【第二章・第四十六話】業務報告
「血を摂取したばかりですし、僕の部屋で少し休んでください。万が一なにか症状が出ても、僕とドクトリナ様がいますから」
そういう名目で彼女を皇城に連れて帰ったは良いものの、話してるうちにサングイスは眠ってしまった。最近の不調が一気に回復し、疲労が出たのだろう。椅子からベッドへ彼女を抱き運ぶと、随分と安心しきった顔で寝息を立てていた。
会うたびに濃くなる目の下の隈、痩せこけていく体、失われていく彼女の輝き。本当に、気が気ではなかった。あの薬がきちんと効能を発揮したことに、ほっと胸を撫で下ろす。作戦を成功させるためにも、サングイスの体力が持つことを願うばかりだったが、すべて丸く収まって良かった。
愛おしい寝顔にそっと顔を近づける。なにしろ、こんなにも触れ合えるのは久々なのだ。少しばかりのキスくらいは許されるだろう。今日は仕事も休みだ、いっそのことこのままサングイスと眠っても……。
___コンコン。
「……はい」
そういえば、念のためサングイスの様子を見てくれるとドクトリナ様がおっしゃっていたのを忘れていた。飛ばそうとしていた意識をもう一度叩き起こし、返事をする。
「すまないね。……もしや、お取り込み中だったかい?」
「いえ、まあ。こちらこそ、ご足労いただきありがとうございます」
「気にしないで。可愛い部下の恋人なんだ、心配くらいかけさせておくれ。それで、彼女の容態はどうだい?」
にこやかな笑顔と打って変わって、心配の色を滲ませながらも厳しい視線になる。
それもそうだ、こんな珍しい病気に罹った患者なんてドクトリナ様からすれば立派な研究対象。サングイスのことを大切に思ってくれている気持ちは本物だが、やはり職業柄こうなってしまうものだ。
なにしろ、発症例が少ない挙句、何が起こるかわからない。感染力なんて持っていたら最後、この国が滅ぶのだから。
「快方に向かっているようです。四肢の痺れや脱力感、口渇も緩和したみたいで」
「それなら良かったよ」
事態が大きくならずに済んだからか、ドクトリナ様は大きく息を吐いた。二人で部屋のソファに腰掛け、向かい合う。そして、サングイスがしばらく目覚めないことを確認してから、今度は僕も表情を引き締めた。
「では、報告を。今回、サングイスの治療薬を求めるために僕が赴いた魔導具屋『ミラージュ・ドゥ・シュヴァルツ』について」




