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イカれた異世界で生きていくための絶体条件  作者: 夢見羊


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10/10

在り来りの訓練

 走る。走る。走りまくる。

 ただ必死に幾度も幾年も幾人もの人が走り踏みしめられた地面。草木はなく平らで走りやすい訓練場を一定の速度で体力の限り出来るだけ長く走る。


 体力作りと体力管理を主とした訓練とのことで、訓練初日である今日。異世界召喚された次の日の昼から訓練を望んで受けた結果。

 訓練を施してくれる騎士のニズが、それを熱意とやる気に感動して気絶するまで走らされることになった。


 初日は軽く運動能力を見るだけで終わると思っていたら、ガチガチに走らされていることに。それも厳しく監視されているために少しでもペースを落とすと大声で指摘される。

 速度は一定で少し速いぐらいのランニングといえるが、走らされ続けていると体力の限界は人によって違うため脱落する人も出てくる。


 ゴールはなく体力の続く限り一定の速度で走るという目的のために、本当に体力の限界で走れなくなったら終わり。

 逆に体力がある限りは走り続けなくてはいけないし、誤魔化しも鬼教官となった彼の目を騙すのは至難。それを行うとした原木くんに怒声を浴びせていた。 


『なに休んでいる! 走れ死にたいですか!』


『き、厳しすぎる…………ここはもっと勇者の才能で楽にすむじゃないのか?』


『なにを呟いている、それより走れ!』


 訓練場の回りを一周。二周と楽々と走っていた、そこまでは普通のランニングだった。

 こちらの世界も冬ごろなのか、空気は肌寒く走れば空気は風となり肌をさすように冷たい。だけど一周するごとに体は暖まり、少し心地よい感じへと変わるも。何十周も走れば、暖かいとこではなく体の中は熱く、外は汗が空気で冷やされ寒いという明日には風でも引いてしまうじゃないかと思う温度差を感じている。


 十周を走りきったころには体力がない人達はへばってきて、特に風音は五周目から少し走りのリズムが悪くなっていたが。

 二十周目に入らずに風音が脱落した。心配して様子を見に行きたいが、それを許してくれはしないだろう。ただ使用人のメイドに運ばれているのを横目で捉え、日陰があるところで汗を拭かれて休んでいるのを見て一安心し自分も走ることに集中する。


 呼吸を忘れず。肉体に緊張の糸を通して力を抜かせず。筋肉の疲れがただ溜まっていく。

 熱い。呼吸により冷たい空気を吸い込むと体の体温ともに喉が枯れていくような辛さが出始める。

 足腰に伝わっていく地面を蹴る振動が間接部分へと痛みを与えていく。


 百周も回ったのだろうか。そんなことは数えることを止めた自分には分からない、だから走り続ける。

 肉体的に精神的にただきつい、正常を保っていられない。

 肉体的な疲労、精神な苦痛。それは走り続けるための必要な呼吸を遅らせていく。必要なときに必要なだけの空気を送ることが難しくなってきたのを感じる。


 足りない。空気が酸素が足りない、思考が回らなくなってきた、肉体に力が入らなくなってきた。終わりを感じて緊張が解かれていくを意識すると、肉体精神の疲れはどっと存在感を露にし、急速な失速を余儀なくされた。


