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連環の樹 —憂い令嬢、周りから囲まれてた—  作者: ダッキー


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告白

ルミアの機嫌は治り、目が腫れた顔のまま、アディと一緒に天幕から出てきた。カレーパンを追加で頼んだようで、ちょうど料理長マッシュが焼きたてのカレーパンを兄たちに持ってきていた。


「ルミア様!カレーパン召し上がってくださいましたか!?」


「え、うん。すごい美味しかったよ!ありがとう、マッシュさん」


マッシュはプルプルと震えて深々と頭を下げた。


「ありがたき幸せでございます!!カレーが無くなってしまいましたので、クリームや果物のジャムを入れたものもご用意いたしました!ぜひお召し上がりください!!」


マッシュがルミアに対して過剰な反応をしていることに兄2人は訝しむも、パンが美味しいので何も言わなかった。アディとルミアも椅子に座り、一緒に食べ始めた。



その後は屋敷に来ていた貴族たちが帰るまでカードゲームをして遊んだ。ルミアの一人勝ちが続いて楽しくなくなった兄たちは屋敷に戻ったが、アディは残って二人でカードゲームを続けて遊んだ。


一通りカードゲームで遊び尽くし、飽きてきた昼頃。アディは聞きたかった本題を聞き出そうと細心の注意を払って話し始めた。ルミアに気づかれないようにユナに合図を送って、二人きりにしてもらう。


「あのさ、ルミア。教えてほしいんだけど…」


「ん?…あぁ、魔術のこと?」


ルミアは聞きづらそうにするアディの顔をみて、何を聞きたいのかすぐにわかった。いつか外国に連れてってもらえる約束をしたアディに対して、少々浮かれ気味に答えた。


「説明しても理解できるかどうかわかんないよ?」


「あぁ、うん!じゃぁまず雷撃から頼む」


アディは胸元のネックレスに手で触れた。


「記録するの?」


「え、あぁこれは俺専用のメモ用紙みたいなもんだ。報告するわけじゃない。それに誓っただろ?お前が嫌がることは報告しないって」


「そっか。別に公表してもいいんだけどね。雷撃は雷をいっぱい集めたのを水の球に閉じ込めただけなの。魔力で風を起こして高速回転させて、そこに土魔法で魔力を含んだ小さな石の粒を入れて回転させ続ける。そしたらそこに摩擦で雷がいっぱい溜まるから水魔法を操作して電流を自在に操ってた」


「…う、うん…じゃぁ棒で吹き飛ばした力技は?」

(全然わかんねぇ…)


「重力魔法って名付けたんだけど、オルグ様が重力ってのにこだわりがあって…物を引っ張る力が引力でその力を自在に操ったの。結果的に力加減がうまくいかなくて吹っ飛ばしちゃったんだけど…見せた方が早いかな」


ルミアはそう言って目の前にあるカードを一枚取り、ふわっと宙に浮かせた。


「風魔法か?」


「これが重力魔法だよ。このカードは何もしなければ上から下に落ちる。けど、それは地面に引っ張られてるそうなの。オルグ様が考案した重力を操作する術式を使うと、物の重さが変わり、地面に引っ張られる引力を魔力で反発させることができる」


アディは何一つ理解できなかった。無表情でルミアの説明をただ聞くだけ。ルミアも完全に理解はしていないが感覚的に操作していた。


「反発…う、うん…じゃぁ分身は?」


「分身はかなり難しかったんだけど、氷って虹色の反射を起こすの。オルグ様が作った最強に固い氷についての実験だったんだけど、氷は土魔法と違って脆い。でも薄い氷をピッタリ何枚も重ねれば石よりも硬くなったって実験。魔力操作が難し過ぎて内側から割れて壊れて失敗してた。でも何層も重ねると光の反射で色が違って見えるの。そこを利用して土魔法に氷を被せてうまく自分に見えるように魔力で頑張って反射させてたの」


