4-5
水曜から残る三日は駆け足に過ぎた。そうして半日勤務の土曜日の午前も、足早に流れて行く。
「来週からは雪路さんはいないのかぁ」
若い書記官は少し残念そうにそう言った。
「ま、そのうち気が向いたら、また戻って来て下さいね」
「ありがとうございます。そうします」
コクンと頷く雪路に、おや、と年配の書記官は笑う。
「鬼のいる鉱山ですが、お戻り頂けるので?」
それに思わず吹き出した。
「はは、鬼にも慣れてきたみたいなんで。もちろん、機会があれば是非戻って来ます」
「ほぉ、それは良かった」
年配の書記官は笑って白い髭を扱く。
「まぁ、何にしろ、同じ街の中にいることは変わりない。お戻りになる前でも、何かあれば声掛けて下さいよ」
「うん、そうします」
ありがたいなぁと素直に感謝して頷いて、何気なく時計に目をやった雪路は、フッと思い出す。
「ああ、そうだ、鬼と言えば」
「ん?」
怪訝そうにする書記官二人に、雪路はぽんと手を打つ。
「あの、私、ちょっと採掘場で待ち合わせ?してて」
そういえば昼前にそこにいろと、誠に言われていたのだった。
服は既に軍服なので、さて、いったい何があるやらと、首を傾げながら雪路は椅子から立ち上がる。
「待ち合わせ?誰とです?」
若い書記官が怪訝そうに振り向くので、雪路も顔に戸惑いを浮かべたまま、ええ、と答えた。
「噂の藤埜大尉、なんですけどね……」