「はぁ、は、は」


 急速な失速は足をもつれさせて自分を地面へと倒させる。

 立ち上がろうと腕の力で起き上がろうと力をいれて体を上げるも、途中で力が抜けて地面に体を打ち付ける。


「いったぁぃ……つかぁれぇたぁ……まじでしぬぅぅぅ」


 もう立ち上がる力がないためにそのまま休むことにした。


 このまま寝ていたら、今も走っている皆に踏まれることになるかも知れないが動けないし疲れて死にそうな自分には踏まれて死ぬこともこのまま疲れ死ぬことも変わらない。

 ただ体の安寧を求めて、一切体を包み込むような柔らかさやふかふかさのどないカチカチの地面へとうつ伏せで顔が服が汚れようとお構いなしに寝る。

 こうして地面に耳を当てて寝転がっていると皆がまだ走っている足音が聞こえてくるような気がする。


 体は熱くてたまらないけど、発汗した体を冷たい風に辺り肌寒いどころではなく寒いが、逆にそれが心地よくも思える微睡みに誘われている。

 このまま眠れそうだ、そうだこのまま寝てしまおう。それがいいと頭も微睡む。


 ……ツンツン。

 ……ツンツン。

 ……ツンツン。


「今、最高に寝れそうなのに誰だ、指でツンツンしてくる奴は!」


 目蓋も開けるのが面倒くさく感じるがけて、ほっぺを指でつついて眠りを妨げてくる不届き者に視線を向ける。


 視線の先にいたのメイド。


 色白手が伸びている元をみれば、赤茶色の瞳に幼い顔立ちの左右に軽く髪を御団子状に纏められているメイドのペアナがいた。

 なぜか知らないが自分だけに生意気な小娘であり、意外にこの城のメイド長らしい。

 無表情でほっぺをツンツンと目があっているのにがっつりと目と目があっているのにつついてくる。


「いつまでつついているだよ、こっちは疲れて死にそうなんだよ。眠かせてくれ」


「ああ、生きてましたか。てっきりもう屍かと思っていました。生きていらしたなら、いってくださいよ」


「いや、なに今気づいたように装ってだよ。ずっと目があっていたし、その前に怒ったよね? 分かるよね? 分からないかぁ、子供には分からないかぁ」


 煽っているとツンツンとしていた人差し指が頬を突いているまま止まったが親指もあたり、頬をおもいっきり摘ままれる。


「いたぁい!?」


 ぎゅっとほっぺを摘ままれるが痛がっている姿をみて、にやりと笑ってから無表情にもどった。

 それと同時にほっぺから指を離してこちらへと手を差しのべてきた。

 脱落して自分の力だけで歩けないクラスメイト達の所に来ていたメイド達のように、ようやく自分の仕事を思い出したようだ。疲れは果てた人で遊ぶ真似ではなく、介護的な役目を。


「バカやってないで行きますよ」


「どこに?」


「あの世に」


「殺すきか?」


 差し出された手を掴んで、少し休憩したおかげか、それとも精神的に楽になったおかげか彼女の手を支えに立ち上がり。

 ペアナの肩を借りながら脱落した者の休憩場に向かう。


 ただペアナと自分では身長差がありすぎて歩きにくい。


 自分が176cmでペアナが150cmぐらいで20cm差がある。まあ年齢は分からないが同い年ぐらいとは思うが。

 実際どうなのか聞いてみることにした。


「なあ、歳って幾つだ?」


 その質問を投げ掛けるとピタリと歩きが止まり、こちらにゆっくりと振り向いてどう引きした顔で見てくる。


「どうしたんですか、いきなり年齢を聞いてくるなんて。もしかして欲情してしまいました? 確かに私の魅惑のボディをこんな至近距離で感じてしまったら仕方ないのかも知れないですけど。好みのタイプじゃないのでごめんなさい」


「誰がロリコンだ、お前みたいなちんちくりんに誰が欲情するか。ただ自分と同い年ぐらいかなと思って聞いただけだ」


「誰が幼女ですか、私は17歳の立派な女性ですよ。身長だってこれから伸びますよ」


 17歳。こいつ同い年ぐらいかなと思っていたけど、ほんとうに同い年かよ。すると平均よりだいぶ小さめではあるのか。異世界だから、食事で身長が伸びないこともあるか。

 まあただ悲しいことに、17歳ではもう身長は伸びることはないだろう。女性の成長期が終わるのはだいたい15歳前後。もう伸びることはないというのに、なんて健気な子なんだう。


 いや別に健気ではないか。と憐れみを感じ取ったのかジト目でこちらを見てくる。


「一応言っときますけど、べつに身長のことは気にしていませんからね」


「大丈夫だ、分かっている、お前の成長性は無限大だ」


「分かってないですよね? 本当に気にしていませんから、身長が低いおかげて子供ぽっくて夜のお務めもしなくて済みますから……まあ、たまに子供体型がいいという変態がいますけど……ここにもいますたね、へ、ん、た、い」


