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転生なう ~守護霊なう in ボーナスステージ~  作者: 宇龍地
第三章 竜の背骨と帝国と魔王
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報告

 「帝都防衛隊、第一分隊長! 前へ」

 「はっ!」


 帝都、王城内第一謁見場

 通称「報告の間」


 皇帝へ戦況の報告などを直接行う為にあるその部屋は、複数の部隊長や将軍などから一度に報告を受けることが出来るよう多少広めに作られており、又性質上帯剣を許可している為に玉座の前に柵が作られ、その柵の内側には近衛兵が並んでいる


 「帝都防衛隊、第一分隊長 ビル・ランドであります!」


 その正面、玉座に座った人物・・・皇帝は飛び道具避けに存在する金属製の御簾越しに鷹揚に頷くと


 「ランド分隊長、面を上げよ」


 と、形式通りの言葉をかけた


 「此度は大儀であった、報告を聞こう」

 「はっ! 先日帝都郊外における奴隷商襲撃、及び街道における戦闘に関して報告させていただきます」

 「追撃部隊の隊長たちは揃っていまだ意識が戻らぬ、できる限り詳細に頼む」


 彼らは打ち所が悪かったのか、揃って頭を打ち未だ意識が戻らないのだという

 ビルを含むこの場に居る人間は知る由も無いことだが、脳震盪を起こした者はゆっくり運ばなくてはいけない

 おそらく馬に乗せて運んだことに因って状況が悪化したのだろう


 もしかするともう正常ではいられないかもしれない


 「まず件の郊外の奴隷商襲撃ですが、証言と状況を見るに奇跡がおきたものと思われます」

 「奇跡・・・か」

 「は、その場では宗教関係者の可能性も考えましたが、状況が異常でした」

 「異常とは?」

 「まず、その場の状況と証言から、襲撃において二系統の奇跡が起きたと思われます」

 「二系統?」

 「はい、帝国において宗教関係者は自分の所属する神の系統の奇跡しか起こせません。ですが、その場では水の奇跡と土の奇跡が起きたというのです」

 「帝国外では?」

 「最近では王国で宗教関係者以外でも奇跡を起こせるような教育が行われていると言われています」


 正確には魔術なのだが、彼らに正確な情報などは届かない

 王国の開けたトンネルの先は関所があり、間者を送ることも出来ない

 本来なら商人などに因ってそう言った情報は筒抜けになるものだが、お互いがお互いを危険視している為旅人すらろくに通らないのだ

 しかし、逆に山道などへの警戒まで手が届かないのを良いことに、奴隷狩りなどの無法者が横行しているのは皮肉な話だ

 この「奇跡を教える場所」の情報も、実際には無法者の又聞きから与えられた物だった


 「ふむ・・では聞こう。そなたは彼の人物の正体をどう見る?」

 「国外より来たものと考えます」

 「国外・・・どこからだと思う?」


 ここでしばし考える

 大陸の東側であのように奇跡を使う話は聞いたことはない

 かと言って魔族の生き残りがこんなところに現れたというのもおかしな話だ

 ・・・ならば


 「王国ではないでしょうか?」

 「王国・・だと?」

 「はい、誠に残念なことですが、帝国内では王国で保護されている獣人を奴隷として買い入れることがステイタスとされている所があるようです」

 「王国の獣人・・・国内で商売する奴隷商に王国の獣人を狩ることは認めていたか?」


 皇帝は横に居た事務官に確認を取る

 この件については、獣人の言葉がわからないため王国から来たと立証できないことや獣人自身も自分がどこにいたかを説明できないことで黙認されてきた事実だったのだ

 しかし皇帝はそこまでの事情は知らなかったらしい


 「いえ、皇帝陛下。我が国において王国領内に入って奴隷狩りをすることは認められておりません」

 「ならば何故帝都においてそのような獣人を欲するものがいるのだ?」

 「おそらく密猟者が持ち込んだものを見て見ぬふりをして扱っていたのでしょう。王国の獣人は文化的生活に慣れているので奴隷として重宝するようです」


 事務官の言葉は、暗にそれが行われていることを知っていた人間の言葉だった


 「そうか、ならば改めてそのような事が今後起きぬように密猟者を処罰する法を儲けよ」

 「はっ!」


 皇帝は事務官にそう伝えると再度ビルの方を向いた


 「さて、もし仮に奴隷商を襲ったのが王国の人間として、それは獣人だったのか?それとも持ち込まれた獣人を連れ帰るために侵入したものなのか?そなたはどちらだと思う」

 「意識を取り戻したものの中にその時屋敷の中に居た奴隷の内容を知っているものが居りました。その者の話では、どうやら一人、神官級の奇跡を起こせる者が居たようです」

 「神官級の奇跡・・・それは獣人か?」

 「いえ、人間だったようです。少なくとも外見は」

 「外見は・・・とは?」

 「その奇跡は多彩です。恐らくですが、帝都から脱出した例の馬車の一団も奴隷商の元から逃げ出した獣人とその人物でしょう」

 「多彩というと?」

 「退却した追撃隊の隊員の証言も合わせますと、小山に相当する量の土を自在に操り、仮初の命も持たせ、火・水・風をも自在に扱ったそうです」

 「それは・・・確かに人間とは思えんな」

 「さらに特筆すべきは、大地に波を生み出し追撃兵を弾き飛ばしたという証言も得ており・・・これほどの奇跡を起こせるものは国内外併せても稀ではないかと」

 「むう・・・まさしく人外の力ということか」


 皇帝も思わず唸るほどだった


 「王国の人間であれば多彩な奇跡を起こせるとも聞きますが・・・あれは異常です」

 「異常か、ではなんとする?」

 「わかりません・・・が、彼の者を表すのに最も適した言葉があるとすれば」

 「あるとすれば?」

 「魔王・・でしょうか」


 奴隷商の生き残りが呟いたその言葉が、謁見場を支配した

 普段であれば一笑に付されたであろうその言葉は、起こされた惨状という事実と合わさったことで現実味を帯びていた











 この事件は、帝国の歴史において後に「魔王襲来」と記録されることとなった

 その正体がたった一人の転生者である等ということを知ることが出来たものは、帝国内には居なかったという

帝国を設定で出しておいて全くストーリーに噛ませないのもあれかな~と思って書いた話でしたが、性質上どうしても戦闘メインになるのがきつかった

次回でこの章最後となります


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