27話 接触
【 9歳 初夏 】
領主邸の地下に大き目の浴場を建設する事に。
これから暑くなるんだし秋で良いじゃないかって思ったが、母に言い出す勇気がでない。
メイドにも使って良いと話しているようで、未だ出来てもいないのに大好評。
期待の眼差しが非常に困る!
逃げ道を塞ぐスタイルか……
まず全部やっては俺の魔力が足りないので、指示して荒く作って貰ったあと不純物を抜く作業をした。そもそも、湯舟以外は俺じゃなくても良いような?
女性兵士曰く、表面が微妙に違うらしい……
やってる本人には判らないのにか??
結局、補助ありでも何日もかかったけどね。
湯舟もだが天井がすっごい大変なのよ……
天井は手を抜くと水滴が偏るし、しかも実際に湯気が出ないと判別ができないんだもの。
時間をかけ、出来上がった大浴場は概ね好評。兵舎や孤児院と交流の無かった厨房や事務等の男性達からも感謝の言葉をいただいた。
いままでは濡らした布で拭く位だものな。もちろん石鹸なんかもあるし、シャワーはあるんだよ、何故か。ポンプで上の階の貯水槽に貯めるだけなので夏しか使わないんだがな。
お湯の魔道具でお湯のシャワーが出るかと言うと今のままでは無理。理由は三つ。貯水槽と配管が石だから断熱とかが無く温度の低下が早いって言うのが一つ。
次は単純に熱量が足りない。お湯の残量が減って冷たい水が給水されると魔道具じゃ加熱が追いつかないし、複数設置するほど安くもない。焼いた石の方が全然安価で熱量高いからな。それに上の階にあったんじゃ温度調整できないだろ。
そして最後は水とお湯の混合蛇口なんて石で作るのは無理だからだ。
やるなら貯水槽を断熱したうえで大きくし、給水を止め一杯分だけ加熱して丁度良い温度まで待てば良い。そんなの人数が多いと待ってられないだろ?
まぁ、素直に湯舟を用意しよう。同じ事だ。
兵舎の湯舟が魔道具で対応できているのは湯舟を中空にして内部を玉で支えているからなんだわ。石臼のベアリング修理の経験がここで役立っていたりする……
養護院も今はもちろん中空式だぞ。
俺は養護院でたまに借りてた身だしな。
暇な時に少しずつ改良したのさ。
あぁ、言い忘れてたが南の木材の件は俺の手から離れた。
あの日の次の朝、一晩寝て思い付いたんだわ。
必要なのは乾燥じゃなく、枯れさせる事だと。
木は丸ごと入るでかい池を作って完全に沈め、石を乗せる事にした。
【 夏 】
南の森の開拓も徐々に進めているようだ。俺が考えてるからなのもあるが、土属性魔法士だけえらく仕事が多すぎじゃないだろうか? 土属性魔法だけの学校と言うか、塾が合っても良いくらいだ。
元々使い手が火属性より少なく、水より多い程度の人数しか居ない。
だが、土属性を教えた事で光属性が覚えれないとかなっては困るし対応が難しい。
俺が光か無を覚えれたら教える側に回るんだが、いまいち原理が解らない。もし法則として無以外にもう一種類しか覚えられないとかだとしたら無理強いもできないんだよね。
試しに養護院で光を習得済みの子に土属性魔法の授業をしてみたんだが、教科書通りでも石を噛んで貰っても習得ができなかった。
この件はこれで終わるつもりだったのだが、変わった所から希望者が現れた。畑担当の家の次男以降の人達である。
どうも父様が説明し希望者を募ったらしい。儲かるゾと……
成人前で進路が決まってなく、かと言って領兵になるのも不安って人達だった。魔法が一切使えない人と無属性のみ習得してる人の2グループで、他の属性魔法が使えなくなるかも知れないと説明した上で教える事になった。
何も使えない人は魔石によるマナ操作の練習後、土属性魔法を教えると使えるようになった。結構あっけなく、教科書通りで覚えた人も居るし噛んで覚えた人も居た。
苦労したのは無属性魔法が使える人達。6人中 2人が使え、4人が脱落した。使えた 2人もかなり苦労したし、時間も掛かったんだわ。やはり何か法則がありそうだ。
あと、教えてる最中に前歯を失う人が出た。
歯を失った人以上に俺が慌てたわ。やはり拙かったかーっ
その後、石から歯を分離し本人に戻した。
ダメ元で無属性魔法による治癒をお願いしたところ、無事に歯がくっついた。
無属性魔法は想像以上に万能のようだ。
俺も使えるようになりたーい。
そして、この人達は成人後に領主邸所属の土魔法士として働く事が決まった。
仕事の減った俺も仕事ができた新人たちも嬉しいし、無職にならずにすんで領主である父も喜んだ。
それと、魔法が使えるようになった時点で嫁も決まったらしい。
稼げると判るとこれか。本人の確認もせずに親同士で決めてしまったようだ。
掌返すの早すぎ、青田買いだな。
まぁ、なんと言うか…… がんばれ。
◆
