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転生なう ~守護霊なう in ボーナスステージ~  作者: 宇龍地
第二章 ギルドと魔族と遺跡
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遺跡と掃除屋

薄羽さん視点です


街でも色々動かなくてはいけないようです

 王都の魔術道場を後にし、頼まれたギルドへの報告をしに行く


 「(しっかし変な世界だよね~)」


 思わず呟いてしまったが、それを見咎める人は居ない・・何せ日本語だし


 さっき魔術道場で会っていたアウル・ロックマンと言う少年だが、彼は転生者であると私に暴露していた

 身長は160cmくらい・・・一年前から変わっていないようなので、成長期も終わっているのかもしれない

 顔は童顔で年齢も17と大人と言い切れる歳でも無い為、何も知らない人からはよく子ども扱いをされるようだが、その実中身はもうじき100年分の経験を積むと言う・・・なんと言う詐欺だろう?

 その中身の為か、幾分老成して見えるその受け答えに彼を神童だと言う者も多いらしい


 それだけでなく、彼はこの世界において神に仕える者しか成しえないとされた術を魔術で再現して見せ、各宗教から神の使いだとまで見られていた

 その為、自分の使う術が実は修行次第で誰にでも使えるのだと言い訳した結果がこの道場だ・・・

 彼の言う通り、もしこの世界に危機が訪れようものなら、真っ先に彼に白羽の矢が立つ事だろう


 「あら、もしかしてウスハさんじゃありませんか?」


 ギルドのある王都外壁の門へ向かう為、乗合馬車を探していると、不意に声がかけられた

 振り返るとそこには、日除けの覆いだけがついた観光用の人力車のような客車を繋いだ馬車がこちらに向かってきていた


 「クイン様ですか、お久しぶりです」


 彼女は火神教の要人でクイン・フレイム、お偉いさんの令嬢だと聞いた


 「こちらにはどんな御用で?道場から出てきていたように見えましたが」

 「ギルド関係の報告ですよ。北の湿地帯から来たので中継がてらアウル様に挨拶をしてきた所です」


 挨拶じゃなくて報告だけど、そこまで言う必要は無いしね


 「あら、でしたらギルドまでお送りしましょうか?」


 ?

 どういった風の吹き回し?


 「ご迷惑じゃありませんか?」

 「いえいえ、実はわたくしの方でもギルドに用がありまして」

 「一体どんな御用で?」

 「それに関しては馬車で道すがら・・・」


 とりあえず助かる事は助かるし・・・

 乗せてもらうかな

















 「・・・と、言う事ですの」

 「はあ・・」


 つまりどう言う事かと言うと

 最近ギルドに入会できず、奉仕者として教団に来る人間が増えたと言う事らしい

 これをお嬢様特有のゆったりした言い回しで言うから一度脳内で整理しないとめんどくさい事になるから困る


 「そうは言いますけど、それをギルドに言ってどうにかなるわけでも無いと思うんですけど」

 「掃除屋さんの採用制限を下げるわけには行かないのでしょうか?」


 なるほど・・・Fランクより下を用意できないかと


 「そう言う事になると賃金の問題が発生しますから難しいのでは?」


 ギルドで受ける依頼はパトロール隊から報告のあった害獣やモンスターの駆除だ

 F-の中でも最下層の依頼が逸れ狼などの駆除・・・流石にこれくらいなら魔術が使えなくても可能だとは思うが、それだけに報酬も安い


 依頼の報酬はそれぞれ平均でF-で銅貨三枚、Fで銅貨五枚、F+で大銅貨一枚、E-で大銅貨二枚、Eで大銅貨三枚、E+で銅板貨一枚になってる

 F-より更に下の依頼となるともう小遣い稼ぎどころじゃない

 掃除屋には宿舎があるからまだ良いけど、それでも専用宿舎に泊まろうと思ったらF-の仕事を毎日しないといけないのにこれは・・・


 「難しいのでしょうか?」

 「そうですね、掃除屋の中にも絶対数の関係で低級の依頼もこなせず奉仕者として教会のお世話になっている者も居ますし・・・正規ギルド員のサポートとして雇うにしても限度もありますから」


 ギルドに持って行った所で、結局アウルの意見を伺うことになるだろうなぁ・・・


 「依頼の絶対数ですか・・・」

 「ええ、掃除屋の仕事はあくまで脅威の排除ですから・・・脅威が確認されるまで仕事はありませんし、いざ確認されてもやはり絶対数が少ないのですよ」

 「大体どのくらい必要なのでしょうか?」

 「現在では一日大銅貨二枚からで護衛依頼なども受けていますのでEランクより上の掃除屋はそう言う任務も受けていますが・・・Fランクの掃除屋全員の宿舎利用費を賄うとなると、F-依頼で一日200件は必要ですね」

