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異世界にコスプレのまま飛ばされました  作者: スイッチマン


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いざ行かん!!


さあ、出航だ。ツルピカが法螺貝を吹く、長く低く遠くまで。



いざ行かん、北の集落へ!



港の仲間達が大漁旗を振り、子供達が手を振る。とても賑やかな見送りだ。

「すぐに帰ってくるよ。」って言ったのに。



「いいですねぇ・・・。」


ヘルメス様が目を細めて呟く。

湾を抜けると徐々にスピードがあがる、波しぶきと共に海鳥が船と並走して飛んでいく。

少し肌寒い。

今の時期は嵐も少なく比較的穏やからしいが、北に進むにつれ潮流の影響があり舵取りが非常に難しく、天候や風向きの地形の影響で接岸できるかが懸念されている。

集落に最も近い港は、大型船の着岸が想定されていない造りになっている為に、状況によりそのまま引き返す事もありえるらしい。

きっと色んな条件付きなんだろうなぁ。

クラっちはそれでも届けたかったんだね。



北の港までは1週間ほどの予定らしい。

難しい顔をしたクラっちが、ヘルメス様や船員と海図をみては意見交換をしている。


「俺らは漁民だからよ、こんなでっかい船の事はよくわかんねーが風の匂いや音、海の色、鳥の様子でなんとなーく海の状態がわかるんだ。暫くは順調、あとは海流と風の神様の機嫌しだいだな。」


お頭の言う通り暫くは順調だった。3日目あたりから急に風が弱くなり進みが遅くなった。

これじゃ大幅に遅れちゃう⁈どうしたらいいの?



・・・あっ!!!


眉間にシワのクラっちの袖を引っ張る。


「ねえねえ、私、船の後ろから風送ってもいい?そっとやるから。」


扇子で口を隠して話す私に、ハッとして目を輝かせる。


「待て、相談してくる。そのままでいろ!」


と言い残し消えていった。

暫くしてヘルメス様を連れて戻ったクラっちが


「まずはそーっとだぞっ!そーっと!」


と何度も念を押した。わーってるって。


そーっと、パッタ・・・パッタ・・・

帆に風を受けた船がウィーンと進む。

パッタ・・・パッタ・・・ウィーンー


「メグ、その調子で頑張れ!」とグッドサインをする。

メグ、頑張ります。




パタパタマシーン化した私に皆気遣って声を掛けてくれる。

ゴルさんは、体の大きさを活かして風除けになってくれたし、ツルピカは眩しいのに日陰を作ってくれた。目を瞬かせると自分のサングラスをそっと掛けてくれた。

ツルピカの子分達(騎士のなりそこな・・・)は研修期間中のあれやこれやを話して聞かせる。愚痴なのか?話に夢中になって扇子を大振りしそうになったのを慌てて止められるというドッキドキのハプニングも多々発生した。



航海中はクラっちとも久しぶりにゆっくり話す事ができた。

実はおばあちゃん、5年前に胸の病を罹ってしまったんだって。

商売をする先々で医者や薬師を聞いて回った先に北の薬師に行きついたそうだ。集落の長であったその人自ら薬を作り渡してくれたと言うの。そのお陰でおばあちゃんの胸は今はすっかり落ち着いたって。本当にありがとう。


その長老も病にかかり後継を決めかねていた所、養子にとった娘が継いでくれたらしい。

ここ数年、集落からは若者が去り華やかで過ごしやすい都市部へと流れていったそうだ。残ったのは数名の若者と幼い子供達とその親や祖父母世代。

後継者となった義理の娘はみっちりとしごかれたが弱音を吐く事なくやり遂げたんだって。

修行の間にも子供達相手に文字の読み書きや薬草の知識、そして歌を教えたと言う。初めて聴く曲調で『ガッショウ』というらしく「ビリーヴ」「タイセツナモノ」「コスモス」という歌を、子供達が揃って楽しく歌うものだから大人も自然と覚えてしまい、結局はパートというものを分けて皆んなで歌ったんだって。そしたら、それぞれの歌声の重なる旋律がそれはそれは泣けてしまうほど美しいのだとか。

その娘にクラっちも会った事があるらしいが、凛とした美人で髪を簪(かんざし)でまとめ、子供達が結った紐にはメガネがくくりつけてあり、帯にキセルを刺しているちょっと風変わりな格好をしているって。

名を「ヨウ」と言うらしい。


♪たとえば君が 傷ついて

くじけそうに なった時は

かならず僕が そばにいて

ささえてあげるよ その肩を〜


「おまえ・・・何故知ってるの?」




私に手ずから食事を与えたり、肩揉みしたり(あれ、メイドさんかな?)甲斐がしくクラっちがお世話してくれたお陰か予定よりも早く北の港に近づいてきた。

クラっちが先に足の速い人間を陸路から集落へ使いに出していたらしく、おおよその到着日を伝えていた。今、遠くにいくつかの影が見える。


「クロウ会頭!」


ヘルメス様が慌ててやってくる。


「付近が浅瀬になっていてこの船では着岸が出来ない。潮の流れもあるから、手漕ぎの小型のボートでは厳しい。」


ここまで来て。すぐそこなのに。


海岸では先程より人数が増えこちらの様子を伺っている。ちらほらと手を振るものが出てきた、子供もいる。


私はお頭に耳打ちした。



「クロっち。ちょっと」




体にロープをくくり付けて海面ギリギリまで降ろして貰う。私に続きお頭、クロっち、ゴルさん、ツルピカ組子分ズ。

インベントリからスクリュープロペラの漁船を出した。それぞれ乗り込みお頭が操作する。

ブーンとエンジン音が鳴った。


イケる。

説明は終わった後でいいや。

北の人達は警戒するだろうか、敵意は無いとわかってくれるかな?

そしてあの人は気付いてくれるだろうか。



十二単の朱色の唐衣と鮮やか緑の表着を出して大漁旗と共に掲げる。



いざ行かん、友の元へ!!





ブーーーンブーーーンとしぶきをあげて船は進む。取り敢えず今はクロっちの顔は見ないでおく。



「アキちゃーん!アキちゃーん!アーキーちゃーーーん!」


十二単の大漁旗。手を振って大声で叫んだ。



「アキちゃーん!!!」



海岸に立ち尽くした綺麗な大人のアキちゃんは目を見開いたまま立ち尽くしている。



「メグだよー!!!たくさん持ってきたよー!!!アキちゃーん!」



顔にかかった波の飛沫を手で拭った。




お読みいただきありがとうございました。


気軽に楽しく読んでいただけたら幸いです。


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