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2-3 リアンクル散策

 リアンクルで泊まった宿は連泊で割引してくれたのでとりあえず5泊お願いして、継続して滞在する場合はその都度更新という形でお願いした。宿の女将さんは狐の獣人だった。獣人の人はやはり外見だと性別はなんとなく分かるが年齢が全然分からない。宿を仕切っているくらいだしそこそこの年齢なんだろうか。いや、獣人でも女性の年齢に触れるのはいけないな。

 俺たちみたいな客が珍しいのか女将さんがおしゃべりなのかその両方か、夕食を宿の食堂で頂く時に同席して色々と話を聞かれた。と言ってもまだ住んでいた街を発って2日しか経っていないので話せることなんてほとんど無かったが二人で街を出て旅をしていると聞くと「若いのに偉いねぇ」と食事代を割引してくれることになった。

 女将さんが積極的に話をしてくれるのはこちらも助かるのでついでにこの街のことを聞く。


「この街は獣人、って言う表現でいいんですかね。の人が多いですね。ヘルムゲンではあまりいなかったので」

「そうだねぇ。呼び方は亜人でも獣人でも構わないよ。何て呼ばれたって自分は自分だからね。ちゃんと一人立ちしてる大人なら呼び方くらいで騒がないよ。ただ戦士の人とは揉めないように気を付けるんだよ」

「争い事は嫌いなので大丈夫だと思います」

「お兄ちゃんは若いし絡まれることは多分無いと思うけどねぇ。それでも戦士同士の喧嘩は珍しくないし衛兵もやりすぎなければ止めないからね」


 喧嘩か・・・目立つのは嫌だし金にならない戦闘なんてもっての他だ。できるだけひっそりしたいが獣人が多いこの街だと見た目だけで少し浮くんだよな。


「ご忠告ありがとうございます。それでいくつか聞きたいことがあるんですが」

「なんだい?」


 役場・魔道具屋・教会の場所を聞くと快く教えてくれた。あとは狩場と採集場所が分かればとりあえず日銭は稼げるだろう。そのあたりは役場や魔道具屋で聞いたらいいかな。


 昨夜はこんな感じで女将さんと親交を深めて、今日は早速街を回ってみようと思う。まずは役場かな。

 相変わらず朝はシルフの方が早起きだった。昨日のこともあったので今日は起こしてくれた。身支度を整えた後、宿で朝食を食べてから出かける。


 朝だからか役場は人が多かった。もちろん受付の中も受付の外にいるのもほとんどが獣人や獣耳がある方々だ。

 急ぎの用があるわけじゃないので他の人の邪魔にならないように壁際で回りを観察する。シルフも獣人の人達が珍しいのかキョロキョロしている。犬みたいな人と猫みたいな人が多くて時々トカゲ?爬虫類っぽい人もいる。熊みたいな人は一瞬本物の熊かと思った。この世界に熊っているのかな。

 周りの会話に耳をすませると馬車の護衛で人を集めている人が多い。あとこの街の近くに鉱山がありそこでの労働力や警備などもあるようだ。馬車の方もここで取れた金属や金属製品を他の街に運んでいるのかもしれない。加工もこの街でやってるなら武器やアクセサリーなんかも充実してるかもしれないから後で店を見に行ってみよう。


