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玄武さまと黒の花嫁  作者: 夜兎
2章 玄武さまの溺愛
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7

お久しぶりです。


 一通り話を聞かされた鈴音は、大きなため息をついた。そのため息に、玄武が大きく肩を揺らしたのに気がついたが気にしない。気にならない。



「身勝手ですね」

「それは……自覚している。残酷な行動をしているとも」

「私から元の世界を取り上げ、家族を取り上げて。貴方は希望までも取り上げようとしていた。私も身勝手に言わせて貰うとすれば、貴方の孤独なんて知ったこっちゃない。私には関係ない」



 玄武が絶望したように鈴音を見る。母親に見捨てられた、子供のような目で。



(こんな目をするから……あんな話をするから……この人を見捨てられなくなったじゃない)



 音が鳴るように力を込めて玄武の頬を挟む。

 視線を逸らさないように、上から覗き込む様な形で固定した。



「でも、この数日過ごしたことで、私は貴方を見捨てることが出来なくなってしまいました。話を聞いた今なら尚更。このまま元の世界に帰っても、罪悪感を感じてしまうので。仕方がないからまだ今は貴方の側に居てあげます」



 これが、鈴音の最大限の譲歩だ。



「私がこの世界の事を、貴方の事を正しく理解するまで。元の世界に帰る方法が見つかるまで。私が貴方の側を離れる事はありません。例え、心から恋する人が見つかっても、側にいることを約束します」



 子供のようなこの人を、見捨てることなど、鈴音にはとっくに出来なくなってしまっていたのだ。

 絶望に染まっていた玄武の瞳に、希望の光が宿ったのが見えて、鈴音は釘を刺す。

 


「あ、だからといって私に知識を与えないなんてことしたら出ていきますからね? 私に生き抜く術がないと思ったら大間違いですからね?」



 これでも鈴音には奥の手がある。人任せではあるし完全に信用出来る方法でもないので一応、とはついてしまうが。

 あながちハッタリでもない。


 固定されたまま顔が動かせない所為か、玄武の視線がオロオロと泳いでいるのがよく分かる。

 困惑しているのが手にとってわかる。



(なんか……可愛い……)



 女性には、子供っぽい男性に惹かれてしまう何かがあるのかもしれない。


 男性にしては少し長めの、綺麗な漆黒の髪に手を差し込む。そっと、掻き上げるようにして撫でると、玄武が気持ちよさそうに目を細めた。



「私が出来るのは、この提案だけです。私に、貴方を信じさせて下さい。ね? 玄武さま」



 意識して優しい、柔らかい声を出す。

 不自然なほど優しい鈴音の声音に何かを感じたのか、玄武は怯えの色を浮かべる。それもほんの一瞬。子供の様な感情はなりを潜め、きりっと鈴音の手を押し上げる。

 

 今まで鈴音が見た、大人の男性とも、子供とも違う。力強い視線に、ビクリと肩が跳ね、思わず手を引っ込める。正確には引っ込めようとした、だが。

 揺れた鈴音の手首を玄武はたやすく掴み、自らの頬へ引っ張った。


 視線には力を込めたままで、すり……と頬を擦り寄せる。

 そして、下から見上げながらうっとりと笑った。



「望むところ、だ」



 獰猛な獣の様な視線と笑みに、背筋に悪寒が走ったのは、動物としての本能だったのかもしれない。

 限りなく危機感を感じたのは確かだ。



(…………選択肢、誤ったかも)



 後悔した所で後の祭りである。

大丈夫です、生きてます。

かなり間が空いての更新になりました。


そしていつの間にかじわじわ増えていたブックマーク……

ありがたいとしか言いようがないです。

いつもありがとうございます。

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