66cs 「昼食の風景」
「食事中くらいスマホ置いたらどうや」
そう言いながら箸を置いた。
顔も上げずに答える。
「また始まった」
「またやない。飯は飯や。スマホはあとで見たらええ」
「会社で昼飯食いながらメール見てるんやろ」
「それは仕事や」
「都合いいなあ」
少し黙った。
確かにその通りだった。
「せやな。あれは良うない」
「え?」
「仕事やから許されるわけやない。ほんまは食事中は見ん方がええと思う」
「じゃあなんで見るん?」
「怖いからや」
笑った。
「何それ」
「返事遅れたら、トラブル起きてるかも、待ってるかも……そう思うと見てしまう」
味噌汁をすすった。
「情けない話や」
そっとスマホを伏せた。
それから二人は少しだけ、何気ない話をした。
十分ほどで食事は終わった。
「ごちそうさま」
二階へ上がっていく。
「おう」
返事を返して、食器を流しに運び、テーブルを拭き始めた。
そのとき、椅子の下に紙が落ちているのに気づいた。
学校の進路調査票。
「あいつ、また落としていきよったな」
拾い上げる。
表紙には、『保護者記入欄あり』と書かれていた。
苦笑して、紙をめくる。
質問欄が目に入った。
『あなたが尊敬する人』
どうせ誰か有名人かなんかやろ。
だが、記入欄を見て笑みが消えた。
『父』
『父はよく失敗する。』
顔をしかめた。
余計なお世話や。
『父は自分でもダメな人間やと言う。』
思わず苦笑する。
確かに言った覚えはある。
何度もある。
そして最後の一文。
『でも、間違ったと思ったときは言い訳せずに認める。』
『だから信用できる。』
しばらく動けなかった。
調査票を閉じた。
「買いかぶりや」
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「遊びに来られることがございましたら……お立ち寄りいただけたら幸いです」




