1-21 相談
「ギンジさん、お水どうぞ!」
そう言ってシルフが水の入ったコップを渡してくれる。今日はシルフの護衛で朝から森に来てるが水をもらうのは3回目だ。まだ昼にもなっていない。
昨日マッサージをした後、水の魔法が使えるようになったシルフは何度も何度も礼を言ってこのままだと日が昇るまで続くんじゃないかという勢いだった。とりあえず服を着替えることと汗をかいてるから寝る前に汗を流して風邪を引かないようにと指摘すると、急に恥ずかしそうにして部屋から出ていった。
話は戻るが魔法が使えて嬉しいのか水を出しては俺にくれる。ニコニコと笑顔で魔法を使うシルフは可愛いんだけど水はもういいかな・・・と言えるはずもなく3回目の水も笑顔で受け取り飲みほした。
マッサージの効果で全身を流れる魔力自体がスムーズになっているので水魔法の使用だけじゃなく、無意識に行っている身体強化も昨日までより強くなっている。そのせいか今日は朝から元気いっぱいだ。俺への水やりイベントを挟んでもいつもよりいいペースで採集が進んでいる。
正直、昨日1日で使えるようになるとは思っていなかったし、昨日の魔法の発動を見た後もしばらくは感覚を掴むまで魔力共有や練習が必要だと思っていたが杞憂だったようだ。慣れるまでは自由に使ってもらって慣れてきたら形状のや温度の変化を練習してもらおう。俺自身は一応薄くした水の魔法で物を切るくらいはできるようになってきている。この水の刃を飛ばせれば攻撃手段として使えそうなんだがまだ飛距離が出せない。同じく弾のようにして飛ばすのも手元だと木の板に穴を空けたりはできるが遠くに飛ばすとただの水の球になってしまう。練習あるのみだな。
採集を終えて街に戻り魔道具屋へ。シルフが素材の買い取りをしてもらってる間、店内をうろついてると声をかけられる。
「おや、今日は早いお帰りだね」
普段は店の方に顔を出さない店主のお婆さんだ。
「キャリーさん、こんにちわ。店側にいるのは珍しいですね」
「変なもの持ち込む客が少ないからね。わざわざ出てこないんだよ。ギンジも何か持ってきな」
「危険な狩りは禁止されてますので」
「もう尻に敷かれてんのかい?」
「そういうわけじゃ・・・あるかもしれません」
「情けないねぇ」
キャリーさんとは以前に魔法関係の相談に来た後も何度か訪れて話をしたので名前で呼ばれるくらいには仲良くさせてもらっている。『最近の若いもんは・・。』みたいなこともよく言われるけど・・・
「それでもずっと今みたいな採集だけするってわけにはいかないだろう?」
「そうですね。だから魔法が使えたらと思ってるんですが」
「魔法が使えても仕事のアテはあるのかい?」
「ここで雇ってもらえないですか?」
「うちでギンジを雇うなら狩りに行かせるよ」
「それはダメです!!!」
買い取りが終わったのかシルフが割って入ってきた。
「キャリーさん、どうせギンジさんに危険な素材取りに行かせる気でしょ!!」
「そりゃ力があるんだ。それに見合った仕事をさせるよ」
「でも危ないのはダメです!」
「シルフ、あんたの気持ちは分かるよ。でもね、ぬるい仕事ばかりじゃギンジが成長しない、それどころかどんどん腐っていっちまうよ。才能の有る若いもんが腐っていくのを見るほど悲しいもんは無いんだ。わかるかい?」
「・・・・・」
シルフは返事をせず俯いてしまった。
「今すぐどうこうってわけじゃないよ。それでもずっと縛りつけておくことはできないし、ギンジ!あんただってずっとこのままってつもりじゃないんだろ?」
「そうですね。まだはっきりとはしていませんが」
「なんだい男らしくないねぇ。言えないようなことかい?」
「そういうわけじゃないですが・・・シルフに相談してからですね」
「あたしには言えないんだね。老人をのけ者にするなんて悲しいねぇ」
「僕たちをおもちゃにしようとしないでください。まぁシルフと相談して、その後に相談させてもらいます」
「あたしが生きてるうちに来るんだよ」
「そんな縁起でもない。それに・・・多分すぐになると思います」
俺とキャリーさんの話を聞きながら不安そうな表情のシルフを見て、俺はそう答えた。
「ま、二人できちんと話すんだよ」
「はい。ありがとうございます」
なんだかんだで俺たちのことを気にかけてくれているキャリーさんにお礼を言ってシルフと共に教会に帰った。
「失礼します」
その日の夜、寝る前にノックの音がしてシルフが俺の部屋に来た。約束していたわけじゃないが昼の話のことだろう。「どうぞ」と返事をして部屋に招き入れた。
「どうしたの?」
いつものように椅子に座ってもらい来訪の意図を聞く。俺はベッドに腰を掛けてシルフと相対する。
「お昼の話ですが・・・その、相談されに来ました!」
「・・・え?」
「私に相談があるんですよね!?どうぞ!相談されます!!」
「相談されにって・・・ハハハ」
「フフッ、笑っちゃダメですよ。これでもお昼からずっと悩んでたんですから」
シルフが変な言い方をするので二人で笑ってしまう。一通り笑うのが落ち着いてから俺は話を切りだした。
「せっかく相談されに来てくれたから相談するね」
「もう!それは言わないでください!」
「ごめんごめん。それで相談というかまずはシルフに聞きたいんだけど」
「はい」
「とりあえずは水だけだけど、魔法が使えるようになって将来のことってどうなりそうかな?教会を出た後の働き口は見つけられそうかな?」
「正直わかりません」
「そりゃそうか。昨日の今日だしわかんないよね」
「いえ、それもありますがそうじゃなくて・・・」
「うん」
「絶対無理だと思っていた魔法の習得ができたんです。もちろん自分の力じゃなくてギンジさんのおかげなのはわかっています。それでも、私にも何か可能性があるんじゃないかって。何ができるようになるか分からないから、ちょっとこれからのことも全部考え直してみようかなって思ってます。なので今はまだわかりません」
「じゃあ今までみたいに不安ばかりじゃない感じかな?」
「そうですね。もちろん不安もありますが今までよりは何とかなるかなって思えてます。無理なことなんてないんだって思えましたから」
そう言ってシルフは笑顔を向けてくれる。良かった。ちゃんと目の前の女の子の力になれたことを嬉しく思う。
「それで、ギンジさんはこれからどうするんですか?お昼の感じだと何か考えがあるんですよね?」
「うん。俺はシルフにしたみたいにいろんな人に魔法を教えてあげていきたいなって思ってる」
「魔法教師になるんですか?」
「お金を稼ぐためにやるんじゃないよ。それに魔法協会のことも良く知らないから争ったりもしたくないし、あくまでひっそりとだけどね。教会の子とか、それこそ奴隷になっている子とか、そういう子が自分で生きていく力を手に入れられるように手助けできたらって」
「それじゃあ・・・」
「うん。そのうち街をでて他の街に行こうと思う。当てがないうちは色んな街の教会に行ってみようかなって思ってる」
「そうですか・・・」
シルフは俺が街を出ることを止めようとはしなかったが暗い顔だ。でも俺が言いたかったのはこの先、
「もし良かったらシルフも一緒に行かないか?」
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