 仕事を探す人やその雇い主たちがいなくなるまでまだ時間がかかりそうだったので一旦役場を出て他のところを見て回ることにする。


「色んな人がいますね」


 魔道具屋を目指して歩いていると獣人の人達を見た感想かシルフがぼそっとつぶやいた。


「見慣れてないから気になるよな。まぁ普通の人だって髪の色が違ったり色んな人がいるからあまり気にしすぎないようにしよう」

「そうですね。あ!ギンジさん、喧嘩はダメですよ!?」

「する気ないよ。身を守るために必要じゃなければタダで戦うなんてしたくない」

「お金になるならするんですか!?」

「犯罪じゃないなら・・・金額次第かな」

「危ないのはダメです!」

「わかったわかった」

「ダメですよ!」


 これだとどっちが保護者かわからないな。どちらにせよ無駄な争いはせずにすごしたい。


「ここみたいですが・・・大きくないですか?」


 宿で女将さんに聞いていた場所に来ると1階建てではあるものの役場や宿と同じくらいの大きさの建物があった。魔道具屋の看板が出てるので間違ってはいなさそうだ。

 眺めていても仕方ないのでとりあえず扉をくぐって店内に入る。うん。広い。商品もかなりたくさんあるように見える。

 まだ朝だからか客入りはそんなに多くない・・・いや普段の客の量がわかんないけども、魔道具が並んでる棚には人がおらず薬品系が並んでる棚の方に戦士と思われる人がちらほらいるくらいだった。仕事に行く前に必要な物をそろえに来たのかもしれない。


「色んな物がありますね~」


 人が少ないので魔道具の棚をシルフと眺める。水飲みや火おこしなど見慣れたものから何に使うのかわからないようなものや大型のものなどさまざまだ。


「何かお探しですか~?」


 後ろからゆるい感じの声をかけられたので振り返ると獣耳を生やした小さな女の子が立っていた。細長い尻尾の感じからすると猫の半獣人だろうか。耳と尻尾以外は人と変わらないのでコスプレみたいに見える。エプロンのような前掛けをしているので店の人だと思うが、お手伝いか何かだろうか?


「いえ、お店が広いのと品ぞろえがすごかったので見させてもらってました」


 何かを買いに来たわけではないので正直に答える。


「冷やかしですか~?」

「迷惑だったらすいません。一応買い取りをお願いしようと思って来ました」


 予想外の辛辣な返事が来たのでただの冷やかしでないことをアピールする。


「それでしたらこちらへどうぞ~」


 そう言って奥のカウンターに案内された。ヘルムゲンからここにくる途中でシルフが採集した素材を買い取りしてもらう。女の子がそのまま素材を査定しはじめたのでちょっと驚いた。店番だけしてるお手伝いではなくちゃんとここの店員さんみたいだ。


「これはどこで取って来たんですか~?」

「私達はヘルムゲンから来ましてその途中で採集してきました」

「なるほどです~」


 採集場所を聞かれたのでシルフが答えると納得したのか査定を終わらせてシルフのプレートに入金する。


「珍しい素材なんですか?」


 俺は植物の知識が全く無いのでストレートに聞いてみる。


「いえ~素材自体が珍しいわけではないんですが、森の方で取れる素材じゃないのであんまり持ち込まれないんですよね~」


 話を聞くと採集をメインでやっている人はあまりおらず、鉱山の方にある森で狩りや他の仕事のついでに採集してくる人くらいなので持ち込まれるのはそちらで取れる素材がほとんどとのことだ。

 他に採集をやってる人が少ないならとりあえずそちらの森で採集をしてみようか。そんなことを考えてるとシルフが猫耳少女からどんな素材が取れるか、需要があるかを聞いていた。やはり採集目的の人は珍しいのか「お姉さん結構詳しいですね~」と言われていた。


「それにしてもすごい品ぞろえですね」


 キャリーさんの店が狭かったので魔道具屋というのはそういうものだと思っていた。なので店員さんに尋ねてみる。


「ここはいわゆる獣人の人が多いですからね~」

「それが関係あるんですか?」

「獣人は魔法が苦手な人が多いですから~」


 獣人は身体能力は高いが魔法が苦手。というのがこの世界の通説らしい。シルフも知らなかったようだ。


「お客さんは魔法使えるんですか~?」

「まぁちょっとだけですが」

「残念ですね~」


 魔道具を買ってくれないからだそうだ。申し訳ない。


「また来てくださいね~」


 ふわふわした店員さんだ。ただ査定をしているときはしっかりと素材を見ていたようなので目と知識は確かなんだろう。

 採集自体はするつもりなのでまた来店することになるだろう。「可愛い子でしたね」と言うシルフに同意しながら役場の方に戻った。

読んでいただきありがとうございます。

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