3-23 安全な道のり
ケルソンバートを出発した俺たちはエルシュヴィレンを目指して馬車を走らせる。今までよりも街道を通る人は多く、渋滞というほどではないが前も後ろも他の馬車が見えなくなることはなかった。
それに徒歩で移動している人も見かける。1日で歩いて行ける距離に宿場町があるのかそれとも野営をするのだろうか?
「それにしても人通りが多いな」
「そうですね。それにヘルムゲンだと森の方に向かう戦士の方が多かったですがこの辺りは商人の人が多いみたいですね」
御者台でシルフと周りを見渡しながら世間話をする。シルフの言う通り荷物が多そうな馬車をよく見かけるし御者台に座っている人も手綱を握っている少しいい服を着た人と武器を持って周りを警戒している戦士風の人のペアが多い。あれは護衛なんだろう。馬車の中にも何人かいるのかもしれない。
時々馬に軽装の人が単騎で跨って馬車を追い抜く速さで駆けていくこともあった。あれは手紙か何かを運んでいるのか大事な連絡などの速達みたいなものかもしれないな。
「でもこれだけ周りに人がいたら何かあっても自分たちだけで対処しなくて済むしいいな」
「そうですね。それにこれだけ人が途切れない道なら魔物も出てこなさそうです」
もちろん危険が無いわけじゃないが自分たちだけで街道を走る時よりはやはり気が抜けてしまいそうだ。
なんて思っていたら昼くらいには野営できそうな場所に到着した。道の横が広場のようになっていて小さな出店のようなものも建っている。ちょうどいいのでここで休憩して昼食にしよう。
「兄ちゃん達は今日ここに泊まるのかい?」
出店のところにいたおじさんが馬車を停めた俺たちのところに来て尋ねる。
「いえ、ちょうど良かったのでここで昼食にしようかと思ったんですがまずかったですか?」
「いや、それは構わない。ただ夜を越すなら場所の確保の問題とかがあるからな」
「わざわざありがとうございます。今朝ケルソンバートを出て来たんですが夜までに進めるところに宿場町か泊まれそうな場所ありますか?」
「ああ、それなら問題ない。ここを利用するのも馬車に乗ってない徒歩のやつばっかりだからな。順調に進めば宿場町までは行けるよ」
「ありがとうございます」
話をしてくれたおじさんはその宿場町から馬でここまできて交代で管理をしているらしい。徒歩の旅人を相手にしているから寝るための道具を貸し出ししたり食料を販売したりしている。泊まる人の数にもよるがその日泊まる人達で見張りの番を割り振ったりもするそうだ。
「コールはこういった場所で野営はしなかったのか?」
「あたしは馬車に乗せてもらっただけだし宿で寝るか馬車の中で寝てたわね。野営はしてなかったと思うけど」
「ずいぶん親切な人達に運んでもらったんだな」
「乗せてもらったのは女の商人の人の馬車だったからね。小さいのに一人で偉いわねって優しくしてもらったわ」
一人で街2つも移動してくるなんて気合が入っていると思っていたが良い人に出会っていたのも大きそうだな。
昼食を取った後は今晩泊まる宿場町を目指してまた馬車を走らせる。午後の道では今日は野営しなくていいと知ったセレンがシルフと交代して御者台の俺の隣に座った。
その後の道のりはいたって順調で日中に馬車で移動して夜は宿場町で泊まる。を繰り返すだけだった。他の馬車もたくさん通っているので魔物に襲われる危険も少ないし道に迷うことも無い。夜の見張りがなければ昼の馬車で交代で眠る必要もないので何かできないかと考えた結果、昼は交代で魔法の訓練をすることにした。
シルフは水の魔法の形状変化の練習をしつつ氷の魔法の魔力共有を始めた。氷を作るには水の魔法を使いつつそれを凍らせないといけないのでまずは果物を使って凍らせる方だけを練習していく。火の魔法の練習はさすがに危ないので移動中は止めておいた。
セレンもせっかくなのでこの機会に訓練する。俺と魔力共有をして俺の魔法を感じてもらってセレンも同じように使ってみる。セレンは剣も魔法も頭で考えるより感覚でやるタイプっぽいのでこのやり方の方が向いていると思ったからだ。本人は魔法のスムーズな発動に苦労しつつも俺との魔力共有が嬉しいのか訓練には積極的だった。
コールは俺と魔力共有をして水の魔法の練習を始めた。俺がコールの魔力の流れに慣れて来たのかコールの魔力を邪魔しないように気を付けてやれば魔力酔いを起こすことは無くなった。ただ違和感はあるようで長時間は疲れてしまうので短いスパンで練習していく。無意識とはいえ氷を作る時に水を作っているはずなので水の魔法はすぐに使えるようになりそうだ。
剣の方は昼の休憩の時と宿場町に早く着けた時に時間を作って訓練をした。主にコールが素振りをするだけだが、軽く振り下ろすだけの打ち合いならできるようになってきたので身体強化だけでなく実際に体を動かすことにも慣れてきたみたいだ。
「この調子だとそのうち4人とも火水氷の魔法が使えて剣でも戦えるようになるってことよね。すごいパーティね」
宿で剣の訓練をした後、コールがふとそんなことを言った。
「そんなに凄いことかな?」
「ギンジ、普通は戦士のパーティでも役割分担するものですし、魔法はほとんど魔道具頼りという方も少なくないんですのよ?」
「魔法で戦う人っていないの?」
「魔法で攻撃できる魔法使いもいるけどそういう人はこんな風に旅をしていないわ。ちゃんと強いパーティを組んでいて危険な魔物の討伐依頼を受けたりとか王都の衛兵として働いてるわ」
「戦うのが嫌でそういう魔法が使えるのを隠してる人もいるんじゃないの?」
「隠してるならあたしが知ってるわけないでしょ」
「それもそうだな」
セレンとコールが言うには戦闘魔法使いというのは珍しいし需要があるからその辺にいるもんじゃないらしい。シルフは「魔法使いの人自体をあまり見たことが無いので」と言っていたがセレンもコールも戦闘魔法使いを見たことがあるわけじゃないとのことだ。
「ただ魔法協会の偉い人にはそういう魔法を使える人も何人かいるみたいよ。あたしも話に聞いただけだけど」
「攻撃できるくらい魔法が上手いなら他の使い方もできるだろうし無理に戦う必要もないのか」
「そうね。火や水の魔法なら魔法教師という道もあるし」
やっぱり魔法教師は美味しい職業なんだな。実際に教えてる俺としてはこれで食っていくほどお金を貰うのは申し訳ない気がするんだが。
「それはあんたが覚えるのにお金を払ってないからよ」
それはごもっともで。
というわけで移動時間や空き時間で剣や魔法の訓練をしつつケルソンバートを出て4日後、俺たちは無事エルシュヴィレンまでたどり着いた。
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