第60話 家(4)
「えーっと…リリファ?」
「何よ…」
(涙目で振り向かれると罪悪感が強いんだが…)
「そもそも、どうしてここに住んでるんだ?」
「お金がないのよ!!」
「…は?」
「だから、お金がないの!」
「…やっぱり衛兵に…」
「ごめんなさい、あたしが悪かったです…」
再びしゅんとしてしまう。
「はぁ…それで?なんで金がないんだ?」
「…木の実が売れなくなっちゃって…」
「木の実?」
「木の実とかを売って生活してたんだけど、売れなくなっちゃって…」
「いや…なら、他の方法があるだろ?魔物を狩るとか。」
「…あんた、妖精族に会うのは初めて?」
「ああ。そうだけど?」
「妖精族は成体、あたしくらいの大きさになって初めて《妖精魔法》を使えるようになるのよ。」
「妖精魔法?」
「ええ。だから、この中だとあたししか使えないの。」
答えが返ってこなかったので、ヘルプに尋ねる。
(妖精魔法ってなんだ?)
「妖精族の種族魔法です。植物の健康状態がわかったり、自由に成長させたりなどが可能です。」
(妖精族にしか使えないのか。)
納得したところで、リリファとの会話に戻る。
「というか、人数の割に成体が少なすぎだろ?リリファの旦那さんはどこにいるんだよ?」
「え?」
「え?」
なんか、更に泣きそうになっている。
「…あたし、そんな歳に見えるの…?」
「え?いや…」
「まだ恋人だって出来たことないのに…」
遂に頰を涙が伝った。
「ちょっと、ご主人様?そんなこと言ったら、駄目じゃない。」
「そうですよ。可哀想じゃないですか。」
「え?俺が悪いのか?…悪いのか。」
2人の目が少し鋭くなった。
「えっと、リリファ、なんかごめんな?俺じゃ、どのくらいの歳かわからないんだ。ただ、リリファの子供かと思って…」
頰を伝う涙の量が増えた。
「ぐすっ…」
「俺が悪かったからとりあえず泣き止んでくれ…」
話が進まないので泣き止むまで待つことにした。
「もう大丈夫か?」
「うん…ごめん。」
「いや、いいんだ。元はと言えば、俺が悪かったんだしな。それで、話は戻るけど、ここには他の成体はいないのか?」
「うん。あたしだけ。」
「元々は居たんだよな?」
「うん。元々森で産まれてそこには住んでたんだけど、長老たちが、老後くらいは自由にさせろ!って言って、他の成体を連れて出て行っちゃって、残ったあたし達が幼生の子達を連れて、散らばったってわけ。」
(なんていうか…)
「…お疲れ?」
「ほんとよ!」
リリファが深いため息をつく。
「だから、お願い!」
「そうは言ってもな…」
「駄目なの?」
「うーん…」
(甘やかすのも違うと思うしな…)
「あの…何か役に立つこととかないんですか?」
レイラがリリファに尋ねる。
「えっと、あっ、そうだ!畑とか作らない?」
「畑ですか?」
レイラがこちらを振り向く。
「まぁ、作ってもいいんじゃないか?」
「なら、あたし達に任せてよ!」
リリファが自信満々に言う。
「ご主人様、妖精族の方なら作物も美味しく育つと思います。ですから、その…」
レイラの必死さが伝わってきて、思わず軽く笑ってしまう。
「ふっ、レイラは優しいな。」
髪の毛を梳くように頭を撫でる。
「じゃあ、リリファ達が住む代わりに、畑を任せてもいいか?」
「うん、ありがと。」
言いながらリリファが右手を差し出してきたので、握手に応じる。
「どこに住んでたんだ?見た感じだと、家とかないけど…」
「木をくり抜いて住んでたのよ。」
「そうだったのか…でも…」
「わかってるわ、家を建てるには邪魔だもの。だから、厚かましいかもしれない…いや、厚かましいお願いだけど、あたし達も家に住まわせてくれないかしら?」
「ああ。2人もそれでいいか?」
「ええ。」
「もちろんです。」
「じゃあ、これからよろしくな。」
「え?いや、その前にあんたの名前は?」
「ああ、言ってなかったな。俺はタケルだ。こっちがルティで、こっちがレイラだ。」
「よろしくね。」
「よろしくお願います。」
「うん。こちらこそ。タケルにルティにレイラね。」
「改めてよろしくな。」
「うん。」




