絶望的な展開
最初に謝ります
場面転換多くてすっごい読み難いです(汗
一応イメージとしてはターン制で視点が変わってるような感じだと思っていただけるとありがたい
逃げる・・ひたすら逃げる
こんな街道の破壊などかく乱にしかならない
交差点を抜け、先を進む馬車と合流すると俺の馬車に乗っていた獣人を客車の方に無理やり乗せ変える
俺だけならともかく、彼らを伴っては無茶が出来ない
ばれるとかそう言うことではなく、俺を中心に大雑把に攻撃や防御をする事ができないと言う意味でだ
彼らを送り出しつつバリケードを張る
既に街道は森に入っている、この木々の隙間に土壁を作れば容易には追ってこられない
ここで完全に足止めをしなくては、山越えの間に追いつかれかねない
俺は以前から研究はしつつも実験も出来なかった術式を練る事にする
土手や溝を迂回し、街道で合流した守備隊は途方に暮れていた
南門からも合流する部隊はあるものの、相手はあのような奇跡に守られている
将軍の中には偶然で片付けようとする方も居られるようだが、そもそも帝都から離れて行っているのだ・・・追いかけて被害を増やす必要など無い
そうこうしている内に、戦功を上げられず燻っていた連中が功を焦り追いかけだした
こうなると後はどうするか悩んでいた者から我先にと後を追いかける
必然的に自分が殿になってしまったが、果たしてこれでよかったのだろうか?
我々だけでも帝都に戻った方が良かったのでは・・・
まず森の近くでゴーレムを組み上げる・・・材料ならいくらでもある
こいつを街に向かって走らせれば主力はそっちに向かうはずだ・・・
後は残った追っ手を戦闘不能にさせる術をいくつか練ってと・・・
俺は馬を馬車から外して馬に乗ると、山脈を横に見ながら北に向かった
魔法で極力土煙を上げて走り抜ける・・・間違っても獣人たちを追わせてはいけない
「何だあれは!?」
前方から声が聞こえるがまだ自分からは見えない
巨人だの化け物だのと言う言葉が聞こえる中、北へ向かう土煙を見つける・・・
もしやこちらは陽動で、北へ逃げているのか?
逃げているなら気付かない振りをしよう・・・
そう考えた直後・・目を疑う物がこちらぬ向かって走ってくるのが見えた
小山程に見える大きな、人型の何かがこちらに向かっている・・・このまま行けば目的地は帝都だ
なんとしてもこれはここで止めなくてはならない
しかし前方の騎兵たちはその巨体に散り散りに逃げるばかり・・・それではダメだ!!
我々の部隊だけでも足止めをせねば
全部隊に突撃槍を構えるように指示をすると、助走をつけて突進を開始する・・狙いは足元だ
狙いは上々、耐久度はそれほどでもなかったようで怪物はその場で前倒しに倒れこんだ
土煙を前に勝ち鬨を上げていると、散り散りになっていた他の騎兵達が次の目標を見つけた・・あの北へ向かう土煙だ
「追えーーっ!!敵はまだ近くに居るぞーーーっ!」
もう付き合っては居られない
足元の耐久度の低さから身体も崩れたかと思えばそうではなかったようで・・・怪物はまだ前に進もうと足掻いている様だ
我々の部隊はこの怪物を沈黙させて帝都に戻る事にしよう
「ちぃっ!」
誰が居るわけでも無いのに思わず舌打ちが出る
俺の作ったゴーレムは早々に無力化されてしまったようだ
元々あの溝を越えられないように足を弱めにしたことが仇になったのか、勇気ある突撃を食らったようだ
しかし追ってくるなら容赦はしない・・・いや、命を積極的に奪うつもりは無いけど
まずは小手調べにと「豪雨火矢」を打ち込む
範囲は500m四方
突然降り注ぐ炎の雨にタタラを踏む騎兵たち
中には貫通力のある炎にあたり、鎧を撃ち抜かれもがいている者も居たようだ
しかしこれでは終わらない
止まっている騎兵たちから100mほど手前に、20m置きに「活火山」を発動させる
今度は突如噴出す炎に又も怯む騎兵たち
このくらいは準備さえしておけば後は発動させるだけ・・・この世界でこそ出来る芸当ではあるが
さあ、来れる物なら来てみろ・・・俺はまだ5つの大範囲魔法を用意しているぞ?
