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3話 ゲームを間違えたかも……?

こんにちこんばんは。

続きを書きながらこれ面白いかなぁ問題に直面する仁科紫です。

自信ないなら投稿するな?それはそう。所詮自己満足ってことで。


それでは、良き暇つぶしを。

 かさりと音を立てて緑生い茂る地面に降り立つ。ちょうど夕焼け時なのか空は黄と藍が混じった黄昏色をしている。この時間帯の空がネムは好きだ。

 もっと空を良く見ようと近くの木に飛んで枝に止まる。太陽は赤みの強い橙色に輝いていた。目で見ても眩しくないことに驚くが、綺麗だからいっかとただただ見惚れた。


「ミィッ!」


 ぼんやりと眺めるネムを窘めるような鳴き声がした。見惚れていたネムも流石に我に返り、頭の上に乗っている羽うさぎの存在を思い出す。

 パタパタとネムの目の前にやって来た羽うさぎは何かを訴えるようにネムを見つめる。


「なぁに?」


 何か言いたげな羽うさぎにネムがこてりと首を傾けると、羽うさぎもこてりと同じ方向に首を傾げる。その姿はただただ可愛い。

 ただ、何を言いたいのかはまったく分からない。

 しばらく見つめあった結果、うっかりアイに聞き忘れた重大なことにネムは今更ながら気づく。


「……あっ、そういえば。君、名前は?」

「ミィ……。」


 何処か呆れたような目で見てくる羽うさぎはさておき、どうしたものかと考える。最悪、ネム自身が名付けなければならないが、ネーミングセンスに自信のないネムとしては少々困る話だ。

 とにかく、名前があるにせよないにせよ、羽うさぎ自身に教えてもらう方法を考えるべきだろう。


「話せないもんね……そうだ。」


 綺麗な夕日を背に地面へと降り、草の生えているところを避けて地面の見える位置へと移動する。途中で拾った木の棒であいうえお表を描いた。


「名前、指さして。」

「ミ。」


 ネムが言うと同時に羽うさぎがまず『あ』に丸をし、次に『る』を指さした。


「ある……アル?」

「ミ!」

「そっかぁ。アル、これからよろしくね。」

「ミィ!」


 えへんと胸を張る羽うさぎ……アルはとても偉そうだが、そんなところも可愛らしいとネムは笑った。


 そうしてのんびりと過ごしているればいつの間にか日が沈み、辺りはすっかり暗くなってしまった。慌てて左手首に表示されている時間を確認すると、もう5時半を過ぎてしまっている。あと30分もすれば夕飯だろう。……いや、こちらの時間ではあと1時間もあるのだった。寝ることが出来ればより最高なのだが、それはこれから模索していくとする。


 ネムはこの世界で過ごした3時間程の出来事を思い浮かべ、ニマッと笑う。本懐は遂げておらず、初めはどうしたものかと思ったが僅かな希望は手に入った。

 ただ眠るためだけに始めたが、思いもよらない出会いを得たものだ。アルという相棒やAIのアイとの会話は思い浮かべただけでも胸が踊る。

 きっと、睡眠以外でもこの世界に愛着を持つことになる。そんな予感がネムの中に浮かび、そして思ったよりも面倒に思っていない自身にネムは少し驚いた。

(成長したって、ことかな……?)

 ネムは常に睡魔と共に成長した。結果として睡眠時間が減る出来事は面倒だと遠ざける傾向にあった。それは、友人との遊ぶ時間や部活といった所謂青春と呼ばれるような時間を全て避けていたという事実に他ならない。

 故に、今他者との会話を楽しめている自身に驚いている。そして、同時にネムはこの世界で自分が変わる可能性、このどうしようもない睡魔をどうにかできるのではないかという可能性に希望を抱いた。

(これからが楽しみ。)

 ネムは胸を踊らせ、そして、そろそろログアウトしようとメニューを表示させる。

 ログアウトボタンを探してみるが、ログアウトボタンはグレー表示されており、いくら押してもログアウトできない。


「なんで?」


 意味が分からないと首を傾げていたその時だった。


「ミィッ!!」

「えっ……?」


 アルに体当たりされ、横へとズレる体。風を切る音と共に何かがネムの頬を掠って後ろの木に突き刺さる。僅かに走る痛みに顔を顰めた。


「な、に……?」


 コロンコロンと空中を転がる体はやがて草むらにすっぽりと入ったことで止まる。

 少し目が回ったが、今はそれどころではない。いったい何が起きているというのか。

 身体の横に張り付いているアルと共に恐る恐る突き刺さった物へと目を向ける。それは矢だった。息をのみ、それが飛んできた方を見る。薄暗いが確かに黒い人影が見える。目に入ったのは赤色のカーソル。アイが言っていた言葉が自然と呼び起こされる。

『プレイヤーとの見分け方はこのカーソルの色なので忘れないでください。青はプレイヤー。黄色はNPC。赤は───』

(───敵っ……!!)

