立候補したものの・・・
勢いよく立候補を決めたはいいものの、先生から受け取った申し込み用紙にはぎっしりと記入欄があった。
名前や学年だけならまだしも、公約や選挙に立候補する理由までご丁寧に大きな空欄が取ってあり記入しなければならない。
「陽斗!助けてくれ!一生のお願いだ!」
放課後の誰も居ない教室で選挙の応援演説を務めることになった陽斗と作戦会議をしていた。
作戦会議と言っても、今日一日かけて申し込み用紙の必要事項を記入しようとしていたのだが中々空白を埋めることができず陽斗に助けを求めている。
「ったくしゃ〜ね〜な〜」
気だるげそうにしながらペンと紙を取り出して何か書き走る陽斗。そもそも事の発端は貴方なのだからしょうがないも何も全面的に協力しろと思ったが、それを言うと協力してくれそうにないのでそっと心の中にしまいこむ。
「こう言うのは真剣にやろうとするから難しいんだよ。一真は結局生徒の不満を改善したいって薄っぺらい理由で立候補するんだから難しく考える必要はない」
「薄っぺらい言うな」
スササササ〜とペンがまるでゲレンデを駆け抜けるスキー選手のように滑らかに走る。そして完成した一枚の紙をコチラに見せてくる。
"生徒の意見を反映出来る生徒会執行部"
AIに要約させたかのように綺麗にまとめられた一文だ。
「要はこう言うことだろ。変に生徒の思いとかそこら辺まで考え始めるとキリがないからここに軸を絞れば簡単なはずだ」
納得した一真はとりあえずその文章を軸に文章を組み立てる。すると前よりもスラスラと言葉が出てきた。
「そもそも他の立候補者だって大したこと書かないし、そもそも生徒もそんな公約なんて見てないんだからここは手を抜いて大丈夫だ」
「じゃあ、大事なのは?」
「演説だ。本気で勝ちたいなら演説で動かすしかない。場の空気を動かすんだ」
演説の重要性を演説する陽斗の顔はどこかイキイキとしていた。こいつ、コンサルとか向いてそうだな。
「仮に浦木姫乃に投票しようとしている生徒が多かったとして、それは二年生の話だ。一年生の浮遊票を演説で集めちまえばアイツなんてイチコロだ」
別に浦木姫乃に対してなんの恨みもないし、そもそも接点すらないのだが気がつけば議題は浦木姫乃を仮想敵として進められていた。
「演説は明日指導するから、とりあえずそれ書いてしまえよ」
「う、うん」
立候補する一真より応援演説の陽斗の方が、どこか気合が入っているように感じる。応援演説って選挙前から本当の意味で応援してくれるのかと一真は勘違いしていた。
「それと、今日みんなから聞いた改善案で使えそうなの何個か書き出しといてくれ」
「分かった」
そう言ってメモ帳の端っこに記憶に残ってる範囲で言われたことを書き出す。
それを見た陽斗はウンウンと頷きながら中身を吟味する。
「生徒受けが良さそうなのは理不尽校則系だな。例えば年中膝掛けを使いたいってやつはネットでも取り上げられるほど有名な理不尽校則だ。これならこちら側も主張も通りやすいし万が一当選してしまった時でもなんとかなりそうだ」
「確かに言ったからには万が一当選したらやらないと行けないもんな」
「そう、だから変なことは言えない。自分がやると仮定して簡単そうなものを選べ。捏造でも良い」
こう言われ、追加で何個か案を書き出す。
「ツーブロック禁止とかは?」
「あ〜一応上げとくか。これも有名な理不尽校則だしこっちの言い分も通りやすい」
「あと授業でタブレット使うくせにスマホの使用が禁止とか」
「それはちょっと厳しいかもな。言いたい事は分かるが用途が違うから学校側の言いたいことも分からんでもない」
こうして色々意見を出し合いながら、最終的には絶妙にそれっぽい校則を生徒からの意見として捏造して議題に挙げることにした。
」




