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「…どういう意味だ。返答によっては…容赦無く消す」
「ああ、語弊を招く物言いでしたね。…魔王の貴方とは相反する関係、立ち位置と申しましょうか。私達教会に属する者としては…ね」
含みのある言い方で言葉を切ると、懐から1冊のの古びた本を取り出した。そしてその本を涼へと渡し、姿勢で中身を読むように促す。
無言で受け取り、殺気をマクアン神父へ向けたまま読み始める。リビングにただ涼の秘技速読を披露するパラパラとページを捲る音だけがリビングに流れる。
この重い空気と沈黙に耐えられなくなった俺は、マクアン神父の誤解を解くことで解消することにした。
「あの〜マクアン神父?」
「なんでしょう…?」
「涼のことなんだけど、魔王っぽいオーラと言動だから誤解すんのも分かるんだけど、魔王じゃないですよ?」
涼に向けていた視線を俺に移し、さも当たり前のことだとでも言うように言った。
「リョウさんは…魔王ですよ」
「いや、だから誤解なんだって!確かに色んな属性の魔法サラッと使いこなせるし、怒ると怖いし、何か企んでる時の顔なんて悪鬼そのものだけど違うからッ!……涼は優しいよ」
今だって、きっと自分の為だけにマクアン神父に敵意を向けているんじゃない。俺に危険が及ばないように…自分か矢面に立って守ってくれているだけだ。
そんな慈愛の塊のような涼に、魔王なんて肩書きを付けられるのは…悲しい。
俯き、膝上に置いておいた悔しさに震え握られていた拳を見つめて黙り込む。言いたい事は沢山あるのに…言葉が続かない。
言いようのない様々な感情が体内に渦巻き、暴走しないように喉の奥に押し留まっている感覚。
痛い程の視線は感じるが、黙り込む俺にそれ以上マクアン神父は言葉を発することはなかった。殺伐とした空気がしんみりとしたものに取って代わる。
「…あんまり優也を虐めてくれるなよ。それは俺だけの特権だ」
パタン、と読み終わったのか、本を閉じるその音に反応したマクアン神父が俺に向けていた視線を涼へと移した。それに呼応するように、涼はマクアン神父に読み終えた本と一緒に視線を返す。
それを無言で受け取ったマクアン神父は懐へと仕まう。
「ご理解は頂けましたか?…ユウヤさんは違うと仰いますが、リョウさん。教典を読んだ貴方の…意見をお伺いしたい」
「……俺が魔王だ」
「涼ッ!?何言ってんだよッ!!涼が魔王じゃないってことは俺が1番良く知って…」
「…騒ぐな優也。マクアン神父、俺はお前を信用してねぇ。だからこの教典とかいう本も…信用しねぇ。だがな、下水楼の世界の住人達はこの本に書かれたことを常識として擦り込まれてる」
「…そうですね。貴方は下水楼の住人には…と少し違いますね、下水楼に住む人間達には…貴方は疎まれ恐怖され、滅されねばならない存在です。そして私達教会は…人間側の組織です」
涼とマクアン神父の間に再び険悪な空気が漂い始める。
が、2人の劣悪な雰囲気に目もいかない程、俺には理解が追いついていなく、ただ涼の俺は魔王だというその台詞だけがぐるぐると頭の中を回っていた。
涼が教典に認定された魔王…?マンホール下の下水楼という、住む世界は違えど同じ人間に恐怖され…命を狙われている…?
今も追われる身だが、それは1国…フォンデュ国だけでの話だと思っていた。それなのに、下水楼全ての人間が涼の死を願い実行しようとしてくるってこと、か?
そんなのって……




