉とか、テーブルなんかだ。軽さもだが、曲がりに対する弾性が石では対応できない。

ちなみに、領主邸とは言えど重要では無い扉は石の引き戸となっている。俺の部屋とかな。


石の引き戸は上下のレールに玉が入っていてそこまで重くは無いが、通行が多いところはそこそこの頻度で修理してる気がするんだよね。



父に相談してみたところ、年に数本だが木を伐ってるらしい。


「木がもっと伐れるなら伐りたいですか?」

「木? あれば使うだろうが手間に見合わないし、領内で使いたいとは思わないな」

「そうなのです?」

「木は単価が高いからな。多少の不便程度なら売って何かを仕入れた方が良いのさ」

「なるほど~」


偶に伐るのは畑の拡張の為だったり計画的な区画整備の為で、別に木が欲しいわけではないらしい。


「ルァニエスはまた何かやる気かい?」

話を聞いていた兄が質問してくる


「あれば色々と作りたい物があるなぁと思ったのです」

「僕も試したけど、あれはかなり硬かったよ?」

「やるなって言ったろうに。試したのか?」

父が呆れたように咎める。


「ホント、太くなると一気に硬さが変わりますよね」

「そうだな。普通に伐れるのは、良いところ腕の太さまでかな」

そうなのか……


「扉に使うような太い木は稀に見つける枯れた木だけなのですか?」

「いや、魔法士たちで抜く事もあるな」

「「抜く??」」

伐るじゃないのか?


「まぁ、抜いても切れないから枯れるまで待つしかないんだけどな」

「父様、見てみたいです」

「私も!」

「偶には良いかな。来週予定しておこう」

「「やった~」」


実は俺たち三人が外で一緒に行動する事はかなり稀だ。

と言うのも、俺は跡取りの予備(バックアップ)なのだ。当主と次期当主と同じところに居たら意味が無い。なので大体、父に付いて仕事を学ぶのは兄の役目なのである。


この世界、危険の頻度と威力が高過ぎるんだって。


これで、木を伐る道具が作れるのか、実際の強度と現在の手段がわかるな。



領民が使う燃料としての枝は森の浅いところで拾って煮炊きにする程度のようだ。しかも既に枝打ちしたのか木の低い部分は枝が少ない。そのためか、現地での光景も鬱蒼とした森と言うより光も差し込む林。更に言うと足元に落ち葉すらほとんど無い管理された林って感じ。


ただし奥を見ると一気に暗い。怖いね。


今日は南の森の探索。

……まぢ密林。


普段は東西の山麓(さんろく)なのに南を選択した理由なのだが、こちらは平地で開発余地がかなりあるからだ。今までは領主邸や兵舎から離れすぎてたので泊りがけだったが、舟便ができたため移動速度と体力面で活動範囲になったのだ。


目的は川上の両岸に生えている木である。



比較的細い木を見つけたので、俺も伐れるか試してみる事に!


き、木を切らない理由が…… 判った気がする。

硬って~~っ


金属同士を叩きつけたかのようなダメージが腕に来た。

この世界の木って本当に斧を耐えるんだな。すっげー手と腕が痛い。


硬いって比喩じゃないのな。


ほんと炭素で構成されてる有機物なのか? 表面に傷も付かなかったんだが。

せめてへこんで欲しいっ


兄は一番重い四号鶴嘴で試したがダメだったらしい。流石お兄ぃ



なるほどー 確かに諦めるレベルだわ。筋力があっても斧の柄が耐えれない気がする。

何? 木って魔物の分類なのか? 常時身体強化使ってたりしない?


大木になるとこれより硬くなるらしい…… 

木こりを尊敬するわぁ


どうにもならないじゃん……



「倒すぞーっ」


どうにかなるらしい!


土属性の魔法士が周辺の土を除けて根の範囲を調査し、最後は地面を持ち上げ倒してしまった。朽木倒(くちきたおし)か? 合ってはいるが……

        ※ 朽木倒 柔道技です

抜くってそう言う事かぁ


今回南の河原周辺に来たのだけど、距離の理由以外にも森として浅い場所なのと、川が近いため土が浅く根が深く入り込んでないので短時間で作業ができるからだ。元が河原なのである程度掘ると岩盤になるのさ。


「周辺警戒! ……こんな感じだな」


魔法で根を掘り返し、倒して細い枝と根を切って乾燥させると加工できるんだとか……


木に兵糧攻めとか…… 最低でも1年とか掛かるそうだし気が長いな。


でも想像より抜くのが早いし、かなり有効な気がする。


「これなら、畑を増やすのも簡単なのでは無いですか?」

「これを運べたらな」


そうか…… 乾くまでこのままなのか。

結構長いんだよ、これ。


「そうなるのか……」

「一本位なら人数掛けて運んでも良いんだが、何度も往復する気にはなれないだろ?」

「川で流すとかどうでしょうか?」

兄が提案した。


「堰が決壊しそうで怖くないですか?」

「深くしてからなら行けそう?」


どうかな?

手前を大きくしてしまえば速度は無くなるだろうけど。


「どの道、どこかで木が乾くまで保管しないといけないんだけどな」

「それもありましたね~」

倉庫に入れるには長いし、枯れないと短く切れないってジレンマ。


「ここで貯めておいて、纏めて乾燥させるはダメなのでしょうか?」

兄が再提案をしてきた。木を伐るのに賛成なのかな?


「ある程度、水に触れないように保管しないとかなり時間掛かるぞ?」

「そこは、ほら」

何故か俺を見る……


「できるか?」

「どうかな……」


この日は抜いた木を何か所かで持ち上げて帰った。


必要なのは乾燥、送風か? 雨に濡れないよう屋根でも作るか?

石で囲むだけだと冷暗所になるから乾燥とは遠そうだしなぁ

ガラスで半円筒にしてビニールハウス状態で蒸発を促すとかかなぁ


俺の仕事が増える一方だ……





 父と兄に兵舎の大浴場がバレた。いや、隠しては……


なんで今まで知らなかったのか思えば、メイド達は領主邸には何か作れない理由があると思っていたらしく養護院の浴場を使用。兵士達は領主邸には当然あると思っていたので報告なんてしない。なんせ、作ったのは領主の次男だからなっ


森での作業の帰り三人でお風呂に入って帰ったんだが、父様より母様に風呂の件が伝えられ領主邸にも作る事が決定。取り敢えず暫くは兵舎の物を使用する事になった。


作った覚えのないサウナまで在った所為で母様の機嫌が直らない~


これは少々本気を出さねばなるまい……



予備としては三男は母親が異なるため本当に緊急の場合のみです。

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