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エレン・ブライスは婚約者を切り捨てる  作者: もも


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14/15

14エピローグ

誤字報告ありがとうございます!助かります。

 さらさらとした砂浜をルカの腕に縋りつきながら歩いているのだが、足が取られてしまってなかなか前に進めない。

砂浜がこんなに歩きにくいなんて初めて知ったわ。足首より少し短めのスカートにして良かった。


ルカがいつもにまして頼もしく感じる。そっと横顔を覗いてみた。

短く整えられた黒髪と端正な顔立ち。まつ毛が長いのね。鋭さを感じさせる凛々しい眉、涼やかな目。毎日一緒にいたのにこんなに美丈夫だとは、ちっとも気が付いていなかったわ。



潮の匂いがするわ。波も寄せては返している。水平線が遠くに見える。海って広いんだわ。深く息を吐くと、これまでの苦しい思い出や張り詰めていた気持ちが、全て体の外へ流れ出てていくような気がした。


「海って凄く開放感があっていいわね。青でも水色に近い空の色と深い蒼色のコントラストがとてもきれい」


「俺にとってはエレン様の方が綺麗です」


「まあ海の神様に聞かれたら大変よ」


「神様なら恋に胸を焼かれている男の言葉なんて気にしませんよ」


「まあルカったら……。いつから恥ずかしいことをさらっと言えるようになったの?」


「本当のことですから。……愛しています、エレン様。同じだけ気持ちを返して欲しいなんて贅沢は言いません。ただ隣にいられるようにこれからも頑張るつもりです」

真っ直ぐな気持ちをぶつけられて、私は胸が一杯になった、


「……。いつか同じ言葉が返せるようになりたいわ」


「その言葉だけで充分です。俺は生涯をかけてエレン様をお守りし愛したいと思っています」


そう言うと握っていた手が熱くなった。耳まで赤くなっている。以前も甘い言葉は言われていたが雰囲気に酔っていただけだったのかしら?

絆されかけている。ルカの言葉にはエレンの全てを支配してしまいそうな熱量がある。

エレンは急に自分に自信がなくなった。



 海辺の散歩を1時間程にきり上げホテルに戻った。用意された部屋は3階のスイートルーム。一つの客室に3つ個室があり簡易キッチンまで付いている。

海が見える眺めのいい部屋だ。ここにルカと泊まるけどもちろん別々の部屋を使う。まだ同衾はしないつもりだ。初めては結婚式の後がいいもの。


他の護衛には別の部屋を頼んである。3人もいれば充分と言ったのだがお祖父様が聞かなかったのだ。


「お疲れになったでしょう?お湯を使ってきてください。その間にフロントにお茶を頼みますね」サラがてきぱきと動いてくれた。


潮風でべたついた身体がお風呂にはいると気持ちが良くなった。今頃ルカもお湯を浴びているはずだ。部屋に1つずつお風呂とトイレが付いている。流石スイートルームね。


サラに身体と髪を拭いてもらいゆったりとした白いワンピースに着替えた。

ルカも白いシャツと黒いパンツのシンプルな服装だ。顔が小さく手足が長いのでモデルの様だ。タオルで乱暴に拭いたのだろう髪が乾ききっていないのでなんかいつもより色っぽく見える。


「もう、しっかり乾かさないと風邪をひくわよ。ソファーに座って」


私がタオルを持ちソファーに座るとサラは気配を消して壁になってくれた。


真っ赤になったルカの髪を拭いていると、ホテルの使用人がノックをしワゴンを押してやって来た。


アフタヌーンティーセットが準備されていく。紅茶のポットとサンドイッチ、ケーキはタルトタタン、チョコレートケーキ、色とりどりのマカロン、ラズベリーケーキだ。


サラがお茶を淹れてくれる。3人で食べたかったのに気を利かせて「それでは失礼します」と言って退出してしまった。



「素敵な所を予約してくれてありがとう。思ったよりも疲れたみたい。甘いものが美味しそう。頂きましょうか」


「はい、食べましょう。疲れたのですか?申しわけありません。エレン様に喜んでいただくのが何よりの喜びなのに失敗しましたか?」


急にしゅんとした顔になるのがたまらなく可愛い。どうしたのかしら、胸がどきどきする。私ちょろすぎない?慌てて紅茶を飲んだ。


「お願いしたのは私だもの、ルカが気にすることではないわ。前から砂浜を歩くことに憧れていたの。念願が叶ったの。嬉しいんだけど思ったよりも大変だったなあって思っただけよ」


「足元が安定していないので疲れましたね。抱っこすれば良かったですね」


ルカの真面目な言葉に、かあっと頬に熱を持ったのが分かった。


「っ!そんなに甘やかしたら駄目よ」


「エレン様を甘やかすのが昔からの俺の夢でした」


(……何て可愛いことを言うのかしら!心臓が持たないじゃない!)



 夕食後部屋で2人きりでソファーに座っていた。

ワインを頂きルカに凭れ頭を肩に乗せた。安心していられる相手がいるってなんて嬉しいものだろう。

大きな窓の向こうには夜の海が見える。

満天の月明かりが波に反射してキラキラと輝いてとても綺麗だ。

手を繋がれ愛おしそうに髪に口づけを落とされた。ドクンと胸の鼓動がまた大きく高鳴った。




 あと半年経てばルカと結婚式を挙げ爵位を授かり新しい生活が始まる。

あの時地獄を見たと思ったけど、あれが幸福の始まりだった。感謝なんてしないけど。


神様これから可愛くて誠実で格好いい男と一緒に人生を歩んでいきます。

どうかお手柔らかにお願いしますね。


繋がれた手の熱さを心地よく感じながら、私は静かに祈りを捧げた。


ここまで読んでくださりありがとうございました!とても感謝しています。ルカサイドの番外編追加しました。読んでいただけると嬉しいです。よろしくお願いします。

次作「初夜に例のセリフを言われたので言い負かしてみました」は3話の短編です。良かったら読んでやってください。

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