3-1 3人の関係
ここから3章です。よろしくお願いします。
リアンクルを発ってしばらく馬車を走らせているが特に何が起こることもなく順調に進んでいく。相変わらず俺が御者台に座って馬車を引く馬の様子を気にしながら周りの景色をぼ~っと見ている。
馬車の中ではシルフとセレンが会話をしながら時々こちらに「替わりますか?」と声をかけてくれるが別に疲れる作業をしているわけじゃないので断る。御者台と荷台の間には幕があるのでたびたびめくって顔を出すシルフとセレンは初めてのドライブにはしゃぐ子供のようで微笑ましかった。
ヘルムゲンとリアンクルの間の街道よりも人の往来は活発なようで俺たち以外の馬車も見かけた。すれ違う時にはお互いに譲り合い、後ろから来る馬車には速度を落として追い抜いてもらって先に行ってもらった。こちらの馬車は荷物は少ないものの一頭立てなのでゆっくり進む予定だ。馬が疲れてしまわないように馬の様子を気にしながら進む。
「少し休憩にしようか」
街道から横に広がる原っぱに馬車を進めてそこで止め、馬車の中の二人に声をかける。そして馬車から桶を出してそこに水を出して馬に飲ませる。ここは草も生えているので餌の方は大丈夫だろう。
馬車から降りてきたシルフとセレンは腰に手を当てて体を伸ばしている。ずっと座りっぱなしで馬車に揺られているだけでも体は疲れるものだ。俺も同じように体を伸ばす。
「二人とも疲れてない?大丈夫?」
「はい!大丈夫です」
「私も問題ありませんわ!その分この子が頑張ってくれてますし、この子にはちゃんと休憩させてあげないといけませんわね」
そう言ってセレンが水を飲む馬を撫でる。
「それで二人に話しておきたいことがあるんだ」
「なんですか?」「なんでしょうか?」
「これはシルフにはすでに話してあるんだけど・・・」
そう言ってこの旅に出たきっかけと目的をセレンに話す。セレンにはこれまで言ってなかったが魔力の流れが見えることも教えておく。セレンの場合は魔力よりも気の流れのことも話す。こっちはシルフにも話してなかったことだ。
「旅のことはお父様に少し聞いておりましたが体を流れる魔力が目に見えるとは・・・」
「それに気?の流れですか。ギンジさんはやっぱりすごいんですね」
「すごいかは分かんないけど便利だとは思う」
「いえ、すごいことですわ!ですが今話してくれたということはあまり知られたくないことなんですわね」
「そうだな。できるだけ内密にしてほしい」
「「わかりました(わ)」」
「ありがとう、それで話というのはこの旅のことなんだけど、3人の立場は対等にしときたいと思っている」
「どういうことですか?」
「俺の旅について来る2人じゃなくて3人の旅にしたいんだ。どこに行くか、何をするか、そういうのも全部ちゃんと3人で決めていきたい。2人が行きたいところ・やりたいことや逆に行きたくない・やりたくないことを遠慮せずに言って欲しい」
「それは・・・いいんですか?」
シルフが遠慮がちに訪ねて来る。
「そうしてくれないとうまくやっていけないと思うんだ」
「ですが私たちはギンジさんに恩がございますし、いきなり遠慮なしというのも中々難しい気がしますわ」
「もちろんいきなりは難しいと思うからそれぞれのペースで良いんだけど、そうだな。俺たちは家族だと思ってほしい。これから先一緒に旅をして、寝食を共にする家族。だから思ったことは言って欲しいし、気を使い過ぎないで欲しい」
「そういうことですか。それならなんとかやれると思います」
「そうなるとギンジお兄様、というわけですわね」
「まぁ簡単に言うとそういうことだな。ただこの3人の間では歳の差も気にしなくていい」
「ギンジさんがそう言うのなら頑張ってみます!」
「それがギンジさんにとって一番いいのでしたら私もそういたしますわ」
「それでできるなら'さん'もつけなくていいし話し方ももっと砕けててもいい」
「それは何か意味がありますの?」
