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予兆の把握

俺たちは共同戦線を敷いた後、玲が上妖を見たと教えてくれた岩場に行くことにした


柳一「まずは偵察だ、感づかれない様に三人で向かうことにする」

玲「それなら、まずは私ね」


柳一の提案に対して、玲が怯えを一切感じさせない声色で、真っ先に名乗りを上げた


玲「直接見たのはこの中で私だけだもの」

玲「私が行かなきゃ意味が無いでしょう?」


その声は凛としていて、勇ましさに満ちている


ミレ心「この人かっこいいのにゃ、私もこんな女の人になりたいのにゃ」


ミレが憧れのような視線を玲に向ける


柳一「それじゃあ、他に行く者は居るか」

ミレ「はい!私に行かせてくださいにゃ!」


柳一の募集に、ミレが決意を固めた声で参加の意志を示す


その目には並々ならぬ覚悟が籠っている


野助「良いのか!?ミレちゃん、相手は上妖だぜ」

ミレ「ちょっぴり怖いけど、みんなの役に立ちたいのにゃ!」


心配の声を上げる野助に対し、ミレがキッパリと言い張った


流石はあの岩熊を目の前にしても逃げ出さないだけの胆力がある


柳一「分かった、だがくれぐれも無理はしないでくれ」

ミレ「分かりましたのにゃ」


そうと決まれば、俺もやる事をするだけだ


宝『残りの枠には俺が入ろう』

宝『戦闘担当も必要だろう』


柳一「ありがとう、心強い限りだ」


柳一が感謝の言葉を述べて頭を下げる


そこからすぐにキリッとした表情に切り替わり、偵察組に作戦の概要を話した


柳一「三人一組になり、玲が怪しい影を見たと証言した岩場周辺を手分けして探してくれ」

柳一「今回の任務はあくまで妖怪の発見だ、見つけても戦闘はしなくていい」


柳一の説明を受け、俺達は首を縦に振る

 

玲「御意」

宝『了解した』

ミレ「分かったのにゃ!」


柳一「一つだけ守って欲しいことがある」


そう告げた柳一の声色と表情が、より一層真剣なものに変わった


それは正しく、歴戦の猛者として違わぬもの


柳一「絶対に生きて帰れ」

宝『任せろ』


そして、十数分でポーションや治療薬などを購入してアイテムの補充を済ませた俺たちは、上妖クラスの目撃情報があった岩場に向かった


――――火鼠の岩場――――


岩場に到着するとそこには、いかにも小さな生き物の巣だと言わんばかりの穴が複数空いていた


宝『これは、何かの巣か?』

ミレ「火鼠の巣にゃね」


そこで出てきたのは、一度何処かで聞いたことがある妖怪の名前だった


宝『火鼠、確か何をしても燃えない性質を持つネズミの妖怪だよな』

玲「えぇ、下妖クラスでは唯一の耐性持ちで、初心者が舐めて掛かって痛い目に遭っているわ」


玲の切れ長な双眸が複数の穴を捉える


玲「一匹一匹は弱いけど、火鼠は集団で動くのよ」

ミレ「私もよく見た事があるのにゃ、村でよく追いかけ回されてるのを見てたのにゃ」


宝『そういえば、ミレも化け猫の村出身だったな』


その時だった、重鈍な殺意が俺たちを捉える


宝『この感覚、岩熊に似てるな』


その時、玲は既にミレに指示を飛ばしていた

 

玲「みんな、臨戦態勢に入って」

ミレ「はいにゃ……!」


周りにも気を配れる視野の広さ、中々だ


ミレも一瞬気圧されるも、直ぐに腹を括って臨戦態勢に入った、心が強い


その時だった、岩場の陰から何かが這い出てくる


宝心『あの感じ、岩熊より格上だな』


そして、その存在の顔が見える




その存在には、顔の中央に大きな目がひとつあり背丈は中学生ほど、上半身は裸で下半身には腰蓑を着用しているだけだった


玲「な……馬鹿な」


その姿を見た玲の顔色が変わる


 〔『上妖』山童(やまわろ)


玲「なんで、こんな所に山童(やまわろ)が」

玲「ありえない、上妖の中でも上の下辺りよ」


雰囲気が一気に変わった玲を見て、ミレも僅かに震えが出始める


ミレ「玲、さん?」

宝『大丈夫だ二人とも、今回はあくまで偵察だ、戦う必要は無い』


そうフォローはするものの、玲とミレは緊張が解けない面持ちで固まってしまった


その時、巣から数十体の火鼠が出てくる


火鼠「チュー!チュー!」


そして、突如住処に近付いてきた山童に襲いかかって行った


ミレ「ご主人!、戦いが始まるのにゃ」

宝『あぁ、見届けるぞ、山童の能力を知る機会にもなる』


しかし、ここで俺の中にはひとつの疑問が浮かぶ


山童は圧倒的な格下である火鼠を相手に、果たして妖術を使うのか?


無論、答えは否だ


山童「ぐげげげげ!」


山童は、単純な手足の振り下ろしの数発で、襲いかかってきた火鼠の群れを全滅させた


ミレ「火鼠の群れが、あんなにあっさりと」

玲「勝負にもならなかったわね、」


山童の様子を凝視しているふたりの肩に、俺はポンと手を乗せた


宝『帰還するぞ、情報は十分に得た』


そして、二人を諭して山童に気が付かれないようにその場を後にした

 

宝心『俺なら、山童を一撃で消し飛ばすなんてのは簡単なことだ』

宝心『だが、山童の能力が分からない以上下手に手を打たない方が街のためだ』


もし仮に、殺したと同時に大地を直接崩落させる能力とかの場合、今殺したところで柳一や街の全員が犠牲になる


それは今回の作戦では俺たちの敗北を意味する


宝『ならば、ここは情報を持ち帰る』


その時だった、


玲「が……ぇ……」


玲が苦しげな声を上げて顔を青ざめさせる


ミレ「どうしたのにゃ!玲さん!」


その首元には、白い布のようなものが巻きついていており、そのか細い首を締め上げていた

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