後日談 幸せな未来
数年後。
王城にある庭園では、穏やかなお茶会が開かれていた。
「お父様! お母様! 早く来てくださいっ!」
小さな女の子が、お茶会の席へ向かって急ぎ足で歩いていく。
その後ろからは、両親であるカストルとリリアが微笑みながらついて行った。
「ソフィラ、少しは落ち着いて。お茶会は逃げないぞ……リリア、行こうか」
カストルはそう言ってリリアへ手を差し出す。
リリアもその手を取り、エスコートされながら歩いていった。
「三人ともよく来たな」
「お待ちしていましたわ。ほら、アリオトも挨拶なさい」
先に席についていたリゲルとリコリスが、息子へ挨拶を促す。
「またお茶会ができて嬉しいです。ソフィラも来てくれてありがとう」
「アリオト様ともお会いできて嬉しいです!」
そんな言葉を交わしながら、六人で席についた。
テーブルには紅茶や焼き菓子が並び、庭園には季節の花が咲いている。
お茶を飲みながら他愛のない話をして、のんびりとした時間が過ぎていった。
「父上、母上! ソフィラとお花を見てきても良いですか?」
アリオトが両親へ問いかけると、二人から了承の返事が返ってくる。
ソフィラもカストルとリリアへ顔を向け、二人が頷くのを確認した。
それからアリオトとソフィラは、仲良く並んで花を見に歩いていった。
「二人とも仲良いわよね」
遠ざかっていく子供たちを眺めながら、リリアがふと呟いた。
「本人たちが前向きなら婚約でもさせます?」
リコリスが皆を見渡しながら言うと、男性陣の反応は綺麗に分かれた。
「二人が望むならいいんじゃないか?」
「婚約はまだ早すぎる!」
リゲルは前向きだが、カストルは即座に反対した。
もっとも、アリオトに何か不満があるわけではない。
単純に娘が大切すぎて、まだ嫁に出すことなど考えたくないらしい。
「なんだ、アリオトじゃ不満か?」
「いや、アリオトだからじゃない。誰であってもだ」
リゲルとカストルが子供たちのことで言い合っている。
そんな二人のやり取りを眺めながら、リコリスはふと思った。
「……こういった何気ない時間って、当たり前のようだけど、だからこそ幸せに感じるわ」
リコリスは夫たちへ視線を向け、それから庭園を歩く子供たちを見る。
家族と一緒にお茶を飲む。
友人と他愛のない話をする。
子供たちの成長を見守る。
どれも特別な出来事ではない。
けれど、かつて普通の人生に憧れていたリコリスにとっては、その何気ない一つ一つが何よりも大切なものだった。
「これから先も、この時間が続くように頑張りましょう」
「ええ、子供たちのためにも」
リコリスとリリアは顔を見合わせる。
あの日、二人で組んだタッグは、破滅の未来を変えるためのものだった。
けれど今は、こうして手に入れた幸せを守り、その先へ繋いでいくためのものになっている。
二人はお互いに微笑み合うのだった。