「この先なにがあるか分からない。強い魔物と戦うこともあるかもしれないし、人に襲われたりするかもしれない。そういう場面ではできるだけ言葉を短く伝えれた方が良いと思ったんだ」
「そういうことですか」
「ギンジ!」
「お、おう。なんだ?」
「これでいいんですわね?」
急にセレンに呼び捨てにされて驚いたが俺も慣れないとな。
「そういうことだ」
「慣れるまでは変な感じがしますが大丈夫だと思いますわ」
「セレンは家の使用人の人相手で年上の人でも'さん'を付けずに呼ぶことに慣れてるだろうし俺相手もすぐだろう。シルフはどうだ?いけそうか?」
「ギンジ・・・さん」
「ハハ、まぁちょっとずつな」
「はい、頑張ります・・・」
セレンは問題ないだろう。シルフは教会でも年長だったし同年代の友達も全然いなかったみたいだからしばらくは難しいかも知れない。
「そういうことでしたら私たちも呼び方を変えないといけませんわね。シルフ、私ならどうですか?」
「セレン・・・ちゃん」
「それではいけませんわ。しばらくは特訓ですわね。馬車の中でやっていきますわよ」
「うう・・・」
「それでこの後のことなんだけど」
そう言って俺は今日のことを話す。俺たちは馬車を使っているがかなりスローペースなので宿のある集落に1日で行くのは難しいので野営することもある。街道沿いにはそういったことができる平原も結構あるので場所は問題ではないがやはり夜は見張りが必要だ。全員でおやすみ、というわけにはいかない。
「野営をする時は俺が1人で見張りをして2人に休んでもらって、俺が休む時は2人で見張りをしてもらおうと思ってる」
「それが良いのか悪いのかさえ分からないです」
「そうですわ。やったことがないので判断できませんわね」
「俺もないからね。しばらくの間は何かあったら必ず3人で行動したい。魔物が現れたらその時点でお互い起こし合おう。人に声をかけられたりした時もだ。危険かどうか判断する前に3人でことにあたりたい」
「それですとあまり休めないかもしれませんわね」
「その通りだ。だがしばらくはそれを徹底したい。何かあった時に起きてる人が手を取られたら残ってる人も寝てるより寝不足でも起きてた方がマシだろう。何かが起こる前に必ず起こし合おう」
「「わかりました(わ)」」
「ちなみにセレン、夜目は利くのか?」
「他の方がどれくらい見えるのか分かりませんのではっきりとは言えませんが夜でもそれなりに見えると思いますわ。あ!ギンジさ、んんっ!ギンジに気の流れを良くしてもらってからは以前より良く見えるようになった気がしますわね」
「そうか。一応しばらくは夜はできるだけ俺が見張るようにするけど暗い時にどれくらい見えるか把握しておいてくれ」
「分かりましたわ。それにしてもギンジは夜目が利きますのね?」
「いや、さっき言ったけど魔力や気の流れが見えるからな。暗くても関係ない」
「本当に便利ですわね~。魔物にもそういった流れがございますの?」
「魔物にもある。今のところ出会った魔物は、だが。未確認のものは何とも言えないな」
「それもそうですわね」
「でもギンジさん1人で夜通しというのは大変すぎませんか?」
シルフは'さん'を外すのをとりあえず諦めたようだ。
「シルフの心配の通りさすがにずっと起きてるのは難しいな。だから」
「だから?」
「ここからはしばらく御者を2人に任せるから俺は荷台で寝ようと思う」
「それで今この話をしたんですわね」
「その通りだ」
「じゃあ昼の間にギンジさんが寝て、夜は交代という感じですね?」
「そうだ。もちろん昼だからと言って何かあったら必ず起こしてくれ」
「分かりましたわ。それじゃあギンジにいっぱい寝てもらうために早速出発いたしましょうか」
そう言って御者台に座る2人を見ながら俺は水やり用の桶を抱えて荷台に乗り込んだ。
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