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田中 ― One-Cut-Story ―  作者: MMPP.K
5cp

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43cs 「¥」

 そこにあるはずのキーに、指を置く。


 押す。

 出てこない。


 もう一度、押す。


 ――一文字、消える。


 違う。


 少しだけ位置をずらす。

 押す。


 ――また、消える。


 ガッデム。


 打ち直す。

 同じ場所を、押す。


 ――消える。


 さっきまでの文が、少し短くなる。


 試しに、別の記号を打つ。

 出ている。


 そのはずなのに……さっきと同じに見えない。


 もう一度、打つ。

 同じものが並ぶ。


 それでも、どこかが違う。

 どこまでが合っていたのか、分からなくなる。


 手を止める。

 画面を見ているのに、どこが変わったのか、思い出せない。


 もう一度、押す。


 ――少しだけ、足りなくなる。


 最初に何を書いていたのか、分からなくなる。


 それでも、指は同じ場所を探している。


 そこにあるはずの、キーを。

 


これは、私がアメリカで働いていたときのことだ。


パソコンを変えたときだったか、キーボードを買い替えたときだったか。


はっきりとは覚えていない。

ただ、そのとき確かに思った。


なんでやねん、と。


押しているはずのキーが、思った通りに出てこない。

最初はそれだけのことでした。


――そんな瞬間の話です。


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