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連環の樹 —憂い令嬢、周りから囲まれてた—  作者: ダッキー


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不憫な王子

スフィラは妄想が膨らんで、馬車の中で妖艶なエデンに一体何をしようとしたのかと虫でも見るかのような軽蔑をレオに送っていた。


けれど、アディだけは違った。


「ルド、やめろ。スフィラも気づけ。何かおかしい」


「…僕は…馬車で…昔の話をエデンとしただけなんだ」


「なるほど、王族として俺たちに言えないことをエデンと共有したってことだな。ルミアはまかせろ。それまでレオたちは黙って休んでろ」


「ま、まってアディ。僕は本当に—」


「わかってるよ。何年お前と議論したと思ってるんだ。あいつが勝手に勘違いしただけだ」


アディはレオの肩にポン、と手を乗せてニヤっと笑った。レオはその顔をみて、申し訳ないように微笑んだ。


アディは誰よりもレオのことを理解しているとわかる様子を、ジオルドは複雑な気持ちで黙って見ていた。レオナルドには介入できない二人だけの会話に、またか、と顔を顰めた。


スフィラはアディの言葉で、学園で起きた騒動を思い出していた。レオが今誰にも信じてもらえていない状況が、自分と重なって見えた。


アディがルミアの方へ行った後、残された3人は重い沈黙の中お茶を見ていた。けれどスフィラがわかりやすく深呼吸して、整理しようとレオに話しかける。


「殿下は…馬車で何を話したか私たちに言えない。恥ずべきこともしてない。ルミアの精霊に聞かれてはまずいのに、エデンさんは言うつもりはない」


「…そうだね。エデンにとっても都合が悪い…のかも」


ジオルドは理解できない様子。けれど眉間に皺を寄せて、ちゃんと考えていた。


「王族が持つ秘密を、殿下は精霊にバラしちゃったんですか?」


「…スフィラ。故意ではないし、エデンはすでに知っていたよ。ルミアに言わないのは……」


レオは言いかけて、言葉に詰まった。今じゃない、とレオは拳を強く握る。


「これ以上は聞かない方が良さそうですね。わかりました。つまり、精霊にしてやられたわけですね」


淡々と普段通りに話すすフィラに、レオは弱々しく笑った。その困ったような顔に、スフィラは柔らかな微笑みで返した。


「おい、どう言うことだ?」


置いてけぼりのジオルドは腑に落ちない表情のまま、スフィラに尋ねた。妹は兄をバカにするようにため息をついてわかりやすい言葉を言い放った。


「兄様はもっと冷静に人の話を聞け、と言うことですわ。それにルミアは精霊に愛され過ぎなのよ」


「………」


ジオルドはスフィラの一件があってから、母にこっぴどく言われていた同じ言葉を妹から浴びせられた。


話を聞けと言われても、どうすることもできなかった不甲斐ない自分を思い出し、黙って時眼がすぎるのを待つことにした。彼にはまだ、踏み込めきれない理由があった。


**


「ルミア、起きてるんだろ?」


「……」

(ルミアは寝ました。あっちに行ってください…)


「おい、俺しかいないし、聞こえないって」


「……」

(わかってるから一人にしてほしいのに…)


木の衝立でベッドを隠していることは設置したルミアが一番わかっていた。それなのにアディはお構いなしにベッドに上がり込んで座り、ルミアの体に布団越しにツンツンと指で刺す。


ルミアは頑固に動かないし、話さなかった。痺れを切らしたアディ。彼はレオと同様にルミアのことをよく知っていた。でもそれは侍女ユナから教わったこと。


「外国で大賢者が最初に作った戦闘用の魔道具…持ってきたんだ」


「……」

(オルグ様の…戦闘用の魔道具!?)


「迷宮で使おうと思ってさ。骨董屋で埃かぶってたんだ。どうやって使うかわからないんだよなぁ」


「…ゴソ…ゴソ」

(…みたい……神眼で見れば…)


ルミアは被った布団の中で葛藤し始めた。


以前のルミアならば、すぐにでも飛びついていた。けれど今は彼の顔を素直に直視できなかった。余計なことを知ってしまった、と後悔した。


(冷静にならなきゃ。アディが…なんなの!あんなの見なきゃよかった…フィオナ様もどうして…)


「見せて…」

(見るだけなら布団の中でも見れる!)


「出てこいよ」


(ですよね…なら…)


ルミアは頑固に戦うことを選んだ。


「使い方がわからないなら使えないよ。せっかくの魔道具なのに…もったいない」


「ほー…そうくるか」


アディは突然、ルミアの布団を掴んで思いっきり引っ張った。


「うぁ!!やめてよぉ」


「お前が出てこないからだ。話すときはちゃんと顔見せろ。だからレオとも勘違いするんだ」


「勘違い?いつ勘違いしたっていうの!?エデンは嘘なんてつかない!」

(そもそも精霊は嘘がつけないんだから!!)


アディはやれやれ、と項垂れて頭を抱えた。少し怒った口調で半目でルミアを上から見下す。布団から眼だけを出して隠れるルミアは、一瞬だけアディを見てすぐ目を逸らした。


「知ってるよ。嘘がつけないんだろ?じゃぁ、エデンに聞いてみろよ。レオに酷いことされたかって」


「………エデン、聞いてたでしょ?レオに酷いことされたの?」


『されてないわ。ちょっと意地悪しただけよ。だって王子が気に入らなかったしぃ』


「なにそれ……わざと私に……エデン、レオに謝って」


『いやよぉ。ルミアは私の愛する主なんだから。あの王子に取られたくなかったもん』


「もん、じゃない!レオを傷つけたんだよ?話せない内容は気になるけど、あんな勘違いさせるような…私が勝手に…バカみたいじゃない。ひどい!」

(体に触ってきたとか言ってなかった?嘘はつけないはずじゃ……あ、愛撫…されたのはウサギの姿だったんだ!?なのに私…もう!!)


『ルミアがそこまで王子を大切にしてるなんて思わなかったわ。ごめんなさいね、お・う・じ』


「……エデン?」

(いい加減にしてよエデン)


『謝ったわ。それにもう着くわよ、ルミア』


「……もう?さっき出たばっかりで?」


『私たちは精霊よ。しかも愛するルミアからマナをたっぷりもらって元気いっぱいなんだから、ね!ノックス!』


『チョコレートケーキ!!』


テント内に響いた精霊の声は、もちろんレオたちにも聞こえた。布団から出たルミアは、レオに謝ったが、レオは苦笑いしていた。迷宮についたことで有耶無耶にされてしまったが、エデンとレオの話した内容を後でエデンに聞こうと思ったルミアだった。



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