夏も真っ盛り、今日は南の森の川を只管上流に上っている。
森を開拓する以上、地形や動植物の調査が必要なのだ。なので南の森に一番近い宿舎に泊まり込み、連日調査を行なっている。俺は川の整備の手伝いだな。
何でそんな最前線な場所に居るかと言えば、俺の測量士の腕が必要になったのさ。
嘘です。地形を砂板に模造してたらそのまま地図として採用されちゃいました……
どちらかと言えば、測量士じゃなく左官の腕だな。
昨日までは父が動物の調査をしており、大型の定住動物は居ないと判断したため今日から俺が地形と植物の調査をする事になった。
何故か兵士でも無い畑担当の人が同行させられてる。
「大丈夫ですかね……」
さっきからこんな感じ……
「大丈夫だと思いますよ。父様が三日も調査したらしいですから」
「それはお聞きしたのですが、不安でして……」
「今日の護衛の方はかなり強いので大丈夫ですって。それより、食べられる物とかがあったら見逃さないでくださいよ」
「はい、それはもう」
この日は川の上流、水の湧いてるところまで到達。植物は 1、2点珍しい物があったが大発見みたいのは無し。ようやく山に囲われたこの領の内部の地図ができた。
今後はこの手前に向け、運河の三段目を作る事になるだろう。
そう! 既に養護院の先の第二の堰から、南の森の入り口までの運河の工事が進んでいる。
各堰での上下の川の高低差は 10mを超えてて、堰だけの機能では足りず周辺と合わせ複合建築物に改造した。現在は両岸を渡す橋、上下の船着場と待合室、その船着場を繋ぐ通路、兵士の簡易宿舎などの機能がある。
【 とある夏の日 】
南の森の開発が進んでいる中、俺は川の上流を更に遡り海へと続く森を見に来た。
多分一回では行けない距離だとは思う。だが、塩が取れると子爵領の財政は一気に安定する。諦めなきゃいけないかも知れないが現状は知っておきたい。
低い崖なら海水をポンプで揚げても良いしな。
沢を超えただけなのに森が濃い。
何やら雰囲気が違う。これは帰って父と相談かなぁ
そんな事を考えていると……
「止まれ! 言葉は解るか?」
どこかから警告が飛び、こちらの護衛が慌てて前に出た!
「待てっ!! お互い待て!」
慌てて止める。どう言う状況よ!
エアコン付きの仮面を脱いで大声で止めるが、相手の姿は未だ見えず。
「……双方上官に何故勝手に戦端を開いたなどと咎められたく無いだろう? まず話し合おう」
他国か? どこよ。無人のはずなんだけど。
まずいね。最悪、誰か一人は生かして帰らせないと……
国防の観点からも交渉をしないわけにはいかない。他国? 只の別集落?
「……」
「こちらはハルトワエルタウト王国所属です。この地は無人と聞いていたのですがどちらの方でしょうか?」
「我らはどこの国家にも所属していない。また 500年以上この地で暮らしている為、無人との扱いは不当である!」
500年? 長いわぁ ウチより先に居たんじゃないのか?
「ん~、私は子爵家の次男ですがこれ以上は決定権のある者を連れて来たいと思います。後日改めてこの辺りで会談できませんか?」
「こちらとしては、そのまま帰って貰えば良いのだが?」
「それでは、お互い境界に監視を置く必要が出てしまいませんか?」
「……交戦の意思は無いと考えて良いのか?」
「もちろん! 土地が欲しい訳では無いですし、実際何年もこの地には足を踏み入れて無いはずです。今回来たのは未開拓の地で珍しい植物でも無いかというのと海を見に来たのです。住んでいる方が居るなら交易した方が楽ですし、交渉を希望します」
「……判った。五日後としよう。こちらも長老に相談しなければ成らないからな。結果、会談を断る可能性もあるが最低でも私が返答を持ってくる。それで良いか?」
声がした方向とは別の場所から相手が姿を現した。
かなり若い青年風。そして特徴のある耳。エルフ?!
「ありがとうございます。ではそれでお願いします」
去り際に隠れていたであろう彼の仲間たちも姿を見せた。
結構な人数に囲まれて居たらしい。
ヤバかったわ~
……
初対面で怪人風マスクは印象が悪かったかな……
護衛が気に入っちゃってて超怪しい集団に見える。
防臭マスクは改良され、今は配管がマスクの外側になった事で内部が広がり汗で曇らなくなっている。
形は若干MS-〇6っぽい感じで、俺と護衛隊長のは角つきである。
さて、まずは帰って報告か~
兵糧攻めから水攻めに……
新しい土属性魔法士の嫁は畑担当の家の親同士で決まりました。
まだ成人前なので婚約で、本人には事後報告です。
国の名前、捻りすぎて読み辛いでかもです。
ハルトワ_エルタウトで区切って読んでくだされ。
彼の辞書には色々載ってます。




