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「Hi brother!なにを見てるんだい?」
横から伸びて来た派手な白いスーツの腕が、目の前にあった用紙を抜き取っていった。
「おっ、新しい子の申請書?かわいい?あ、名前からして東洋人だ」
「エリック・バトラー」
カン、と軽く机を叩いて厳しい声を出す。
「ここは俺の仕事場だ。貴様、自分の鉱山を離れて何をしている?」
「おっと、今日は日曜日だよ?カミサマだって休む日だって、紀元前から言われてるけど」
「メリケンの週間なんぞ知らんな。大日本帝国では、一週間は月月火水木金金だ」
「ナニソレ怖い」
言葉とは裏腹に、放蕩者の義理の弟はクスリと笑って書類を振った。
「まぁまぁ、そう怒らないでよ、藤埜大尉」
「貴様に階級で呼ばれるのはゾッとする」
藤埜 誠は眉間に皺を寄せて、ヒラヒラと弄ばれる書類を引ったくり返した。
「あんまり冷たくされると俺も悲しいんだけど」
「野郎に優しくされて嬉しいか、貴様が?」
ふん、と鼻を鳴らして再び書類を検分し始める誠に、それもそうだね、と、背後のエリックは納得したような声を出す。
「ちょっと想像してみたけど、まったく嬉しくないね。可愛い女の子に優しくされたい」
「報告不要だ。さっさと消えろ愚弟」
「二番目の兄さんは怖いなぁ」
楽しそうに喚く伊達男を視界から追い出し、誠はふむと書類の文字をなぞった。
「……花都 雪路、日本人か」
白い手袋をした自分の手。海軍時代と変わらない白い袖に金釦の軍服の袖を、少しの間見詰める。
「その子、〝狩人の試練〟通ったらしいよ」
ふと、背後から落ち着いた声が降って来た。
「……なに?」
振り向くと、ニンマリと口角を上げ、碧眼を細めたエリックは、自慢のブロンドを掻き上げて視線を窓の外に流す。
「一昨日の事件は知ってるだろ?メルヴィンの所であった」
「……なるほど、これが噂の新入りか」
書類を机に置いて、誠は腕組みした。
「……竜に対峙したか、悪くないな」
「誠は威勢の良いお嬢さんがお好み?」
「そういう意味ではない」
チッと舌打ちひとつ。椅子から立ち上がると、机に立て掛けていた軍刀を掴む。
「立場に甘んじてのうのうとしているような軟弱者は、男でも女でも気に入らんというだけだ」
軍帽を被り、ふん、と、藤色の目を眇めて見せる。
「もちろん、身内でもな」
「厳しいなぁ」
ふっと笑ったエリックは、で、と書類を指差した。
「この申請、どうするんだい?」
「可とする」
扉に向かって歩き出し、誠はそう言った。
「大日本帝国の、竜を御した女だ。多少は気骨ありと期待させて貰うとしよう」




