異変
再開しました
世界に異変が起きているようです
2/1章管理で分けるの忘れてましたので急ぎ修正
王国暦754年
俺がこの街に来て5年が過ぎた
魔術道場も軌道に乗り、俺が教えなくても生活魔術と初級戦闘魔術くらいなら師範代が教えるだけでよくなり、俺の仕事も減ってきた
街にはどこで聞きつけたか「掃除屋」になって一旗上げると息巻く浪人が集まってきて、街の外に関して言えば治安が良くなったと言える
・・・そう、街の外は
逆に、街中は掃除屋になりに来たものの魔術が身に付けられなかったとか依頼をこなすものの昇格試験に受からないとか言う連中で荒れていた・・・
下手に実力のある連中なので、並みの衛兵ではどうにもならない・・・その為、最近では新しいシステムが導入された
ギルド管轄での治安維持だ
街中の治安維持において、掃除屋が出動した方が早い場合ギルドに詰めている高ランクの掃除屋が出動すると言う形になる
この為ギルドは常駐の掃除屋を雇う形になり、ある程度高ランクで伸び悩んでいたり、これ以上危険な任務を臨まないものなどが安定した生活を求めて進んで雇われる事になった
ちなみに、常駐掃除屋の給金は月銅板貨五枚、掃除屋宿舎利用料の無料化、その他、常駐掃除屋が一定数確保できる場合を条件に通常依頼を受ける権利などがある
Eランク+の報酬が銅板貨一枚なので、Dランクの掃除屋でも割とおいしい仕事だ
ただし雇える人数にも限界はある
いくら衛兵12人分の戦力を二人雇っても衛兵一人分とは言え無制限には雇えない
とりあえず暴れるのは多くても数人、それもFランク以下、場合に因っては掃除屋にもなれなかった人間が相手なのでDランクを八人雇う事になった
流石にDランクが八人居れば2箇所で暴れられても何とかなる
数的な不利は普通の衛兵も一緒に居れば何とかなるだろうとの判断だ
よく考えてみるとちょっとしたモンスターの群れなら討伐できるメンバーが暴徒鎮圧の為に常駐する・・恐ろしい話である
更に、最近目立ってきた問題がある・・・「異邦人」の存在だ
「異邦人」・・・本来の意味は「異国の人」と言う事だが、この場合は「どこから来たのか解らない人」と言う形で使われている
つまりは異世界人だ
最初の異邦人は一年前、唐突に現れた
場所は俺の生まれた村のあった場所で、本人曰く岩喰い竜の居た場所の洞窟に居たらしい
彼女は流れでこの街に送られてくることになり、今では自立する為掃除屋となって生計を立てている
幸いにも彼女は俺と似た世界から来たが、中には全く別のファンタジー世界から来た者も居た
完全にランダムなようだ
俺の居た世界に近い・・例えばフィアリアースのような場所なら日本語で通じる・・・だが、それ以外の世界では意思疎通の魔道具を使わなければならない
俺はその事をパイフーの話から予測し、教会の人間と研究を重ね、「言語把握の額冠」と言う魔道具を開発し、量産に成功した
現在では彼らとの応対の機会のある者に支給し、彼ら本人にも渡す事で混乱を極力抑えている
ただ、問題はこの魔道具・・この世界のマナを魔力に変換できるようになるまで使うことが出来ない
その為、まずはこの世界でのマナの変換方法を覚えさせると言うプロセスが必要になるわけだ
それもまぁ、この魔道具のおかげで簡単にはなった
事情を説明して魔術道場で変換方法を教えれば良いだけの話だからだ
ちなみにさらっと話に出た「意思疎通の魔道具」だが、これは遥か昔の文明で作られた遺失技術の産物で、こんな事もあろうかとパイフーが在り処を教えてくれた
それを俺がイメージを解釈し再構築して作り直したのが「言語把握の額冠」だ
「意思疎通の魔道具」が自分でマナを魔力に変換することが出来るのに対して使用者が魔力を供給しないと使えないのは、俺の理解がそこまで追いついていない為だし、「意思疎通の魔道具」がテレパシー的に表層意識を言語にするまでもなく伝えられるのに対し、「言語把握の額冠」では届いた言葉を脳内で自分の言語に直訳変換し、自分の言葉も口から出る際に直訳した物が出るようになっている
