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田中 ― One-Cut-Story ―  作者: MMPP.K
8cp

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72cs 「……メモ帳」

 Google Docsは最強だ。


 仕事なら、たぶん一択だ。


 WindowsでもAndroidでも使える。

 MicrosoftともAppleとも仲がいい。

 共有も保存もできる。

 提出物だって作れる。


「そりゃ、強い」


 そう言って、うなずいた。


 小説となると違う。

 まったく、お話にならない。


 Google Docsを開く。


 白いページ。

 整った余白。


 仕事の記憶まで一緒に起動する。


 報告書。

 資料。

 提出物。


「……あぁ……ちがう」


 小説は、文書を作るものではない。

 遊ぶものである。


 メモ帳は、いい。

 Windowsのメモ帳。


 何もない。

 タイトルもない。

 見出しもない。

 フォルダもない。


「素晴らしい」


 片づける場所すら用意されていない。

 ただ、文字がある。

 上から下へ、延々と書いていける。

 書式もない。

 文章を書く以外のことを考えなくていい。


「なんて潔い」


 Google Keepも使う。

 思いつきを捕まえるには便利だ。


 Nolaも使った。

 小説を書くなら、あれほど親切なものもない。


「メモ帳が好きだ」


 ただし、自動共有はない。

 パソコンで書いたものを、スマホで続きを書きたい。


 メモ帳は、そこだけ頑固。

 人間関係に興味がない。


「そこは似なくていいのに!?」


 思わず画面を見つめる。


「……いや、やっぱ、似なくていいのに」


 Simplenote、最強説が浮上する。


 パソコンで開く。

 スマホで開く。


「おお!」


 同じ文章が、ちゃんといる。


 フォルダはいらない。

 カテゴリーもいらない。


 タイトルの頭にB-011と付ければ、複数あっても並ぶ。


 執筆中のものだけあればいい。

 完成したら移せばいい。

 原文はtxtで残せばいい。


 必要なのは、高機能な執筆環境ではない。


 自動で共有してくれるメモ帳なのだ。


 Simplenoteを開く。

 カーソルが点滅している。

 椅子に座り直す。

 指をキーボードに置く。


「よし、遊ぶぞ」


 これでいい。

 これがいい。


「だから、最強!」


 ……メモ帳が自動共有してくれたら、それでもいいけど。

 


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