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俗に言う出会いは最悪ってやつだ  作者: ルーラブ


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13/13

きっかけは些細なことから

相変わらず殺伐とした独特の雰囲気が一真達を出迎えた。


生徒会室は日当たりが良く、夕日がカーテンの隙間から差し込んできて部屋の中を明るく照らしていた。でもその光とは対照的なほど暗い顔で椅子に着席する。


結局、一真も姫乃もお互いの居ないところでは好き放題言うものの、いざこうして対面すればお互い借りてきた猫のように大人しくなる。


今日は日菜が予定があるとのことで顔を出さずに部屋には三人だけだ。そして三人とも俯いたまま今日も先生が来るのを待ち続ける。


前回と違い、時間通りに先生は来た。


皆、やる事は特になくスマホの画面を眺め続けているだけだったので、生徒会室の扉の開くガチャという音に一斉に振り向いた。


「お〜悪いな〜全員揃ってたか」


先生は生徒会室に入るなり、この殺伐とした空気を感じたようで場を和ますように少しだけテンションを上げて話し始める。


「荷物を運びたいから手伝ってくれ


先生は開口一番こう伝えた。


山下高校の生徒会室は新築校舎にある関係で様々な備品が揃っていない状態らしい。一真は勝手にシンプルな家具屋のようなテイストの現代風の造りなのかと思っていたのだが、単純に物が届いていないだけだった。


「職員室の隣の駐車場に届いているから手伝ってくれ」


先生のその一言で嫌な予感がした。駐車場に置かなければならないほど大きなものが届いている可能性が示唆されたからだ。


そして駐車場に行くと答えが鎮座していた。


「これ、運ぶんですか・・・階段で・・・」


絶望のあまり思わず倒置法で先生に尋ねる一真。そして先生はその問いに対してコクリと首を縦に振った。


「うわ〜でっけぇな〜」


まるで生まれて初めて東京スカイツリーを見た少年のように感嘆の声を漏らす陽斗。しかしそう思うのも無理はない。目の前に置かれているソファーは頑張れば四人ぐらい一気に座れそうなほどの大きさだ。


「とりあえず俺はこっちを持つからあとは二人で頼む」


先生は老体に鞭打ちながら(正確にはまだ老体というほどではないが)ソファーの端っこに手を掛ける。


その先生の姿を見て拒む事はできない。文句を言いながらも二人とも先生と反対側を持ち上げた。


「じゃあ浦木、先導を頼む」


私はどこを持てば良いのだろうとウロウロしていた姫に対して先生はそう指示した。


流石にこんなに重いものを女子に持たすわけにはいかない。


「じゃ、じゃあ行きましょう」


姫乃は申し訳なさを感じつつ先導を始める。


一気に持ち上げると声が漏れるほどに重かった。なんなら反対側から骨のバキバキと言う音が聞こえた気がしたがそれは気のせいだと思っておこう。


しかし意外にも三人で十分持ち運べてしまうのでこのまま生徒会室まで運ばなければならないことが確定してしまった。


「段差、気を付けてください」


時折姫乃の先導を挟みつつ、まずは校舎の中に運び込む。


普段ならこの場所から生徒会室までは2分程度で着くだろう。20mぐらい先に見える階段を3階まで登ってしまえばもう生徒会室が見えてくる。


しかしこの状況では、まるで砂漠で遭難して遠くに見えるオアシスを目指しているかのように途方もなく感じてしまう。


普段予習綽々なキャラの陽斗でさえ、顔面を歪めてうんこを踏ん張っているかのような表情をしている。


そしてなんとか階段まで辿り着いたが察していた通りここからがまた地獄だった。


一真は先に上の段に登り、先生が下から持ち上げ陽斗がそれをサポートするフォーメーションになったのだが、先ほどより腰の負荷が増して2段登るのが精一杯だ。


「ちょっと・・・休憩・・・」


階段を少し登ったところで一真が根を上げて休憩を挟むことにした。全員息を切らしているがソファーを不安定な階段の上に置いているので気が休まらない。


先導係の姫乃はというと、その様子を見ていてどうやら面白かったらしく半笑いの状態で「お疲れ〜」と労いの言葉をかけてきた。


最初は付いていた敬語も面白さでどこかに吹き飛んでしまったらしい。


このままいつまでも休んでいたかったが、先生から「そろそろ続けるぞ〜」と声が掛かったため再びソファーを持ち上げる。


一度地面に置いたものを再び持ち上げると言うのはかなりのエネルギーを使うらしく、先生の腰を心配していた一真はいつしか自分の腰を心配するようになっていた。


「ま・・・マジでヤバい・・・」


そんな声にならない悲鳴を漏らすが誰にも拾ってもらえずイッチニ!イッチニと言う掛け声と共に息を合わせて階段を登っていく。


男臭い掛け声に紛れて時折姫乃の可愛らしい声のイッチニと言う声が聞こえるのだけが唯一の癒しだった。


そしてなんとか踊り場を超えて2階に到着する頃には全員この世の終わりのような顔をしていた。


「先生・・・このソファーもうここに置いときましょうよ」


陽斗の軽口に対して


「そうするか・・・」


と先生からまさかの肯定の返事が返ってきた。どうやら先生はもう限界のようだ。


「はいはい運びますよ〜」


唯一まともだった姫乃のその掛け声で三人は3階に向けて再び歩みを進めさせられるのだった。


途中、「休憩・・・限界!」と言う一真のSOSに対しても


「じゃああと5段登ったら休憩しましょう」


とジムのトレーナーのようなスパルタ方式で姫乃にしばかれた結果、満身創痍ながらなんとか生徒会室まで運び込むことができた。






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