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田中 ― One-Cut-Story ―  作者: MMPP.K
6cp

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54cs 「ときめきToday」

 信号待ち。

 向かい側の人と、目が合った。


 終わり。

 ――いや、始まり。


 一瞬だったのに、なぜか分かる。

 あ、この人、やさしい。

 絶対、コンビニで温めますかって聞くタイプ。しかも自然に。


 青になり、歩き出す。

 すれ違う。

 あ、今の香り、たぶん石けん系。

 いや違う、柔軟剤かも。

 いや、もうどっちでもいい。清潔感は確定。


 三歩で考える。

 名字どうしよう。

 こっちが変える?いやでも響き的に……。

 子どもは二人かな。いや三人でもいける気がする。

 あの人、運動できそうやし。


 五歩で確信する。

 これはもう、運命。


 七歩で気づく。

 名前、知らん。


 十歩で決断する。

 まあ、あとで知ればいいか。

 振り返る。いない。


「あれ、早ない?」


 さっきまで存在していた未来が、きれいに消えている。


 そのとき。

 ふと、隣を歩いてる幼稚園児と目が合う。

 小さいリュック。

 ちょっとずれてる帽子。

 なぜか、やたら堂々とした歩き方。


「あっ」

 ――二十年後。


 スーツ姿で改札を抜けてくる。

 少し疲れてる顔で、それでも私を見つけて、ちょっとだけ笑う。

「今日、遅くなるって言ったやん」

「早く会いたくて……」

 そんな会話をしながら、同じ方向に歩いていく。


(……いや、さすがに早すぎるか。)


 ふと、落ちているお米券を拾う。


「あ、それ私のです」


 振り返ると、さっきの人だった。


 その一瞬、さっきまでの“未来の妄想”が頭をよぎる。

 スーツ姿で改札、少し疲れた顔、並んで歩く帰り道。


 ……でもそれは、もうどこにもない。


「……じゃあ、未来の分も持っときます?」


 そう言って、笑った。

 


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