「魔王・・・」
土煙を追った騎兵たちが次に対峙したのは光の雨だった
少なくともここからはそうとしか見えなかった
その光の雨に驚いた騎兵たちはその場で止まったようだ
そして光の雨が止んで暫くした後、騎兵達が動こうとした直後・・・今度は騎兵たちの少し先の地面から光が噴出した
噴出した光が近くの木々や下草に当たると、煙が上るのが見えた・・・どうやらあの光は高熱を帯びたもののようだ
あれがもしあの光の向こうに居る人物が起こしているのであれば、彼は正しく魔王としか言いようが無い
奴隷商人たちを完膚なきまでに打ち崩したあの小石の山
我々の足を止めるかの様に急激に生まれた溝や丘
そして未だにここでもがいている土くれの怪物
誰か別の要因があって偶然起きたと言うにはおかしすぎる
彼を追ってはいけない・・ビルの本能がそう警告を出していた
「活火山」で時間を稼いでいる内に更に北に進む
ここまでやっても居ってくるとは思えないが、あそこで更に大魔法を出して被害を出しても禍根を残すだけだ
俺は魔法で先行させていた土煙に追いつくとそれを追い越す
ここまで来ればこの土煙の必要も無いだろう・・・獣人たちも既に馬車では進めない所まで着いた筈だ
俺は土煙そのものを変質化させる術を作る
まず土煙に空気の渦を作り緩いつむじ風を発生させる
舞い上がった砂粒や土に酸を纏わせる・・・この渦に入り込めば焼け付くような擦り傷だらけになる、非常にいやらしい攻撃だ
「酸旋風」と名付けたその術は殲滅用の術式ではない
本来は暴徒鎮圧や害虫駆除のための術だ
俺が開発し、これを教えた掃除屋も何人か居るが・・・まあ、使い所が無いというのが正直な所だ
しかしこう言う状況では効果覿面だろう
何しろ標的は騎兵ではなく馬だからな
先ほどの場所から少し先に行った所で、不自然に土煙が止まっているのが見える
おかしい、あれは何かが移動することで起きた土煙ではなかったのか?
何も不審がらず突入した騎兵が居たようだが、数秒で馬が飛び出してくるのが見える
土煙を抜けていくのではなく、途中から飛び出している
一体何が起きていると言うのか
「うわぁっ!?」
悲鳴と共に突然暴れだす馬に戸惑う兵の声が聞こえる
先ほどまでの奇跡を見ても全く疑うことなくこんな怪しい土煙に飛び込んだ愚か者の声だ
この声は一箇所からではない、何箇所からも聞こえてきて、その度に馬が横から抜け出すのが見える
落馬してほうほうの体で土煙から出られた者はまだ良い、中には手綱に腕が絡まり既に100m以上引き摺られた者も居るようだ
その様子を見て、土煙は危険と考えた後続が大回りして土煙から出てきた者を保護する
ここまでは想定通り・・・ここから退却するならよし、まだ向かってくるなら次の手だ
「怯むなーっ!奴は一人だけだっ」
そう考えていると、いかにも頭の悪そうな号令をかける偉そうな格好をした騎兵が見えた
格好から見て指令権を持つ士官だろう
あまりに頭が悪いのでピンポイントで突風をぶつける
「っっ!!??」
何が起こったのかわからないようだ
仕方ないのでこちらから提案しよう
「お前たちがわたしに勝てるはずも無いだろう?大怪我をしたくなければとっとと帝都へ戻れ、帝都に向けた怪物があれ一体だけだと思ったか?」
出来るだけ大仰に・・・
多少芝居がかっているが仕方ない
ついでに拡声魔術を使って空全体から聞こえているような演出を加える
「はったりだっ!」
「こんな大掛かりな事がそう何度も出来てたまるかっ!!」
「きっとあの突風を見て利用できると思ったんだ!」
さっきの仕官と同じくらい偉そうな格好をした連中が次々と捲くし立てる
そりゃぁ突っ込まないでいい連中からすればどんな仕掛けあっても関係ないよな・・さっきの突風のようにピンポイントで来る訳が無いとたかをくくっているのだろう
ならばご期待に答えてやるか
「なるほど、確かに理解できないのでは逃げ帰る勇気湧かぬか・・・ならば受けてみよ!!」
俺がそう叫んだ次の瞬間、帝国軍全てを影が覆った
地上20mから直径10cmの水の球が一斉に落ちる術
「砲丸の雨」と名付けた
質量が大きいのでダメージはでかいが、不定形な水が20m落下する空気圧で歪む為、実際に一箇所に当たる衝撃は少ない
20mの高さから水風船を落とされるよりはダメージは少ないだろう・・だが数が多い
一瞬であればせいぜい脳震盪を起こす程度で済むかもしれないが、これを連続でやられたら間違いなく死ぬ
このタイミングを偶然で片付けたとすれば賞賛できるレベルの無能だ
これを連発できないと考えるのであれば常識の範囲内の無能だ
このまま居ればこれを何発も打ち込まれると思ったならそこそこ使える無能だ
正解はこれ以上の攻撃があると見て逃げる事だろう
部隊を指揮するならそれくらいの状況判断能力が欲しい
「奴は範囲攻撃が得意なようだ!固まらず散開して各個突っ込め!!」
ちょっと使える勇猛な無能が居たらしい
何が誰にとって絶望的な展開だったんでしょう?
正解は読者の中に(待て




