55cs 「カウント外」
朝の会議は、少し苦手だ。
自分だけ、少し遅れて席につく。
何もしていない。
だから、問題ないはずだった。
「おはようございます」と言う。
少しだけ声を張る。
……誰も、顔を上げない。
一拍おいて、もう一度言う。
口は動いた。
喉も震えた。
でも、何も変わらない。
聞こえていないのか、
聞こえているのか、分からない。
上着を脱いで、椅子に掛ける。
布が触れる感触だけが残る。
音は、しない。
会議が始まる。
議題には、自分の担当が含まれている。
名前は呼ばれない。
資料は、なぜか進んでいく。
ページをめくる音が揃う。
自分の手だけ、少し遅れる。
遅れているのか、
最初から違うのか、分からない。
一度、口を開く。
「それ、――」
音になったはずの言葉が、
途中で消える。
誰も、止まらない。
誰かが発言する。
別の誰かが、頷く。
その間に、自分の席がある。
……はずだった。
視線を上げる。
一度も、目が合っていないことに気づく。
さっきから、ではなく、最初から。
ペンを動かす。
紙に触れている。
線が引かれている感触だけがある。
紙には、何も残っていない。
「以上です」
会議が終わる。
椅子が引かれる。
足音が重なる。
少しだけ遅れて、立ち上がる。
誰とも、目が合わない。
ドアが開く。
人が出ていく。
一人、また一人。
最後の一人が出ていく。
ドアが閉まり……誰もいない。
椅子が、一脚少ない。




