12.『未完の残影(ラフ・ディストピア)』
世界が白紙に戻りゆく絶望の淵で、俺はコンソールの禁断のコマンドを叩いた。
「……こうなったら、国家予算の概念を書き換える。全レイヤーに『投げ銭』機能を実装しろ!」
それは、従来の税金制度を廃止し、国民が「この政策を見たい」「この景観を守りたい」と思った瞬間に、スマホから直接支援金を送る**【スパチャ税制】**の導入だった。
「……始まったな」
俺が呟いた瞬間、空に浮かぶ「白紙」の領域に、怒涛のような極彩色の文字が流れ始めた。
『この青空、最高! 10,000円ナイスパ!』
『官房長官を動かしてくれ! 赤スパ50,000円!』
『作画維持費にどうぞ! 支援します!』
画面を埋め尽くす虹色のスパチャ。それは、かつての「中抜き」された不透明な税金ではない。国民一人ひとりの「この世界を美しく保ちたい」という意志が、ダイレクトにデジタルの色彩へと変換されていく。
「……すげえ。新宿の彩度が、スパチャの額に応じて跳ね上がっていく!」
真っ白だった新宿の街並みが、赤いスパチャが飛ぶたびに「夕暮れの情熱的な赤」に染まり、青いスパチャが飛ぶたびに「透き通るような影のディテール」を取り戻していく。
政策はもはや、密室で決まるものではなくなった。
「……次の法案は『全国民への高級タブレット配布』。この政策が気に入ったら、高評価とスパチャをお願いします!」
若手議員がカメラ目線でウィンクし、瞳に特大のハイライトを宿らせる。その瞬間、画面には「ナイスパ!」の文字が滝のように流れ、法案を可決させるための「レンダリング予算」が数秒で達成された。
だが、この熱狂の裏で、新たな問題が浮上していた。
「……人気のある政策(配信)には予算が集まるが、地味なインフラ整備(背景美術)にはスパチャが飛ばない。このままだと、国が『映える場所』だけ豪華で、それ以外はラフ画のままの、歪な作品になっちまうぞ……」
俺は、官房長官の形見であるマスター・パレットを握りしめた。
スパチャという名の情熱は、劇薬だ。
正しくディレクション(政治)しなければ、日本は「ただのバズり狙いのショート動画」へと成り下がってしまう。
〜第1部・完〜
【第1部完結のお知らせ】
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
『国会中継が作画崩壊してたので~』第1部、これにて完結です!
スパチャという名の「劇薬」で日本を塗り替えた主人公ですが、ここからが本当の戦いです。「映える政策」にしか予算が集まらない歪な世界を、国家作画監督はどうリテイクしていくのか……。
さて、ここで一つお知らせです。
作者、実は現在「中学2年生」でして、これから本格的な受験シーズンに突入します。親の「作画監修(小言)」も厳しくなってきたため、本日をもって、第2部開始までしばらくの間、更新を休止させていただきます。
■今後の予定について
本作は「完結済」設定にしますが、第2部も必ずこの作品ページで再開します。
SNSはやっていないので、ここが唯一の交流の場です。続きが気になる物好きな人は、ブックマークして1年後の通知を待っていてください。それが「制作再開」の合図です。
受験という名の「地味なインフラ整備(背景描き)」をしっかり終わらせて、1年後、さらに解像度を上げた第2部をお届けすることを約束します。
それでは、合格発表後の「神回」でまたお会いしましょう!
リテイク(評価・ブクマ)お待ちしています!
追記:予約投稿しようとしたら間違ってしまいました。すみません…。