 「そんなにですか・・・ところでF-ランクの依頼と言うとどういった依頼でしょうか?」


 F-ランクだと衛兵2人分だから・・・


 「狼だと逸れ狼討伐、後は害獣駆除ですね」


 あんぐりと言った表情であっけに取られているクインお嬢様・・・まあ、そうだよね

 そんな依頼が毎日200件とか割とヤバイ状況だ


 つまり、それだけFランク以下の掃除屋が多いと言うことでもある

 更に言えば、そのFランクの掃除屋にすらなれなかった人も倍以上居るわけで・・・それらをカバーするとなればギルドでは難しい

















 ギルドに到着して、私の報告も終わりお嬢様の番になった・・・案の定要領を得ていないギルド長に話を掻い摘んで説明する羽目になった


 「そうなりますと、アウル様のお知恵を借りた方が良いかもしれませんね・・・教会の協力も必要ですし」


 やっぱりそうなるよね~


 「じゃ、伝令は私ですか・・・」

 「お願いします、帰り道ですので」


 伝令には手当てがついて来るから良いんだけど・・・面倒な事に違いは無いし、ホントめんどくさい


 「でしたらわたくしがお伝えしましょうか?」

 「お嬢様、それではアウル様に正式にギルドから連絡が行ったことになりませんので・・・」


 ギルド長の意見は正しいのだが、真意はと言えばお嬢様に頼んで正しく伝わるか不安だと言う事だろう


 「そう言うことですので、もしよろしければ帰りも送っていただけると助かるのですが」


 暗に、伝令についてきて良いと言ってみる


 「そうですか?では責任を持って送らせていただきますわ」


 こうもあからさまに好意をむき出しにされると、こっちも意地悪をする気も無くなる

 まあ、盗る気無いから良いんだけどさ



















 「と、言う事なので、後でギルド長と話し合っていただけたらと」

 「わかった、アイディアを纏めて三大教会の代表者と一緒にギルドに向かうことにするよ。と、言うわけですのでお嬢様、エドガー殿に伝言お願いしてよろしいでしょうか?」

 「かしこまりました」


 茶番も良いとこだけど、これでお嬢様の気が済むならやっておかないとね


 とりあえず街でやることは終わったので、本来の依頼に戻る事にしよう


 「あ、そうそう薄羽さんに伝言頼まれてたんだった」


 伝言?

 さっきここに来た時に言わなかったのはどう言う理由だろう?


 「実は、さっき君がここに来たと聴いて駆けつけた人が居てね・・・遺跡の調査隊にこれを渡して欲しいと言われたんだ」


 そう言うと、アウルは一通の封筒を差し出した

 封蝋は・・・無いか


 私への個人的な連絡なら特殊な印を押した封蝋があるので、これは本当に調査隊宛なのだろう


 「何でアウル様にそんな伝言を?」


 お嬢様が首をかしげる

 疑問に思うのも無理は無い、本来ならここには寄らずに調査隊に合流するはずだったのだし


 「当然俺が渡す予定は無かった、俺が一筆入れて北門の衛兵に渡してもらう為の準備をしてる所に丁度来たんだよ」

 「なるほど、そうでしたか」


 こういった書簡を衛兵などを利用して間接的に渡す際には責任を取れる人のサインが必要になる

 そうやって一筆入れた書簡は馬車より速い伝令馬を使って運ぶ事が許される為、入れ違いになる可能性が低いのだ


 「一応中身は確認させてもらってる、何でも偉いさんが視察に行く事が決まったと言う話だそうだ」


 それは私に言っちゃって良い話なのかな?


 「そう言うわけだ。丁度良く直接会えたし、これ渡すから馬借りて早めに着く様努力してくれ、多分乗合馬車でのんびり行ってたら間に合わない」


 そう言うと彼は銅板貨を1枚出してきた


 「足りますかね?」


 仮にも馬一頭借りるのに1万5千円って・・・


 「貸し馬機構は俺が整備させてる、ギルド関係者なら片道は十分足りるはずだ」


 貸し馬機構・・・要はレンタカーな訳ね

 向こうの世界の導入できる部分を巧く導入しているようだ


 「じゃ、行ってきますね」

 「貸し馬は教会で預かってるから教会に寄って行くようにな」


 なるほど、教会が馬を預かるからいつ戻ってくるかわからないという事が無いのか


 「馬は行った町の教会に返せば良いということですね?」

 「察しが良くて助かるよ」


 さて・・早駆けの必要は無いにしても移動中寝てる余裕は無くなったか・・・

 馬車より速いとは聞いてるけど何日くらいで着けるんだろう?


 ちょっと不安を抱きながら、私は王都を後にした


















 結局着いたのは二日後の夕方で、お偉いさんの視察はその更に二日後だった

お嬢様はまだアウル君狙いです

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