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連環の樹 —憂い令嬢、周りから囲まれてた—  作者: ダッキー


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異変

それから3年が経ち、ルミアは9歳になる年。剣術と魔術の訓練と家庭教師による貴族としてのマナーや教養を学ぶ毎日。それ以外の時間は、すべて禁書庫に引きこもっていた。


朝は剣術。

公爵家から馬車で20分ほど離れた場所。巨大な敷地に砦があり、その全ての敷地が王立の軍部武官訓練所。アヴァロフ家の地下には、秘密の地下通路があり、軍部まで繋がっていた。13歳のジオルドと11歳のアズールと共に朝5時に起きてから、30分かけて地下通路を通って訓練所まで走って行く。特に兄たちと会話は無く、眠たい体を酷使して必死に着いていった。



訓練場についてから、昼前まで筋力トレーニングと、木刀を使っての基礎訓練と魔術の訓練。朝食は8時に他の訓練生と共に摂る。兄たちは朝食後、王立魔導学園へ登校し、ルミアは他の訓練生と共に訓練を続ける。夏季休暇や冬季休暇になると、兄たちは王子達と訓練するので別の訓練場へ行っていた。



姉のスフィラはすでに魔術で両親に認められているため、しばらくは免除となっていて、今は学園に通う以外は、茶会やパーティーなどの社交に忙しい。ジオルドとアズールは、一般兵よりも強い剣士程に成長を見せ、だいぶ前に両親から認められていた。さらに研鑽を続けるためにルミアと共に早朝訓練へ欠かさず通っている。


ルミアは昼前に屋敷に戻ると、汗を流して着替え、昼食を簡単に済ませて12時から15時までは専属の家庭教師から立派な淑女になるための勉強、ダンス、作法を学ぶ。


そして15時から18時、夕食の時間まで禁書庫に籠る。かなりのハードスケジュールだった。


それを3年続けた。6歳の誕生日パーティーのことがあってから、今のところ両親からは何も言われていない。




「古代文字もだいぶ覚えたし、この本で最後だ」


ルミアは禁書の棚に本を戻しながら、魔法で室内の空気を温めた。今日は雪でも降るんじゃないかと思うほど、寒い冬の12月。禁書庫には特別な防護結界が貼られており、相性の悪い空調魔石は置かれておらず、冬は極寒だった。


禁書庫の本を全て読み終えた9歳のルミアは、頭にずっと引っかかっていることがあった。


それは大賢者オルグ・メイデンの禁術集のこと。『封印集メイデン・コード』


遊び心を持ったお茶目な大賢者は、人を動物に変える魔法や水を酒に変える魔法、体の毛だけを消す魔法など、多種多様な術を開発していた。どんな魔法であろうと、ルミアは大賢者への尊敬の思いから、きっと誰かのための魔法と思い、想像を膨らましていた。


中でも驚いたのは空間魔法だ。この実験では、特にうまくいかなかったようで、文字を上から線で消された部分があった。なんとか読めた実験内容は、その場の空間を歪めて作り出す、亜空間と呼ばれるもの。空間を魔力で捻じ曲げ、物質をその歪みに入れるのだ。動物実験では、その空間に入れることはできても、取り出す時に、細切れのミンチになることから、色々な観点で危険と判断され、実験は中止になったそうだ。


もう一つは空を飛ぶ魔法。この大地には重力と言われるものが存在していて、地面に引っ張られているのだ、とわけのわからないことが書いてあった。その重力を魔力で切り離し、自らの体の重さを無くすらしい。重力を軽くした途端、激しい回転により制御ができなかったそうで、中止となっていた。さすが大賢者のぶっ飛んだ発想に、ルミアは頭を悩ませた。


予想していたよりも、大賢者関連の本が読めて大満足のルミアだった。だが、それらの本のページの端には、魔法陣のような落書きがあちこちにあった。


その落書きは円の中に三角があるものや、別の落書きには円の中に古代文字が書かれてあったりと不規則だった。


(全部で15個もあった。何か意味があるの?…)


禁書庫はもちろん、外部に持ち出しが禁止されていて、書写す筆記用具も持ち込んではいけなかった。こっそりとはいかず、ユナの目もあり、ただ読むことだけが許された。


(一旦覚えて、部屋でこっそり書き出してみよう…)


記憶力のいいルミアは、落書きの模様をしっかりと覚えた。


夕食後、ユナの居ない自室に戻ると、一人で紙に例の落書きを描いた。落書きは全部で15枚。しばらくは紙に穴が開くほどただ見ていた。


(一体誰が描いたものなんだろう。アヴァロフ家のご先祖様?)


「うーん…」


その夜はあまり眠れず、時間だけが過ぎて、朝を迎えてしまった。また同じ訓練と勉強、そして今度は自室に籠る。


「今日は禁書庫には行かれないのですか?」


ユナは驚きも交えてルミアに聞く。


「ちょっと考え事。一人にしてもらえる?」


「そうですか。珍しいこともあるんですね。…では、ご夕食の時間にまた来ます」


「うん、お願い」



ルミアはユナが退室したのを確認すると、机の引き出しに隠していた落書きの紙を取り出す。


そして独り言を呟きながら、落書きの絵を見比べる。


「最初に魔法陣だと思ったの…でもこれはあまりにも足りないし…こっちは一文字だけの記号…。これなんか魔法陣の法則にも当てはまらない…」


ペラペラと一枚ずつ捲る音が響く部屋で、また時間だけが過ぎていく。


太陽が傾き、夕陽が眩しいので、カーテンを閉めようと立ち上がった———その時、閃いた。


「もしかして…」


ルミアは陽射しに15枚の紙を重ねて透かして見た。メモ用紙に使う紙なので、質の悪い紙で薄い。


丸い円を合わせると、いびつではあるが魔法陣に見えた。縦と横を無理に合わせ、位置をずらす。


「!?」


窓に紙を押し付け、一番上の紙に他の落書きを上からなぞる。


空調魔石で部屋は温かいものの、わざわざ暖炉に火をつけ、不要になった用紙を証拠隠滅のために燃やした。ルミアは完成した魔法陣をまじまじと見つめ、すぐに魔力を流してみたいと思った。


「どんな魔法なんだろう…気になる…」


好奇心は止まることなく、ルミアはなんの躊躇もなくソレに魔力を流した。


キィーン…


魔法陣から白い光が溢れ出し、目が開けられないほどに眩しく光った。そして光はゆっくりと止んだ。


「あれ?あの紙がない…光っただけ?」


ポカンと辺りを見回していると、突然ルミアの頭に強烈な痛みが走った。まるで誰かにひどく殴られたかのような痛みがした。


「いッ!!!…たぃ…」


あまりの激痛に暖炉の前で倒れ意識を失った。



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