「いや、そういう生々しい返しは返せないからやめて! あとロリコンじゃないから!」


 などなどと茶番をしながら風音や遍が休憩しているいる場所まで貸してもらい。

 二人がいるところに座り、ペアナは飲物と汗や汚れを拭くものを持ってきてくれるようで自分を座らせるとそれだけを伝えて行ってしまった。


 視線を二人に移すと、訝しむように見てくる。

 どうして二人にそんな目を向けられなくていけないのか、なぜかは分からないが下手にでる。


「ど、どうしたの二人とも、なにかしたかな?」


 遍と風音は自分の問に顔を付き合わせて自分には分からないコミュニケーションを取っている。

 なにか決まったのか風音は穏やかな微笑みを向ける。その目の奥にはそのような暖かさは皆無だ。


「どうしたのと言われても特にないですが……ただ、ずいぶんと楽しそうにお話をしていたので、手でも出したのかと思いまして」


「へぇ……?」


 いきなり突拍子もないことを言われて、変な声を出してしまった。

 手を出したって、そんなふうに見えたかな。

 なぜか分からないけど、ふざけあってしまってはいるから仲良く見えてしまうのは仕方ない。

 けど恋仲や肉体関係の仲と疑われるのはさすがにあり得ない、何日も何ヵ月もの仲なら疑われて仕方ないかもしれない。ただ出会って一日だし、お互いに相手のことを知らない。


 いくらペアナが可愛いとはいえ、見た目が幼すぎるからあり得ない。


 あと風音は出会ってすぐに、こんな状況で女性に欲情して手を出す奴と思われていることに落ち込む。

 この返答をどう答えたらいいか考えていたら、我慢できなくなったのか風音が鋭い目付きで。


「なんですか、本当に手を出したんですか。ペアナクェルさんがいくら可愛いとはいえ、幼すぎるのではないですか。それに男女が初めて会ったときから冗談を言い合ったりなんて、普通に有りますか? ないです、ない、ない、ないです」


 怒っているように怒涛に責められるが、謂れのないこと過ぎて唖然と聞き流してしまっている。  

 さすがに少し様子がおかしい風音をみて、このまま黙っていたらいつの間にか幼女手を出した性犯罪者にされそうだ。


「ちょっと、ちょっと待とう風音」


「なんですか、なんですか、信勇くんは幼い子がいいですか、小さい子がいいですか…………私だっーー」


「いや、ロリコンじゃないから! もうこの乗りもさっきやったから! あとペアナとは恋仲とかじゃないからね、普通に考えて異世界転移していきなりメイドの子に手を出すとかあり得ないでしょ」


「むっ、でも」


「でもでもなんでも違うものは違うし、それにそれは自分だけじゃなくてペアナに失礼だろ?」


「はい……」


 否定しながらも宥めるようにいうと、落ち着きを取り戻したのか素直に聞いてくれるようになった。

 それに追撃を加える。さすがに風音の言葉を聞いていれば、なんでこんなに攻撃的なのか分かる。それが何に起因しているかは分からないけど。


「風音、それが嫉妬の感情だとは分かるけど、さすがに幼馴染みにガチロリコン扱いされるのは落ち込むからやめてくれ」


「いえ、信勇くんが本当に手を出したとは思っていませんでしたけど……ごめんなさい、言いすぎでした…………本当に信勇くんが小児性愛者だとは思ってませんからね、本当に小児性愛者だとはーー」


「分かっているから、何度も繰り返して呼ばないで!」


「ごめんなさい」


 少し大袈裟には伝えたが、効果抜群のようで慌てて弁解しているが、「信勇くんが小児性愛者」だけを聞かれたら有らぬ噂が広がってしまう可能性がある。いや確実に何人かには聞かれていると 思うが、まあ致命傷ですむだろう。

 そこで今まで沈黙を貫いていた遍が話に入ってきた。


「まあまあ、風音が少し寂しくなって焼きもちを抱いただけよね」


「な、なに言っているですか遍ちゃん!? 別に二人が楽しそうに話していることが良いなとか思ってないですよ!?」


「いや、それは全部言っているのよ、風音」


「ち、違いますからね、信勇くん!?」


「まあ、うん、わかったから、うん」


 絶体に楽しんでいる様子の遍に呆れた目を向けるが、笑みが隠しきれないまま肩をすくめられた。

 風音を誑かしていたのも遍のではないかと邪推をしているとペアナがタオルと飲物を持って戻ってきた。


「何の話をしているのですか? ロリコン」


「だからロリコンじゃないから、このロリバパア確定野郎め」


「ロリババア? なんですか、新手の変態用語ですか? 幼くて歳を取っているって、どいうことですか?」


「信勇くん?」


「信勇、そういう趣味もあるのね」


「いや、違うからこれは木原くんの趣味だから」


 友達の癖を思わずばらしてしまったけどごめん、でも仕方なかった。


「お前ら何の話をしているだ?」


 綠朗の声がして、振り替えればどうやら訓練が終わっていたようで、最後まで走りきった人達がやってきた。

 体から蒸気が出ているほどに体温が高まっている綠朗は、少し息が荒く落ち着いていない。

 最後まで走りきっていた人達は、綠朗に定眼くん、皇さん、太陽くん、山住さん、黒岩くんの六人だけであとは全員途中で脱落したみたい。

 それで訓練を施して指導してくれる騎士のニズがやってきて、自分達に今後の説明をしていく。

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