化け猫の信念
関所前は、妖怪と人間が入り交じる大混戦の渦中だった。そこに近づく膨大な妖気を感じ取り、俺は眉を寄せる。
膨大だ。しかし、どこか歪んでいる。ひときわ強大な妖怪の存在ではなく、無数の妖怪の群れ――それこそが、迫る妖気の正体だった。
「この感じ……敵の援軍か」
「増援は我々で食い止める!宝殿と柳一殿は本丸へ向かえ!」
そう叫ぶのは、ホップタウン警察隊の隊長、田所。中妖クラスの戦闘者で、その眼光は群れの中でも鋭く光る。
「宝、残る上妖は最後尾で待機している。そちらを狩りに行くぞ」
「了解!増援の殲滅は頼んだぞ、田所隊長」
関所前、妖怪と人間が入り乱れる大混戦――その渦中に、膨大な妖気の接近を察知する。
圧倒的な数だ。しかし、単体の巨大な妖怪の匂いはない。
無数の妖怪が群れを成し、波のように押し寄せてくる。――それが、異様なズレを帯びた妖気だった。
「この感じ、敵の援軍か」
「増援は我々で対処する! 宝殿と柳一殿は本丸を叩け!」
ホップタウン警察隊の隊長、田所の声が戦場に響く。中妖クラスの実力者が威風堂々と指揮を取る。
「宝、残りの上妖は最後尾で待機している。そちらを狩る」
「了解! 増援の殲滅は任せたぞ、田所隊長」
俺の呼びかけに、田所は軍刀を高く掲げて応じる。
次の瞬間、冒険者たちと増援妖怪の群れが激突する。大地が裂けるかの衝撃が走り、粉塵と瓦礫が渦を巻く。
「死ぬなよ、田所さん……」
消え入りそうな声で柳一が呟くのを横目に、俺たちは敵の本陣へ突撃した。
――――山童戦――――
その頃、ミレと玲も妖気を立ち上らせ、強敵に向かい合う。
「ホップタウンには、一歩も入れさせないのにゃ」
「あなたには、ここで成仏してもらうわ」
玲が素早く南蛮銃を放つ。妖力を纏った弾丸は妖怪にも有効なはずだ。
「グキキ!」
山童は飛び跳ね、弾丸を躱す。反射的に玲へ飛びかかるその瞬間――
「やらせないのにゃ!」
[『土妖術』土爪]
ミレの巨大な紫色の爪が宙を裂き、山童の腕を斬り裂きつつ後方に弾き飛ばす。粉塵が紫の閃光に染まり、地面が爪痕を残す。
「感謝するわ」
玲は軍刀を抜き、地面で跳ね返る山童へ突撃。
高々と振り上げられた刃が月光を反射し、夜の闇を切り裂く。
「ここで散れ!」
「グキキ!」
妖力を纏った一撃を山童は白刃取りで受け止める。しかし、隣には攻撃態勢を整えたミレがいた。
「隙ありにゃ!」
横からダガーを振り上げる刹那――
[『超声妖術』爆音波]
「ギエェェェェェ!!!!」
山童の叫びが空間を震わせ、超音波が衝撃波となって前方に放たれる。
「に"ゃ…………!!!」
ミレが白目を剥き、身体が弾かれ、地面に倒れ込む。
「ミレ!」
音系妖術――危険を直感する間もなく、山童は玲へ飛びかかる。
[『水妖術』激流一射]
「グギィ!」
脇腹に激流を纏った弾丸を叩き込み、風穴を作るも、山童の勢いは止まらない。
「グケケ!」
「くっ……止まらない!」
玲の喉元を手で掴む山童。咄嗟に腰の軍刀の柄に手を掛ける。
「離れろと言っている!」
[『水妖術』水面軍刀]
鞘から引き抜かれた軍刀は、激流の刃に変化。水の奔流が山童の腕を切り裂く。
「グギ!」
痛みに顔を歪め、山童は手を離して飛び退く。距離を取り、腹を膨らませる。――大技か。
[『超声妖術』阿鼻叫喚]
「ギヤァァァァァァ!!!!」
プラズマを迸らせた超広範囲の爆音波。周囲の空間を捻じ曲げ、瓦礫も空気も渦巻く。
「が……あっ!」
「ゲボっ!」
玲が爆風に吹き飛ばされ、頭を打ち付けて力を失う。
倒れ込んだミレも、超音波に押し流され、木に腹を叩きつけられ地面に崩れ落ちる。
関所前の混戦は、妖怪と人間の命の火花が交錯する、恐怖と興奮に満ちた戦場となった。




