3-14 金髪の少女
「よく分からないけど知らない人と一緒に旅をするつもりはないので」
「えっ!?」
この世界の旅人がどんな価値観なのか分からないが俺としては知り合ったばかりの人と一緒に旅をするつもりはない。もちろん護衛のような関係なら別だが今のところ護衛を雇うつもりも誰かの護衛をするつもりもない。
「今日のところは帰ろうか」
「そうですわね」
調べものをしようと思ったが予想外の人に絡まれてしまったので出直そう。そう思ってセレンに提案する。セレンもそれで問題なさそうだ。
「ちょ、ちょっと待ってください!!話くらい聞いてもらえませんか!?」
「そう言われてもちょっと買い物しただけの関係ですし。別の街に行かれるのでしたら乗合馬車なんかもあると思いますのでそちらを利用したらいいんじゃないですかね?」
「そうなんですけど~!!」
うーん。どうしたものか。こういうのは関わってしまうと面倒ごとになるイメージがあるんだよな。ただ本当に困っているなら手助けしてもいいんだけど。でもそれにしたって俺じゃなくても良いならわざわざ俺が助ける必要もない気がするし。
「とりあえず話くらい聞いてあげてもいいんではありませんか?」
「さすがお姉さん、話がわかる!」
「そう言うわけではありませんが、断るにも話を聞く必要があるかと思っただけですわ」
「そんな意地悪言わないでくださいよ!」
まぁセレンが良いというなら話を聞いてもいいか。
どこで話をするかと考えていると少女が役場で交渉などに使う個室を借りてきた。そんなこともできるのか。部屋が空いている時であれば無料で借りれるらしい。ただ何かがあった時の為に中に入る人のプレートをチェックされた。
個室には机を挟んでソファが置いてある。俺とセレンは少女と向かい合うようにとなり合って座る。
目の前に座った少女は金色の長い髪を後ろで2つに分けて束ねていて赤いリボンとつけている。これはツインテールになるのか?おさげが2本というべきか。身長はシルフと同じくらいで服はだぼっとしたローブのような物を着ていた。
「それでは自己紹介から。あたしはコールと言います」
「俺はギンジ、こっちはセレンだ」
「ギンジさんとセレンさんですね。よろしくお願いします」
「話し方も普通でいいよ。普段から敬語ならそれでもいいんだけど」
「ありがとう。それじゃあ遠慮なく。早速本題なんだけど、あなた達の旅に連れて行って欲しいの。自分が生きるのに必要なお金は稼ぐわ」
「言ってる意味がわかりませんわ。それなら自分一人でいるのと変わらないと思うんですが」
セレンの言う通りだ。自分で金を稼ぐ、それなら別に俺たちに同行せずともやっていけるはずだ。
「あたしまだ14歳なのよ。だから一人だと街の行き来も満足にできないの」
「そうなのか。それだとこの街にはどうやって来たんだ?」
「もちろん他の人の馬車に乗せてもらったのよ」
「じゃあその方法で・・・ってそれが俺たちってことか」
「そういうことね」
つまりはヒッチハイクか。
「じゃあどこか他の街に行くまでってこと?」
「どうしても同行が嫌ならそれでもいいけどできたらしばらく一緒に行かせてもらいたいわね」
「どうして俺たちに?」
「正直に言うとあたしにとって都合がよさそうだからよ」
「都合?」
「そうね。ギンジさん達って祭りの時にいた銀髪の女の子を含めた3人で旅をしているのよね?他にも人がいるの?」
「いや、俺たち3人だけだな」
「男の人が1人で他は女の人。こういう集まりってあんまり多くなくてね。しかもギンジさんは若いし見た目も悪くないし」
話が読めないな。そりゃ俺だってどうせ一緒に旅をするなら可愛い女の子がいいからコールとしてもおっさんより若い男の方がいいのかもしれないが。そうだとしてもビジネスライクな関係なら見た目の優先度はそんなに高くないだろう。この世界で一緒に旅をするならそれこそ強さや水や火の魔法を使えるかどうかの方が大きい気がする。
「街と街の間の移動が問題ならそれこそ見た目なんかじゃなくて実力のある戦士にお願いした方がいいんじゃないか?俺たちの強さも何も知らないだろう?」
「どうせ抱かれるなら若い男の方がいいわ」
「はっ!?」
「えっ!?」
コールの話が急に思ってもいなかった方向にいったのでつい大きな声が出てしまう。黙って聞いていたセレンも思わず声が出てしまったようだ。
「それに男の人が何人もいたら身が持たないかもしれないわ。その点ギンジさんなら見た目も歳も悪くないし男の人は他にいないし女の人もいるから毎日あたしが相手するってわけでも無さそうだから」
「ちょっと待て、そういうことをするのは普通なのか?」
「男と女が寝食共にするならそういうこともあるでしょ?あなた達もそういう関係じゃないの?」
「俺たちはその・・・まだ・・・」
「ギンジ!そんなことを正直に言わなくても!」
それもそうだった。つい動揺してしまって素直に受け答えしてしまう。
「そうだったのね。3人の関係を邪魔するつもりは無いしそういうことが無いのはあたしも助かるわ。もちろん求められれば構わないけど」
他の戦士や旅人がどうしてるのかは分からないがこの世界では特に珍しいことでは無いんだろうか。それに目の前にいるまだ小さな女の子はそんな娼婦のように体を使わなければ生きていけないのか。
「君は今までそうやって生きてきたのか?」
「ちょっとやめてよ。'覚悟'はしているけど経験は無いわ。そうならないようにしてきたの」
可能性の話であって今まで実際に彼女がそうやって男に体を許して生きてきたわけじゃないらしい。少し安心する。
「それじゃあこれからもそうすれば」
「いつでも女の人ばかりのパーティが見つかるわけじゃないしその人達に同行させてもらえるわけじゃないからね。あなた達みたいなパーティを探していたのよ」
「それで都合がいいか・・・」
「そう。それに祭りの時はあたしの魔法を熱心に見てたからね。魔法使いがいないんじゃないかなって思って。旅に魔法使いがいると便利よ」
「火と水は使えるよ」
「あなた魔法使えたのね。それじゃああたしがいてもあまり意味が無いかも知れないわね。残念」
たしかに魔法使いが欲しいかと言われればそこまででもないが、俺が使えない魔法が使えるとなると話は別だ。信頼できる関係になれば教わることもできるかもしれない。
「とりあえず今この場では答えは出せない。3人で話あってみてからになると思う」
「ということはまだ断られたわけじゃないのね!?」
「そうだな。今のところは。それでもう少しコールのことを聞かせてもらいたいんだけどいいかな?」
「もちろん。言えないことがあるかも知れないけど嘘はつかないわ」
「それじゃあまずは君の出身を聞いてもいいかな?」
そうして俺はコールのことを知るために話を続けた。
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