 認識すると同時に慌ててさらに奥へと体を沈めた。


「□□△△▽□○○○◎◇〇●■!!」


 何か叫んでいる声がするが全く理解出来ない。何度も弓を射る音に怖くなり、身体が縮こまる。このままではいけないと分かっていても、その場から動けなくなる。

 しかし、アルは容赦がない。声を出さず、ひたすら手を引っ張ってくるのだ。

 矢は段々近づいてくる。

 その場にいてはいつかあの矢が当たるだろうという現実に思い至って、ようやくネムの体は動いた。

(何あれ何あれ何あれ……!)

 飛ぶのはまだ慣れていない。選べる移動手段はただ足を動かすことだけだ。恐怖から上手く走れない体を意思だけでどうにか動かし、先を急ぐ。何かに躓いてもただひたすら前へ、正しく転がるように貼りし続ける。


 暫くして後ろからガサガサという音が着いてくる。追跡されているのだろう。命の危機を感じる。どうにかしないといけないのは分かるが、どうすればいいかすら分からない現実に打ちひしがれそうになる。そもそもこれはゲームだ。ここまで必死に逃げる必要はあるのかと立ち止まりたくなる。

(でも……。)

 アルを見る。必死に前を飛ぶアルはまだ諦めていない。ここで自分一人が逃げないのは違うと思った。

(何か……!)

 ふと視界に木の洞をとらえた。高い位置にあるため分かりにくいが、ネムがすっぽり収まりそうな大きさはある。比較的近く、前方にあるため入るのは容易い。この時ばかりは良くもないが悪くもない自身の運動神経に感謝した。

 後ろから追尾する姿は見えず、音は未だネムの痕跡を探している。今なら追跡者に見つからないうちに入り込める。


「アル!入るよ!」

「ミッ!」


 返事をしたアルを頭に乗せ、洞の中へと一気に飛び上がり、入り込む。洞は運が悪いのか良いのか、蛇の住処となっていた。


「ごめん。蛇さん……!お邪魔します!」

「シャッ!?」


 ネムは認識すると同時に蛇に向かって謝っていた。蛇はギョッとした顔でこちらを見る。飛び込んだネムは天井へと張り付き、アルはネムの背中にしがみついた。当然ながら突然の侵入者に蛇は襲いかからんとする。しかし、そこへ続いて飛び込んできたのは先程の矢だ。


「ギャッ!?」


 伸びた蛇の背へと突き刺ささらんとする矢に蛇は一瞬で体を縮め、次の瞬間には外へと飛び出した。ダンッという音が洞に反響する。蛇は外にいるお邪魔虫を排除しに行ったのだろう。興奮したような不明瞭な声が聞こえ、蛇の威嚇が耳に入ると声が遠くなっていくのが分かる。蛇の巣からそろそろと降り、聞こえてくる声の方角から距離をとった。


 暫くして木の根が大地から隆起している場所を見つけた。下には小動物なら隠れることができそうな空間がある。崩れそうだが、ログインする度に違う場所に出る可能性があるならここでも問題はないだろう。

先程のようなことがないようにと体をちょうどいい隙間に滑り込ませ、アルを背中から下ろす。


「びっくりしたね。」

「ミィ?」


 何を言っているのかと首を傾げるアルにここではこれが普通なのかとネムは戦慄する。

(あれ、もしかしてゲームを間違えたかも……?)

 よくよく考えるとゲームの分野すら知らずに始めたことを思い出す。

 一先ずログアウトボタンを見ると、今度はログアウト出来るようになっていた。

 アイが言っていた通り、敵が近くにいたからログアウト出来なかったのだろう。ログアウトはセーブポイントからでなくとも出来ると説明されていたため、アルに声をかけてからログアウトした。

次回、対戦ゲーム……?


因みに、毎回ログイン場所が変わるのはログアウト場所に身体が残り、ログアウト中にキルされてるからです。

魔族開始はそういういろんなデメリットがあるんですけど……まあ、ネムですからね。


それでは、これ以降も良き暇つぶしをお過ごしください。

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