ルミアは机の上に自分そっくりな分身の縮小版を作って動かしてみせた。机の上で棒を振り回す小さなルミアをじーっと見て両手を上げた。


「無理だ!理解できないし使えない」


「はは、ね?ユナも同じこと言って怯えてたよ」


「確かに公表しても相手にされないかもな。でも雷撃はどうにかなるかもしれないな」


アディは机の上の小さいルミアの分身を指で突つきながら話す。


「でも雷が発生するほどの回転をずっとし続けなきゃなんだよ。魔力消費はすごいかも」


「そこだよ…ルミアってそんなに魔力あったっけ?」


「…」

(あ…マズイ……)


ルミアはアディに言おうかどうしようか迷って目が泳ぐ。アディはそんなルミアに首を傾げて半目で見つめてルミアの答えを待ち続けた。


「…」

(落ち着け、俺!ここは待つんだ…辛抱…)


「…うーんと……本当に誰にも言わない?」


「…」

(ここも何も言わないでいよう…こいつが誓いを忘れてるはずがない)


アディは更に目を細めてルミアの答えを辛抱強く無言で待つ。


「…うーん……加護の力らしいよ」

(…言うか!)


「詳しく」

(やっぱり)


アディは腕を組んでルミアから目を逸らして屋敷の方を見た。左の耳に屋敷の使用人からの報告が聞こえ、問題の貴族が帰ったとわかったから。


「えっと…まず女神様の神眼ってので物の鑑定ができて…精霊王の加護で魔力が無限に使えるそうです…」


「はぁ…」

(想像以上のやばいやつじゃん…女神だけじゃなく精霊王も?)


ルミアは最大の秘密を話した事で、今まで話したくても話せなかったことを全てアディに話した。禁書庫の本の落書きの話からこれまでのこと洗いざらい全て。話していたルミア自身、気持ちが楽になっていった。


黙って相槌を打つだけで静かにルミアの隠し事を聞いたアディ。想定以上の規模の隠し事で天を仰いでいた。


「それで迷宮とかって行けたりしないかなぁ〜って思ったり、薬を調合できる道具とかほしいなぁ〜って思ってたとこなの」


「…あ〜…う〜ん…」


「アディ?」


アディは優先順位を頭で整えながらガクンと視界を空から机の上に戻した。


「まずは学園の件を解決したら迷宮に行けるようにするよ…」

(ギルド担当の兄上と母上に言うしかないか…俺だけじゃ無理だし…)


顔を歪ませて目を閉じ、思い悩むアディをみてルミアは心配になった。


「アディ、大丈夫?もし知られたら…私、自由に動けなくなるんじゃないかなって…」


「どうしてそう思うんだ?いっそ全てぶちまけた方が協力してもらえるんじゃ?」

(俺も楽だし…)


「アディは私を王族にしたいの!?…私は嫌!自由に迷宮とか行けなくなりそうだもん」


「はは、確かに」


「それに外国にも行ってみたいしね!」


ルミアは目を輝かせて期待を込めてアディを見つめる。


「シアドルトね、わかってるよ」


温室にタイミングよくユナが戻ってきた。


「アディウス様」


「あぁ、わかってる」


アディはユナに呼ばれて立ち上がる。


「どこ行くの?」


「ルミアが学園を見学できるように準備しに行く」


「…私のこと言っちゃうの?」


「心配すんな。言わないよ」


「…うん」

(ほんとかな…?)


アディは温室から出ていった。静かになった温室で、ユナが机の上に広がったカードや茶器を片付け始めた。残されたルミアはため息をついて天井のガラス越しに青空を見た。


(結局あの痛みってなんだったんだろ。菫色の髪の人たちもどんな顔だったかもう思い出せないや)


ルミアは胸の痛みや菫色の女性たちについて、アディに話さなかった。全て話したようで、話していなかったのは、故意ではなかった。


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