3-22 4人での出発
「2人はこの説明で理解できたの?」
俺の魔法への考え方を簡単な理科の話を交えながら説明するとコールが一緒に聞いていたシルフとセレンに問いかける。
「私はギンジさんの説明で魔法を使う時のイメージはしやすくなったかな」
「私も同じですわね。魔法よりも沸いたお湯からでる湯気や沸かした後に減るお湯の方が身近ですし」
シルフとセレンは別に同席しなくても良かったんだが俺のこういった話は本にも載っていないのでこういう機会に復習もかねて聞くのが一番いいとのことで、コールと一緒に話を聞いていた。
「つまり水の魔法の場合は空気の中にある蒸気を取り出してるってこと?」
「その考え方でいいよ。それと魔力自体を水に変換している場合があるな。魔法を使って水を出すから同じように見えるけどやってることは別だ」
「それはどうやって知ったの?予想?」
「いや、実際に水の魔法に関しては水を作りだすのも魔力を水に変換するのもどちらも使えるぞ」
「疑うわけじゃないけどそれが本当なら凄い話ね。シルフも両方使えるの?」
「私は水の魔法は1種類しか使えません。さっきの説明で言うと空気から水を作りだす方ですね」
「ギンジはあえてそっちを教えたってことよね?作る方が楽なの?」
「大量の水を作るなら魔力を変換するより空気から取り出す方が必要な魔力が少なくてすむからね」
コールは俺たちの話を聞きながら顎に手を当てて唸っている。
「いきなり全部理解しなくていいよ。俺もなんとなくの知識しかないからしっかり説明できない部分もあるし。たださっきシルフが言った様に魔法を使う時に自分が魔力で何をしようとしてるかをイメージするのは大事だと思ってるから説明してる」
「それは分かるわ。今のあたしは魔法を使うっていうのがそのまま氷の魔法に結びついてるから他の魔法を覚えるためにはそこを切り離さないといけないと思うし」
「そうだな。まぁどちらにせよ魔法を使う前に魔力共有からだ。あとで魔法の訓練もするからな」
「わかってるわよ。どうせなら剣も少し振りたいわ。シルフ、付き合ってくれない?」
「いいですよ。それじゃあコールちゃんと少し素振りしてきますね」
そう言ってシルフとコールは部屋を出て宿の庭に向かった。俺も見に行くか。
「私ももっと魔法を使えるようになった方がいいのでしょうか?」
2人が部屋を出ていった後、セレンが小さな声で訪ねてきた。
「セレンは使えるようになりたい?」
「それは・・・もちろんずっと憧れていましたから。ただギンジにマッサージされてから剣を使って戦えるようになったので、以前よりは魔法への憧れは薄れてしまった気がしますわ」
「せっかく一緒にいるんだから全部自分でできるようにならなくても大丈夫だよ。それでもやっぱり魔法が上手くなりたいならゆっくり上達していこう。に普通は1週間や2週間で覚えられるものじゃないみたいだし」
「それもそうですわね。1日で新しい魔法を覚えてしまう人が一緒にいると感覚がおかしくなりますわね」
「ハハハ、そうだね。俺が悪いんだ。セレンもシルフもコールも、それぞれのペースでやっていこう」
「そうですわね。ありがとうございます」
「お礼なんていらないよ。それよりせっかく2人が訓練をしてるんだ。魔法よりセレンが夢中の剣の訓練をしようか」
「それはいいですわね。ギンジが買って来たあの新しい剣も少し見てみたいですわ」
「ああ、あれね。実はあれは剣じゃないんだけどそれも説明しようか。もしかしたらセレンに持たせることもあるかもしれない」
そう言って俺は最近手に入れた仕込み短剣と黒棒を持ってシルフとコールが向かった庭に向かう。セレンもいつもの剣を腰に下げて付いてきた。
翌日、俺たちは街で食料や衣類・布類、馬の餌などを仕入れていく。コールが増えたので必要な物の量も変わって来る。買い物をしながら魔道具屋や武器屋に顔を出して明日にでも街を出ることを伝える。ケルソンバートの滞在はそんなに長くなかったけどこの人達には世話になったからな。それぞれに礼を言うとどちらもまた来てくれよと言ってくれて手土産まで持たせてくれた。ありがたい。またこの街に来た時はぜひ挨拶に来よう。
買い物を終わらせて馬車の荷台に詰め込んだ後は明日の出発に向けて早く休んだ。
そしてついにケルソンバートを出発する日の朝になったわけだが
「仕方ありませんが納得できませんわ!必ずこの借りは返していただきますわよ!」
ガタガタと揺られる馬車の御者台には俺とシルフ、荷台にはセレンとコールが乗っている。
夜までに宿場町に付ければ問題ないがもしつけなければ野営をする必要がある。その場合の見張りは少しずつ時間をずらしながら常に2人が見張り2人が眠ることにしたんだが戦闘力の問題で俺とセレンのどちらかは常に見張るようにするため時間が完全に被らないようになっている。移動中は食事の時くらいしか俺と一緒にいられないと知ったセレンが貧乏くじに文句を言ってるわけだ。
「セレンはご立腹ですね」
「まぁこればっかりは仕方がないからね。次に街でゆっくりできる時にでも埋め合わせをするよ」
「私がもっと戦えるようになれば問題ないんですが」
「シルフが悪いんじゃないよ。俺だって初めて通るところだからできるだけ安全に行きたいんだ。本当は夜の見張りは完全に俺がやってもいいんだけど」
「それはダメです。ギンジさんも休まないと」
「分かってる。だから少しずつ役割分担していこう。シルフが作った薬の効果も知りたいしね」
「そうですね!野営するときは使ってみます!」
セレンが調合を始めていくつか作った薬の中に魔物避けの薬がある。効果はまだわからないが魔道具屋の主人が問題ないと言っていたので売り物と同じように使えるだろう。
そうして4人になった俺たちパーティは次の街を目指してケルソンバートを後にした。
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