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お母さん転生する  作者: 大島Q太
土木ギルド編
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03.お母さん、実験する

 


 グエンさんは帰ってきませんでした。仕方ないので三人で話をはじめます。

「今回の調査で分かったことですが」

 わたしは机の上で手を組んで、並ぶ顔をゆっくりと見ました。

「あの川は資源豊富です。魚のみならず、石や、カニなど……」

「堤防の調査です。河原の調査ではありません」

 ローランがぴしゃりと言います。


「堤防は、ちゃんと両脇に四キロメートルちかくありましたね」

「はい」

「つまり堤防の工事はちゃんとしていたということです」

「はい」

「両側なので計八キロメートルあり、それを材料費を引いた八白金貨で割ると、だいたい、一キロメートルが白金貨一枚となりますね。ここら辺、工事費としては妥当と思われます」

「そうですね」

 パロットさんが神妙にうなずきました。

「そこで思いついたのですが」

「思い付きでしゃべらないでください」

「大事な思い付きです。あの川を小さな模型でつくって、水害時の川の流れを再現してみませんか?」

「……なるほど、模型。いいですね」

 パロットさんが答えました。とってもキラキラした顔です。

「まあ、……男の子は模型が好きですね」


『よしこさん!』

「あなたより年上です」

「そうでした」


「お母様、模型はどうやって作るつもりですか?」

「この邸には、素晴らしい人材があります」

「……誰ですか?」

 ローランはのってくれるようです。

 わたしは胸を張りました。

「スコットさんです」

「「ああ!」」

 二人の声が重なりました。ええ、スコットさんは庭師兼家内修繕係です。荷馬車にもベンチを作ってくれるくらい手先が器用です。


「あの、それでしたら、カーミットさんにも声を掛けましょう」

 たしかに、カーミットさんは川の専門家です。今回私たちが感じた違和感を言語化してくれるかもしれません。

「……採用です」


 ということで、模型作りが決まりました。


「スコットさん、そういうわけなので模型作りをお願いしてもいいですか?」

 スコットさんはニコニコ頷いてくれました。


 これはあくまで水の流れを確認するための模型です。標高とか、そう言うのはいったん無視して、形だけを忠実に再現して堤防を作り、水を流すことにしました。


 地図を見ながら同じようなカーブの溝を掘っていきます。わたしもお手伝いして、掘った溝の横に堤防を作ります。パロットさんも腕まくりして手伝ってくれました。ここだけ見ていると、土遊びをしているように見えます。

 ピカピカの泥団子を玲奈ちゃんが見せてくれたのを思い出しました。

「お母様?」

 影が掛かって見上げると、ローランが怒った顔で見下ろしていました。その後ろにはカーミットさんが立っています。どうやらすぐに来てくれたみたいです。

「なぜ、泥団子を作っているのですか?」

「これは堤防の素です」

 にらみ合いをしていると、カーミットさんがすっと前に出てきました。


 わたしは立ち上がって、きれいな礼を取ります。

「カーミットさん、こんにちは。おいでいただきありがとうございます」

「何やら面白いことを始めると聞いたので」

 カーミットさんもこんにちはと、挨拶をくれてほほ笑みます。


「見ての通りです。S字の溝を掘ってそのわきに堤防を作り、実際、大雨の時はどんなふうに水が流れるかを見てみようと思いまして」

「……なるほど」


 そういうやり取りをしていると、スコットさんの溝堀りが終わったようです。

「私たちも急いで、堤防を作りましょう」


 そして、皆で堤防を作りました。

 集落のある部分は、枝で集落と書きました。……完成です。


「では、お水はスコットさんに流していただきます。どうぞ!」

 スコットさんがゆっくりとバケツを傾けて水を流しました。水が溝の中をゆっくりと進みます。やっぱりカーブのところは通りにくそうですね。

「スコットさん、どんどんいっちゃってください」

 スコットさんは、うなずいてさらに水を流しました。

「ああ、カーブのとこで水が溢れました。……あ、内側の堤防が流されています……なんてこと」

 集落が土石にのまれてしまいました。

「通常ここまでは水かさは増えません。ですが、やはりこの川の形に欠陥があるのがよく分かりましたね」

 カーミットさんがうなるように言いました。

「それとここの堤防……これがあることでちょっと水かさが増えるだけで、こっちのカーブに打ち付ける水が強くなっている気がします」

 あっと、思ったらローランがメモを取っています。

「さらに悪いことに堤防が流されるとそれが下流に堆積してしまいます。これでは、すぐに農業が始められなくなってしまう」


「スコットさん、あの溝の形をちょっと変えてもらってもいいですか?」

 スコットさんはうなずくと私の言った通り、カーブを緩やかにして繋いでくれました。このきついカーブのところは、遊水地として残します。あとは、内側の堤防を壊して、外側の堤防にも切れ目を入れて水を逃す場所を作りました。

 これが今回土木ギルドに提案する川の形を変える案です。


 また、溝を流しました。水は勢いよく流れます。それはさっきと一緒ですね。流す水の量を増やしました。勢いの増した水がカーブの堤防に当たると、そのまま遊水地に流れ込んでいきます。

「まあ!」

『すごいわ、よしこさん』


「下流を襲う水が減っている」

ローランが驚いて、目を見開きました。


 どうしましょう、これで問題点が見えてきました。



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