64/76
63cs 「温めてただけ」
休日の昼下がり。
テレビの裏から、ようやく体を起こした。
指先にはうっすら黒い埃。
「直った」
ソファでスマホを見ていた相手が顔を上げる。
画面にはちゃんと映像が流れている。
「え、映るやん。すご」
少し得意げに、ドライバーをくるりと回す。
「基板の接触不良かな」
「ようわからんけど助かる」
そう言って笑う。
「エアコンも掃除しといた」
今度はちゃんと振り返った。
「珍しく頼れるやん」
鼻を鳴らしながら、洗面所の方をちらっと見る。
「で、洗濯終わってた?」
返事が一拍遅れる。
「終わってへんよ」
眉が寄る。
「なんで?」
呆れた顔で洗濯機の表示を指差す。
“乾燥 45分”
「これだけ押してたみたいね」
「回ってたで?」
「温めてただけだよ」
その横の食洗機を開ける。
湯気ひとつない、乾いた皿が並んでいる。
「こっちも動かんかったし」
洗剤ケースを、カチ、と開ける。
空っぽだった。
「入れてなかったね」
しばらく黙って、テレビの綺麗な画面を見る。
それから小さく首をかしげた。
「……機械って難しいな」




