第21話 奴隷(2)
朝起きた俺は朝食を食べるとすぐに服屋へ向かった。
「昨日預けた服はどれくらいになるかわかったか?」
昨日の店員に尋ねる。
「はい!終わっています!」
なぜかとてもテンションが高かった。
「…テンション高くないか?」
まだ朝だっていうのに。
「高くもなりますよ!!」
(うわ…余計うるさく…)
「昨日預かった服、ズボン、下着、全てが違う製法で作られているではないですか!しかも見たこともない製法で!これが落ち着いて入られますか!!」
「あー、わかった、わかった。」
(違う製法って縫い方のことか?)
少し気になったが、話を進める。
「それで?どのくらいの値段になったんだ?昨日は紋貨5枚はかたいって言ってただろ?」
「はい。当店で買い取らせて頂けるなら、
光貨1枚と紋貨8枚で買い取らせて頂きます。」
「…それはまた…結構上がったな。」
「先程言った通り、製法が違っていたので。」
(俺は服にはあまり頓着しないから、昨日の服も安物だぞ…それがこっちにきたら元の世界で言えば約180万…もっと持って来ればよかったな…まぁ、今更どうにもできないが。)
「まぁ、いい。じゃあ買い取ってくれ。」
「はい。ありがとうございます!」
そういうとすぐに代金を持ってきてくれた。
「では、光貨1枚と紋貨8枚になります。」
「ああ、確認した。」
そう言って俺は店から出ようとする。
「あのー…」
店員から話しかけられる。
「なんだ?」
「他には持っておられないでしょうか?もし持っておられるならそちらもお売りいただけませんか?もちろん少しなら代金を上乗せさせていただきます。」
「すまないが、昨日ので全部だ。」
「そうですか。…またのお越しをお待ちしております。」
「ああ。」
今度こそ店を出て、そのまま奴隷店へ向かう。
ちょうどモーリスが扉を開けるところだった。
「ようこそおいでくださいました。さぁ、どうぞ中へ。」
「早かったか?」
「いえいえ、お客様を追い返すなんてとんでもない。
お客様のためなら深夜でも開店いたしますよ。」
媚び諂うような顔で言う。
「そうか。で、昨日の2人は?」
「はい、残しております。少々お待ちください。」
そう言い残し、部屋を出て行ったがすぐに二人を連れて戻ってくる。
「こちらでよろしかったですね?」
「ああ。紋貨3枚と金貨5枚だったな。」
そういいつつ硬貨を渡そうとする。
「いえ、少しお待ちください。」
「…なんだ?」
少し威圧するような声を出してしまう。
(もしかして、今更高くなったとは言わないよな。)
だが、モーリスは気にせずに話し続ける。
「昨日、奴隷の相場がわからないと仰っていましたが、奴隷に対する規則はご存知でしょうか?」
「知らないな。説明してくれ。」
「はい。まず、奴隷を故意に殺してはいけません。もし、そのような場合には奴隷の主人も処刑されます。そして、最低限の食事を与えてください。1日1回与えれば充分です。3日以上食事を与えていないことが判明すると、解約させられます。」
「以上か?」
(今の条件なら問題ないだろう。)
「はい。代金は…ちょうどですね。では、契約をさせていただきます。これをどうぞ。」
そう言って針のようなものを渡してくる。
「奴隷契約には主人となる人物の血が必要です。血をその奴隷たちの右手に垂らしてください。」
彼女たちの右手を見ると紋章が描かれている。
「これの上にか?」
紋章を指差しながら尋ねる。
「はい。それは奴隷紋と言って、奴隷契約に用いられます。また、それは契約すると見えなくなりますのでご安心ください。」
その言葉を聞き、俺は血を垂らす。
するとモーリスの言葉通り、紋章が消えていった。
「はい。これで契約は終了です。他にもご覧になりますか?」
「いや、いい。」
「かしこまりました。またのお越しをお待ちしております。」
外に出たところで気づく。
2人がきている服は布地が少なくかなり目立つ。
「服屋に行くぞ。」
そう言って2人の手を掴み、連れて行く。
「あの…」
犯罪奴隷の方が話しかけてくる。
「なんだ?」
「その…これから…よろしく…お願いします…ご主人様。」
「…ああ。」
かなり小さい声だったが、聞き取ることができた。
そして服屋に入り、女性の店員に話しかける。
「こいつらに適当に服を見繕ってくれ。」
「かしこまりました。」
そう行って2人を連れて行く。
数分ですぐに戻ってきた。
「2人合わせて金貨3枚になります。」
「ああ。」
代金を渡し、宿に戻る。
「今日の分だ。」
そう伝え、女将に銀貨3枚と銅貨5枚をわたす。
「2部屋かい?」
「ああ。」
「その2人奴隷だろう?」
後ろの2人を見ながら言う。
「そうだが?」
「あんたには申し訳ないが、以前に客の奴隷が部屋の物を壊してね。奴隷のみで泊まる部屋は断ってるんだよ。」
「そうか。なら、3つベッドがある部屋か、3人で寝れるベッドがある部屋にしてくれ。」
「はいよ。3人で寝れるベッドのある部屋ね。部屋代銀貨1枚と銅貨5枚、飯代を足して銀貨3枚だね。」
そう言って銅貨5枚を渡してくる。
「その部屋はどこだ?」
「その通路を進んで一番奥の右側の部屋だよ。106号室だ。」
「わかった。」
2人を連れて部屋に入る。
ベッドを確認したが、3人でも寝れるだろう。
それを確認し、2人に向き直る。
「じゃあ、まず自己紹介をして貰うぞ。俺はタケルだ。」
こっちの世界では名字は少ないようなので、名前だけ伝える。
「私は…レイラ…です…」
(声が小さい子だな。)
「私は、ルティよ。」
「レイラにルティだな。それで早速なんだが…レイラ?」
「はい…なんでしょうか…?」
怯えながら尋ねてくる。
「なんで犯罪奴隷に?いやだったら言わなくていいが。」
「いえ…ご主人様の…命令ですので…私は…
村にきた貴族を…毒で殺しました…」
「へぇ。どうして殺したんだ?」
気の強くなさそうな子なのに殺したと聞いて不思議に思った。
「村のみんなが…税を払えって…苦しんでいて…子どもはみんな…その貴族に…連れてかれて…私も連れてかれそうになって…抵抗しました…」
「ふーん。こう言っては何だが、ありきたりだな。
じゃあ次は…」
「えっ…あの…いいんですか?」
レイラは驚いた顔のまま尋ねてくる。
「ん?なにがだ?」
「私…人を殺して…」
「あー、別にいいんじゃないか?そんな貴族なら。別に無差別に殺したいわけじゃないだろ?」
そう言うと、レイラは涙を浮かべていた。
「…ありがとう…こざいます…」
掠れた声でそう言った。
「ああ、これからよろしく頼む。」
「はい!…よろしく…お願い…します…」
最初の返事で恥ずかしくなったのか、
尻すぼみに声が小さくなっていった。
「じゃあ、次はルティだな。」
「ええ。何でも質問してちょうだい。」
「この称号の『元魔王の娘』って本当か?」
中途半端です。
誤字・脱字がありましたら教えてくださると幸いです。