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勤務先と私

ウィルお坊ちゃまから紹介された仕事は辺境の戦域最前線での家事手伝いだった。

ボルネイト砦はルナリア辺境伯の統括地域にある対魔物の為の最前線である。

魔物は増えすぎるとスタンピードという集団大暴走を引き起こし近隣の村や街を壊滅させてしまう。

それを防ぐ為に砦在中の兵士達は1キロ先にある森にいき定期的に魔物を観察、討伐し近隣の平穏を守っているのだ。

その砦のお手伝い…あぁだから天使なウィルネイト様は少し困った顔をされたのか。


まあ、危ないとわかっている所に行きたい人なんて居ないですからね。


誰もやりたがらず、砦にいる兵士達が協力して色んな家事をして生活しているようだが

男所帯でどーにもならんとの事。

「週に二度ほど近隣の村から女性の手伝いも来るらしいんだけど、足りないみたいなんだよね。

どうにも男所帯だと生活が雑になるんだって。住み込みで働いてくれる人を探してるみたいなんだけど…」

「やります!!やらせてください!」

私は間髪入れずに返答した。

身分不詳な私でも働けるというのならそれにこしたことはない。

このチャンスを逃したらどんな仕事をさせられるかわからない。

なんたって身分不詳な上に奇妙な髪色に奇妙な目の色だ。

見世物小屋や娼館にて勤務…なーんて事になりかねない。

第13騎士団が守るボルネイト東砦の家政婦…危険な場所だというだけてこんな私でも働けるというのなら是非ともだ!

それに危険な場所っていっても、私自身が1番危険な化け物かもしれない。

魔物?私が魔物のそれだっつーの。なら、なんの危険もない。危険なのは私自身だ。


「お願いします!私にやらして下さい!」


深々と頭を下げて私は志願した。


そこからは話が早かった。

メイド服を何着か見繕ってもらい馬車でわざわざ5日もかけてボルネイトまで私は運ばれた。

ウィルお坊ちゃまは輸送される私を見送りたいとボルネイトまでわざわざ着いてきてくれた。

「久しぶりに兄様にも会いたいからね」

そう言ってらしたけど本当は私を心配してくれているのだとわかる。

見ず知らずの山であった不審者にここまで優しくしてくれる…やはり彼は私の天使なのだと理解した。化け物になりさがった私だが神様は見捨ててなかった!ありがとう天使を派遣してくれて!!


馬車の道中、天使なウィルネイト様が私に色々な事を教えて下さった。


ボルネイト砦は魔物が住む永眠の森との境に立てられている。

永眠の森、その名の通り入ったら最後、そこで眠りについてしまうという恐ろしい名前の森だ。

魔物の強さはトップクラス。そんな恐ろしい森と対峙しているのは第13騎士団だ。

不吉な数字を背負いそれに立ち向かう屈強揃い!猛者の集い!!

そのトップで荒らせられるのは団長のエルビス・ディア様。

ディア伯爵家の次男でもあるが家督を継ぐわけでもない次男が名を上げるならここだろう!と奮起なされて気がつけば高みに上り詰めていたという逞しい経歴のお方だそうだ。

そして副団長はキースレッド・ヴォルフガング様。ウィルネイト様の兄上である。金色の髪に青い目のこれまた王子様みたいな外見の人だった。

とても屈強揃いの騎士団にいるような外見の方ではない。

少し華奢そうにも見えるのに、恐らく無骨な鎧のしたに逞しい体を隠しているのだろう。


私は到着後、直ぐに団長室へと通されて、お二人と挨拶をかわした。


そして仕事内容の説明をうけた。

またこの場所が怖くないか?と念を押すように尋ねられた。

「いえ、全く怖くありません。ここには屈強な騎士の皆様がいてくださります。皆様は立派な騎士道を歩む方々、有事の際にはこんな私でも片手間くらいには守ってくださる事でしょう。それを信じておりますので怖いことなどありません」

それに私は化け物ですので、恐らく自分の身は守れます…と心の中で呟きながら真っ直ぐに団長さんを見つめると、そのいかめしい顔をクシャッとほころばせると

「なんとも意志の強そうなお嬢さんじゃないか!気に入った!孤児だそうだがこの隊にはそんなやつらも多数まじっている。自分の出自を気にする事はない。ここでは強さしか求められない。お嬢さんの意志の強さはここでは必要とされるものだよ。我が騎士団は君を歓迎する」

団長さんはそう言うと私の頭をクシャクシャと撫でて用事があるからと副団長に後を任せて退出して行かれた。


え?面接あれで終り?

不思議な顔をしていると、金髪碧眼の大人な王子様事、キースレット様がふわりと優しい笑みを向け

られる。

「こんな危険な場所に住み込みで勤めに来ようなんて女性はいないからね。勤める意思がある時点で

合格なんだよ」

「で…でも私は子供です。読み書き計算はできますが、逆にそれ以外は何もできません。先ほどの業務内容の中には、料理や洗濯なども入っていました…」


残念ながらそこのとこは母に教えてもらえなかったの!

ほらみろ母よ…やっぱり必要事項だったじゃないか!

涙目な私を優しく見つめるとキース様。

「いいんだよ。すぐにできなくったって。ここには週に2回だけ通いで来てくれる近隣の村の女性たちがいてね。息子さん娘さんを立派に育てあげたご婦人方は、むさい私達騎士よりも君のように儚いお嬢さんにものを教える方が得意だと思うよ。気にせず出来ぬことは教えてもらうがいい」

そういってキース様は団長にクシャクシャにされた私の髪を整えてくれると「部屋に案内するよ」と私を連れ立ってくれた。


「ね?大丈夫だったでしょ?キース兄様は騎士道を貫くかっこよくて素敵な僕の兄様なんだ」

部屋までの道を歩きながら、私の天使様がニッコリと笑う。

「はい…素敵な騎士様ですね。でも…」

私が言いよどむと不思議そうな顔でウィルネイト様が覗き込んできた。

「私の一番素敵な方はウィルネイト様です。本当に色々お優しくしてくれて…天使様のようですわ」

私が心からの礼を述べると、ウィルネイト様はお顔を真っ赤にさせて「そ、、そうか」と言った。


前を歩くキース様がその時に

とんだ小悪魔が来たものだと苦笑していらしたことは知る由もなかった。


こうして私はボルネイト砦で働く事となったのだ!













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