第18話 資金集め(1)
「…」
(今日からフェルはいないのか…)
俺は階段を下りる。
そこには女将がいるだけだった。
「ああ、降りてきたのかい?ちょっと待ってな。」
そう言うと厨房へ向かいすぐに朝食を持ってきてくれた。
他の宿泊客はまだ寝ているんだろう。
俺の朝食を食べる音と女将が料理をしている音だけが響いていた。
「…」
「…あの子はどうしたんだい?」
唐突に女将は口を開いた。
「朝食も食べずに出ていったけど…」
「…パーティを組むそうだ。」
俺は朝食を食べ続ける。
「そうかい。」
女将も察したようだ。
「寂しいのかい?」
「…」
その問いに俺は答えず、食器を渡し、外へ出た。
「…どうするか。」
俺は何も考えずに歩き出す。
今日は魔物を狩る気分にはならなかった。
公園のベンチに座り、今までのことを振り返る。
(そういえば、俺って逃げてることになるんだよな?)
森を挟んだ場所にあるのだ。
もうすでに逃げ出したことはわかっているだろう。
(そうなると、俺もどこかに移動しなきゃな…)
そう考えていた時に今更ながら気がついた。
(そういえばこの服目立つんじゃ…)
俺の服はこの世界にある服ではない。
(…こう言う服って大抵高く売れるよな。)
売る前に安い服でも買っておこうと考える。
(っていうか、身の回りのこと全然できたないんだな…)
それどころではなかったとも言える、と自分自身に言い訳をする。
武器や防具、魔物を狩るための道具や知識も足りてないだろう。
それを考え、気分が下がっていった。
そしてベンチから立ち上がり、公園から出て行こうとしたところで、目の前を馬車が通り過ぎた。
その馬車を見ると、荷台には布切れのような服を着た者たちが乗せられていた。
(奴隷商ってところか。…それもいいかもしれないな。)
女将に言われた通り、俺は寂しさを感じていた。
今まではフェルがいたことで忘れていたに過ぎなかった。
(…買うか。)
そう考えたところで、簡単なことに気づく。
(奴隷を買う金なんてないな。)
現在の全財産は銀貨50枚と銅貨5枚だ。
いくら何でもこれだけでは足りないだろう。
(とりあえず金貨20枚くらいは必要か?まあ、足りなくても、確認すればいいだろう。)
金貨20枚を貯めたら奴隷商へ行くことを決めた。
そこからの行動は早かった。
ギルドへ向かい、依頼を探す。
(今までに倒したのはスライムとゴブリン、オーク、
オーガの4種類だけだな。とりあえずこの4種類を狩ってまわるとするか。)
スライム5匹の討伐、ゴブリン10匹の討伐、オーク3匹の討伐、オーガ1匹の討伐の4つの依頼と、難易度がゴブリンと同じだったコボルト5匹の討伐の依頼が書かれた紙をそれぞれの1枚ずつとる。
依頼の討伐数を超えていても買い取ってくれるそうだ。
それぞれの討伐を確認する部位はスライムが魔石、ゴブリンが耳、オークが目、オーガが角、コボルトが鼻だそうだ。
耳などは片方でいいそうだ。
それを確認し、俺はすぐに魔物狩りへ向かった。
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