この辺りがどうしても再現できない・・・流石は遺失技術だ
「アウル~、入って良いかな~?」
異邦人のことを考えていたら向こうから来たか・・・
「ああ、問題ない」
そもそもここは扉も付けて無いしな
彼女の名は三木薄羽、女子高生だったらしい
ちなみに名前の由来を親に聞いたら、「生まれた日に丁度ウスバカゲロウを見た」とか訳の解らない理由だったらしい
彼女の時代にはもう潰れて無くなっていた様だが、なんとなく作為的なものを感じなくも無い
現在彼女はEランクの掃除屋として、定期的に銅板貨を稼ぐような生活をしている
そろそろDランクへの昇格も見えているが、彼女的には試験を受けるつもりは無いらしい
武術に関してのセンスは無いようだが魔術に関しては中々の物で、ギルド上層部から昇格するよう進めてくれとも言われている
身長は大きめだろうか?165cmで、特に痩せても居ない
容姿は東洋人特有のあどけなさが残る物の、後2・3年もすれば立派なレディとして扱われる程度には整っている
そのスタイルとも相まって衛兵連中から食事に誘われる事も多いらしいが、どういう訳か夕食の誘いには乗らないらしい・・・まあ、未成年だしな
「どうした?何か問題でもあったのか?」
最近では、彼女は額冠を付けて居ない
俺が勧めたのだが、いつまでも道具に頼っていては生活も難しいので、自力で覚えるまでの補助として使うことにしたのだ
おかげで、日常会話程度なら問題なく使えるようになった・・・これぞ高速学習法
ちなみに、額冠は現在でも間違った表現の許されない場面用に携行はしているそうだ
「遺跡が見つかったらしいよ・・・『フィアル』の」
!!
フィアルだと?何故そんな世界の「遺跡」がこんな所で発見されるんだ
「それは本当なのか?」
「うん、フィアリアースからの異邦人が確認を取ったから恐らく間違い無い・・フィアルの古代語が見つかったって」
「つまり、少なくともフィアリアースに近い平行世界から来てるのか」
「何でも邪神の祭壇て書いてある碑石が見つかって、入り口は粘土で埋めて一度高熱で焼いたような跡があるって・・・」
まてまて
「なんだそりゃ、随分と覚えのあるものが出てきたな」
「やっぱりあの話に出てた遺跡だったんだ?」
守護霊だった時の話は掻い摘んでした事がある
どうせこの後かかわる事も無いだろうと思いつつ、もしそういった遺跡に遭った時の為に注意を促そうとした昔話の一つだった
まさかその話に出した遺跡がこちらで見つかるなんて・・・
「念のために聞くが、こちらの遺跡って事は無いのか?」
「うん、それは無いみたい。ついこの間までそこには沼が広がってたはずだって近くの村の人たちも言ってた」
「沼・・か」
「湿地帯なんで木もまばらで、割と見晴らしの良いところにいきなり出てきてびっくりしたって」
「・・・全く、人騒がせな管理者様だよ」
俺たちの間では天上の者を「神様」とは呼ばず、便宜上「管理者」と呼ぶことにしている
実態がどうと言うよりこの世界の人間にとって絶対の存在である「それ」とわからないようにする為だ
「しかしびっくりだよね~」
「ん?なにがだ?」
「だってさ、アウルが転生者だって事もびっくりだけど、そこまではファンタジーじゃ良くある事じゃない?でもその前に管理者様?から仕事貰って、そのご褒美で転生してきた関係で、管理者様とパイプがあって、この世界の管理者様ともコネがあるんでしょ?」
「ご褒美は別にあって、この転生はあくまでボーナスステージらしいがな」
「その上、こっちじゃ他の世界から続々と異邦人が来るわ、挙句の果てに遺跡まで来てるって・・・どんだけよ」
てんこ盛りにも程があるな
「魔王が居ないのが唯一の救いだな・・・今の俺の立場だと勇者や選定者に祀り上げられかねない」
「は・はは・・・笑えなさ過ぎるからやめて(汗)」
薄羽は思わず乾いた笑いを漏らすが、事の重大さには気付いているんだろう
