日記帳(仮)と私
私の手元にはとある古びた日記帳がある。
ミレイユ・アルベニアという女性の日記。
つまり亡くなった母の日記帳だ。
母のミレーは、亡くなる寸前に
この日記帳を読むようにと言った。
そして私に名を告げると息を引き取ったのだ。
暫くはとても読む気になれなかった。
日々という日々が2転3転してもうそれどころじゃなかったし。
死んだー!はい、死んだ!雪山で凍死!…って思ったら、化け物として復活!
翼も生えたし、角と鱗も!ってな具合だったので心身共に忙しかった。
それに深刻そうに意味深に、今まで隠してきてごめん…なんて言って渡してきた日記帳。
ろくな事が書いてないって普通に考えたらわかる。問題事をね?1日でも先に伸ばしたかった。
まぁ伸ばした所で、読まないとか見ないで捨てるとかって選択肢はなかったので、
意味の無い先延ばしだったんだけども…
これを開いたのは実は半年前。
意を決して読んだんだけど…
母さん?これ妄想小説ですよね?
これが小説でなかったら世の中は
スペクタクルな出来事で溢れかえってしまう。勇者は募っても募っても足りないし、
魔王様も死んで生き返ってを汗せくやらなくてはならないだろう。
そんな風に思ってしまうような内容だった。
母は日記帳にはこう記してあった。
私の可愛いお姫様、貴女は本当にこの国のお姫様なのよ?と。
母は私をお姫様と呼んだ。確かにそう呼んでたけど
お姫様的な子になるようにという
希望を込めた痛い名前だと思っていた。
日記にはこう書かれている。
母ミレーこと、ミレイユ・アルベニアはアルベニア伯爵家の三女だったそうだ。
父親のカール・アルベニア伯爵は騙され安い、浅はかな人、問題事は見て見ぬふり。母親のルーニィ・アルベニアは母ミレーを産んで亡くなったらしい。
ミレーを産んで亡くなったと言うのがどうも琴線に触れたらしい、長女のララーシェはミレーを虐めに虐めたようだ。1番気が弱くて長女のララーシェにいつも虐められて…それを次女のリナリアに庇って貰うと言うのを繰り返してらしい。
そんな生活をしている中、長女が結婚して家を出たと思ったら、
なにやら悪さを仕出かして離縁されて帰ってきた。
既に庇ってくれる次女も家から出ており自分は機嫌の悪い長女から当たられっぱなしだったそうな。
そんな、けして暮らし安いとは言えない環境の中で王宮務めをしている幼なじみのラフターという青年との交流だけが母の心の支えだった。
2人仲良く暮らしていく事は出来ないだろうか?と思案していたがラフターは身分が低く、すごく裕福ではなかったが一応伯爵家の家に生まれた自分とでは乗り越える障害が多いなぁなんて
そんな事を考えていたらしい。が、そんな時に事件は起きて…夜寝ていたら自室の窓を叩く音がする。なんだと思って開けて見たら、少し怪我をしたラフターが小さな赤子を抱えて
「今から一緒に逃げてくれ!!」と言う。
展開に着いてけてはなかったが、箱入り娘だった母さんは、ララーシェから離れられるし、ラフターと一緒にいられる!と考えたらしい。
「冒険だとも思った…って母さん!その冒険はしちゃダメなやつ!」
ってほんとこの”小説”はツッコミ所が満載だなぁ。
そしてラフターと逃げに逃げて…
たどり着いたのがあの山小屋だったそうな。
逃亡道中もやっと終了かと思った矢先に
ラフターは逃げる時に負った些細な傷から病気になり死に至る。母は泣きながら死なないで!と懇願するが、願い虚しく…。
ラフターは死の際に攫ってきた子供が第2王子の長女である事、当時第2王子と対立していた第3王子から脅されて、姫を殺そうとした事を話したそうだ。
「でも出来なかった、紫色の目で笑った貴方を、見つめた瞬間、殺せなくなったと言っていたーって危なっ私死ぬ寸前だったの?」
母の小説はさらりと私の命に触れていく。
そして…
そこからは母が私をいかに愛していたかが大量に綴られていた。
いわく、可愛くて可愛くて、もう少ししたら素知らぬ顔でお返ししよう!と思っていたんだが?
明日返す、明日返すと日にちを伸ばしていたら引き返せぬようになってしまったとの事。
出奔する時に持って出た宝石やドレスを金銭に変えて生活していたが、底が見え始めていた事。
シレッと実家に頼ろうかとも思ったが、
私の出奔時に誰かが姫の誘拐をアルベニア家に擦り付けて、
お家は取り潰し、ミレーは誘拐犯の一味になっていてそれどころじゃなかったとの事。
父であったアルベニア伯爵は平民となり
「長女のララーシェが何故か修道院へ送られたのはざまあみろ〜って思った…て母さん!!」
そして母は日記に全てを綴ったのでこれを信頼できる人に見せて欲しい。あと、貴女の腰の辺りには謎の刺青?のような不思議な模様がある。身体的特徴となると思うのでソレもあわせて身分を取り戻して欲しい――
夢小説もここまで描ききれば立派だと思う。
母が貴族だった、可能性はある。
彼女は博識だった。それを私に余すとこなく教え伝えてくれた。そのお陰で私は仕事につけたのだから本当に感謝している。貴族の娘だったから教育を受ける事ができた…うんありえる。
でもそれ以外は全て嘘かな!
まず私がお姫様ってのがありえない。
設定に無理がありすぎる。
どうせ私は何か仕出かして帰ってきていた
ララーシェ辺りの子供で育児放棄していたから母さんが不憫がって引き取ったとかそんなあたりだろう。お姫様を誘拐して探されてないってのがありえないし、捕まらないで12年も逃げてたというのがあの母から想像できない。
という結論から私お姫様説は大却下だ。
ララーシェが何かしたか、、それとも伯爵が何か仕出かしたか。どちらがとかは分からないが、お家取り潰し的な悪事を働いた不届き者がいて、這う這うの体で母はあそこまで逃げて、力なき母は捨て置かれて居たんだろうと思う。
真相はたぶんこんな感じだろう。
「それをさぁー?母さん、いくら残していく娘が可愛いからって身分詐称は良くないよ?下手したら死罪だよ?私だから右から左へ流せるけどさぁ?でも…気になるのは…」
気になるのは真ん中の姉である次女のリナリアだ。
実家が母のせいで?無くなり
嫁いで家を出ていた大好きなリナリアにまで迷惑をかけていたら…
それだけは心残りだと書いてある。
リナリアさんって人はどこかの家に嫁いだらしいから…母の死を伝えたい。
唯一、この日記から読み取れる掛け値なしに母と仲良くしてた2つ上の姉。
彼女が母の生死をどう思うかわからないが
私が母の立場なら…ごめんなさいとありがとうを言いたいはずた。
この砦に籠っていては一生探せだせないだろう。
私は…育ててくれた母の最期の気がかりを無くしてあげたい。
それは騎士を目指す事の理由になるだろうか?
例え途中で正体がバレて化け物として討伐されても
頑張って生き抜いた事になるだろうか?
どうやって探せばいいか皆目見当もつかないけど…でも!
日記(仮)を読んでいろいろと決心した。
私はここを出て母の姉、リナリアさんを探してみる。
…本当は化け物の理由あたりも書いておいて欲しかったが
恐らく妄想小説であるコレに、そんなびっくりな設定は想定外だっただろう。
それは仕方ないか…ほんとなんなんだろコレ。
体質って事なんだろうか??
そんな体質あるかーい




