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エレン・ブライスは婚約者を切り捨てる  作者: もも


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12/15

12ルカのプロポーズ

 目の前には黄金色のスープ。

海老と白身魚のクネル、蟹のビスク、海老のグラタンが美しく並んでいる。エレンの前には軽い白ワイン。ルカは馬に乗るので紅茶だ。


「美味しそうね。早く食べましょう」


「食べ終えたらお話があるのですが、よろしいでしょうか?」


「良いわよ」


お嬢様がご機嫌だ。




とても美味しい料理を食べデザートと紅茶が運ばれてきた頃ルカが真剣な面持ちで話し始めた。


「お嬢様、釣り書が山のように来ているのは重々承しております。私をその候補の中に入れてくださいませんか?」

突然の言葉に私は息を飲んだ。


「決して裏切らないと誓います。もし断られても護衛を外れるようなことはしません」


「へっ!?あ、ごめんなさい。変な声が出てしまったわ。ルカをそういう対象に見たことがなくて。ルカは良いの?私が相手で」


「お慕いしております」


「お祖父様に言われたからではないの?釣り書の中に断れないものがあるかもしれないから、守れと言われたとか……」


「確かに言われましたが……。違います。私は昔からお嬢様のことが好きなのです。婚約が決まった時、諦めようとしたのですが出来ませんでした。想いに蓋をしてこのまま生涯お守りするつもりでした。でも今チャンスがあるのなら掴み取りたいのです。私ならあなたを泣かせませんし幸せに出来ます」


そう言ったルカの顔は真っ赤だ。


けれどよく見ると顔立ちがかなり整っているし正直好みのタイプだ。護衛なので身体は鍛えられている。剣の腕もある。

執務も出来るし多分だけど裏の仕事もできる。それに加護の秘密を知っている。なにより信頼出来る。

これ以上の相手はいないのではないかしら。


「良いわ。婚約しましょう」


「えっ?良いのですか?」

ルカが驚いたように目を見開く。


「知っている通り私は危害を加えられる条件が沢山あるわ。いくら有益だからといって閉じ込められる結婚はしたくないの。ルカなら今のままの生活が出来るでしょう?」


「それはもちろんです。全力でお守りします」


「じゃあ決まりね。私もルカを裏切らないわ。でも本当に覚悟はあるの?先見で知られたくないことを見られるかもしれないのよ。気味が悪くない?」


「いつも正しいことをしているとは言えないかもしれませんが、お嬢様に見られて恥ずかしいことはいたしません」

ルカの頼もしい言葉に私は悪戯っぽく微笑んだ。


「それなら大丈夫かしら。よろしくね婚約者さん」


「こちらこそ、これから全力で毎日口説きますのでよろしくお願いします」


「婚約したんだからお嬢様じゃなくてエレンと呼んでくれないかしら?」


「……エ、エレン様」


「それで口説けるの?」


私はぎこちないルカの様子を見て微笑ましくなり、彼は自分が情けなくなったのか苦笑いを浮かべた。


「婚約者を護衛のままにしておくわけにはいかないわね」


「えっ?!側を離れるのは嫌です」

ルカがぐっと身体を近づけて言い募ってきた。


(えっ?なにこれ可愛い!端正な顔が視界を埋め尽くすようにドアップになったわ。これが口説くってことなの?)


「ルカ私が言っているのは、対外的立場をどうにかしなくてはならないということよ」

胸が激しくどきどきしているのを取り繕いながら、私はなんとか毅然とした態度をとってそう返した。


「実は大旦那様から、婚約が纏まれば後継がいなくて困っている伯爵の地位を買ったのでエレン様にどうかという話をいただいております」


「伯爵位を買ったの?お祖父様が?」

驚く私にルカは静かに頷いた。


「大旦那様はエレン様のこれまでの活躍を見るに、平民の立場のままではこの先やっていくのが難しいだろうと心を痛めておられました。

そんな折お知り合いの老伯爵が1人でやっていくのに限界を感じて、引退したいと言っているのを耳にされたそうです」


「なるほどね。平民では圧力をかけられれば貴族に逆らうのは難しいものね。先見の力があるのはお祖父様かもしれないわ」


やはりお祖父様は尊敬に値する方だ。

これで全ての障害が消え去った。


「ごちそうさまでした。とても美味しかったわ。これからお祖父様達に報告に行きましょう」


私は席を立ち、にっこり笑ってまだ少し耳を赤くしているルカに告げた。

読んでいただきありがとうございました。誤字報告ありがとうございました。

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