彼女の実力は並みの掃除屋と比べてもずば抜けている・・・主に魔術でだ
魔術に対してのイメージが貧困だったこの世界の人間と異なり、異邦人は総じて魔術のコントロールに優れている
俺はあらかじめ「厄介ごとに巻き込まれたくなければ自重した方が良い」とは言ってあるが、中には掃除屋として既にBランクにまで上り詰めた者も居る
既にフィアリアースのような魔法の認知されている世界から来た物は、特に魔術のコントロール能力が高いというのもわかっている
ちなみに、自重していないのは特にフィアリアースから来た連中だ・・・
フィアリアースでは「知力(魔術コントロール能力)」が高くても「魔力(体内備蓄エネルギー)」が足りないと大きな魔法が乱発できないのに対し、こちらでは魔術のコントロール能力さえ高ければいくらでも撃ち放題なのだから当然というべきか・・・
こちらの世界では「ステータス」を見ることが出来ないので良くわからないが、実は彼らフィアリアースからの異邦人より薄羽の方が魔術コントロール能力は高いと見ている
それがばれた日には、魔王だ勇者だと騒がれかねないのは火を見るより明らかだろう
「で、そのフィアリアースからの異邦人の考えは正しそうなのか?」
古代フィアル文字を正しく判断できたかは怪しい
俺も見たことはあるが、古代フィアル文字は楔と曲線の組み合わせで非常に難解だ
似たような物を見ただけで内容も判断せず「古代フィアル文字だ」等と知ったかぶりをした可能性もある
「正しいかどうかは解らないけど、向こうじゃ『探索者』とか言うスキルを持ってたらしいよ」
「探索者」、冒険者の中でも考古学者と共に遺跡を調べる仕事をしていた物が身に付けていた職業技能だ
能力としては隠された仕掛けの発見や簡単な古代文字の解読だったか
向こうで生きていた事の無いものには何を言ってるかわからない、説得力の無い言葉だが、それだけに説得力があると言えなくも無いな
「内容については何か言ってたか?」
「邪神の祭壇以外についてだよね?確か・・モンスターが生贄を求めて彷徨ってるとか蟲毒がどうとか言ってたかな?」
あの祭壇の迷宮で間違い無いか・・・
「じゃあ、探索隊には女性を入れないように注意してもらってくれ」
「どうして?」
「もしあの迷宮だったら、何者かが新たな『祭司』になっている可能性がある、そうなったら女性は生贄として石化の呪いをかけられる場合もあるからな・・用心に越した事は無い」
「あ、そう言うことか」
以前の話を思い出したようだ
「でも変だね、そこまで凄い話なら同じフィアリアースから来た人なら知ってそうなもんだけど」
「時代や地域の差もある。それに、同じ時間軸・・・世界線と言った方が良いのかな?のフィアリアースから来たかも不明だしな」
「それって?」
「俺とお前は同じ世界から来た、これは歴史上の人物の名前が一致している時点で間違いは無いが・・・居た時間は違うし歴史も若干変わっている可能性もある、これが世界線が違うということだ」
「え~・・・っと?」
「簡単に言うとだな、何か決定的なところが違うのを俺たちは『平行世界』と言って表現するが、実際にはあるタイミングで虫が死んだ死なない程度の差異の平行世界もある、これが『世界線が違う』ということだ」
「それって・・物凄い数になるんじゃ?」
「ああ、確かそれを題材にしたゲームもあったな・・・過去にメールを送ることに成功してしまい、それがきっかけで事象が複雑に絡み合うと言う」
少なくともフィアリアースには俺が担当した世界線と俺が導いた「俺」が担当した世界線の二つがある
俺と違う人生を辿ったあいつが俺と同じトラブルに会うかは不明だし、同じ解決法を取ったかもわからないしな
「とりあえず引き続き調査をして、中には調査隊以外虫も入れないように注意してくれ」
「わかった、伝えておくよ」
この世界の異変はまだ、始まったばかりのようだ
アウル君はどエライ立場になってますが、まだ勇者や神様扱いされ内容に努力をしています




