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バウムと半面

時間は変わらず一定に過ぎていく。


王が退任し、また新たな王へと変わった。




何十年ぶりかに王都へ足を踏み入れてみると、当たり前だが顔ぶれは一新されていた。

病床のブルデの脇で騒いでいた三つ子らしき1人の爺さんとすれ違ったが、本当にブルデの孫なのか、そういう気がしただけなのかはわからない。







バウムはますます話す速度が遅くなっている。

どうやら顔付近の皮膚も木肌に近づいていて、口を動かしづらいようだ。


ときたま、人間に話しかけているのか、樹木に話しかけているのかわからなくなる。

バウムの人間らしさは薄れていくばかりだ。



そんなバウムは、呪われて以来感じられるようになった植物の魔力とやらを、より鋭敏に感知できるようになっているらしい。





バウムは言う。


森の土に異物が少しずつだが増え始めた。新しい魔王が立つのも近いだろう、と。






魔王が立つと不作になる原因は、魔物の魔力が起因するというのだ。



土にはもともと、魔物の魔力、植物の魔力、そして微量ながら人間の魔力が混ざりあっている。

植物が土から魔物・人間の魔力を浄化し異物を取り除くことで、作物は健康に育つことができる。


しかし魔王が立ち魔物の数が増えると、どういう因果か土に混ざっている魔物の魔力は段違いに増えるのだそうだ。

植物の浄化が間に合わないほどに。


土には魔物の魔力が占めるようになり、作物は魔物の魔力が障害物となって栄養を取りづらくなる。

そしてだんだんと作物は弱り、不作へと繋がる。



ならば異物を人力で取り出して植物に移せばいい、というのがバウムがかつて老婆に教えた方法だ。


浄化速度が間に合わないだけで、樹齢の高い木には異物をため込む容量は空いている。

若い樹木にこれをやると枯れてしまう可能性が高いが、樹齢の高い木ならば耐えられるのだと。











「近いというのはどれくらいなんだ?」

「どれくらい、だろうな。正確には、わからないが、30年くらいじゃ、ないかと、思う」




魔王を討伐してまた次の魔王が立つまで、大体100~200年という間隔が一番多い。


それだけの年月が経っているということだ。




シュワーゼが死んでからもそれに近い年月が経っている。

シュワーゼらしき人物には一向に出会わない。


日々根城には帰宅しているので、シュワーゼが根城に来さえすれば会えるはずだ。



まだ生まれ変わっていないということなのか。

それとも動き回れる状況ではないのか。


生まれ変わる間隔は10年のときもあれば、100年かかるときもあると言っていた。

間隔が一定でないというのは厄介だな。









そんなことを考えながらバウムと話していたら、顔の下半分を面で隠した人物が近づいてくる。

私を一瞥してバウムに話しかける。




「バウム様、周辺はいかがでしょうか」

「他は、いない。安心、していい」

「ありがとうございます」




短い会話。

バウムに笑いかけたのか、目を細めてすぐにその場を離れる。




「今のは“外”の者だろう。何を確認していたんだ?」

「付近に、外部の、人間がいないかを、確認していた。平穏に暮らす、ためには、限りなく危険を、避ける、必要がある」




バウムの足はもはや、根を張ってしまって地面から動かすことができない。

常に地面と繋がっていることで広い範囲の魔力を感じられると、いつだったか言っていた。



植物の魔力はもちろん、魔物や人間のものも。



生活拠点を構えていない人間がこの付近を彷徨っていないか確認していたようだ。






“外”の者は外部との接触を断っている。

私もまだ接触したことがない。



この辺りは危険地帯に位置するうえ、結界で隠匿されている“外”の村とごく小さな村しか存在しない。

人間が足を踏み入れることは滅多にないだろう。

せいぜい森で迷った人間ぐらいだ。


その迷った人間にもうっかり鉢会わないように、バウムに確認をとってからどこかに出かけているらしい。

用心深いことだ。



私も“外”の村からすると外部に属するのだが、面を被っているため仲間だと思われたのだろう。




「なあバウム。やっぱり“外”の奴らとは接触しない方がいいか?あいつらは何を隠しているんだ?」




思わぬところに欲しい情報が転がっていたりする。

まだ調べていない“外”の村のことはずっと気になっていた。




「そう、だな。今の者は、理知的、だから、話せる余地は、あるかも、しれない。数日後にここに、戻って、くる。その時に、話してみると、いい」




以前バウムに止められてから、“外”の者への接触は図らないようにしていた。

バウムと会ってから50年ほど経っているだろうか。

“外”の者と話しても諍いは起こらないだろうというバウムの信頼を勝ち得た気分だ。


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