表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/101

妖怪喰い


「お前たち人間が使ってるのはなぁ……」


 ワロドンが両腕を広げ、戦場を見下ろす。


「オイラたち妖怪の妖術を真似て作った、

 火・水・木・土・金――五行の模倣品だけだぁ!」


「そんなモンで、オリジナルに勝てるわけがねぇよぉ!!」


 地面に転がる野助を見下ろし、嘲笑が響き渡る。

 その一歩一歩が、地面を震わせる。


 ――踏み潰される。


 そう思った、その瞬間。


 背後から、閃光のような一撃が走った。


「だからと言って――俺たちは、諦めんぞ!!」


 壬生郎の槍が、ワロドンの右脾腹を完全に貫通する。


「ギィィィッ!? いだぃぃぃ!!」


 妖怪の絶叫。

 赤黒い妖血が噴き上がる。


「これで終わりだ!

 地獄で他の妖怪どもに伝えてこい――

 ポップタウンに、手を出すな!!」


 壬生郎は槍を振り下ろそうと――した。


 だが。


「……なーんちゃって」


 その声に、背筋が凍る。


 貫かれたはずの脾腹。

 裂けた肉が、音もなく塞がっていく。


「……何っ!?」


「潰れちゃえぇぇぇ!!」


 ワロドンの身体が、爆発するように肥大化する。

 数メートル――いや、それ以上。


[『拡大妖術』巨大化(ジャイアント)


「全身……巨大化だと……!」


 寝返りの遠心力を乗せた巨大な腕が振り下ろされる。


 直撃。


 壬生郎の腹部に叩き込まれ、

 肋骨が砕ける音が戦場に響き渡った。


「ガフッ……!」


 裏拳が追撃となり、壬生郎の身体は地面に叩きつけられる。

 大量の血が地面を濡らす。


「ゴホッ……ゲホッ……!」

「壬生郎!!」


 野助の叫びも届かない。


 ワロドンはさらに巨大な拳を振り上げ、今度は野助を狙う。


「ググッ……! ガァァァ!!」


 鉞で必死に受け止めるが、

 野助の両足が地面に沈み込む。


「やめろォォ!!」


 血を吐きながら、壬生郎が立ち上がる。

 そして、再び槍を突き立てる。


「無駄だよぉ!!」


 ワロドンは嗤い、さらに力を込める。


(……このままじゃ、俺も野助も死ぬ)


(どうする……どうすれば……)


 壬生郎の脳裏に、ひとつの記憶が浮かぶ。


 ――曇天の下、泥まみれで戻ったギルドマスター、ケンジ。


「上妖はな、再生する。だが“再生途中の肉”を食わせると、妖力の循環が乱れる」


 ――荒唐無稽な話だと思った。

 だが、今は。


 賭けるしかない。


 壬生郎は、歯を食いしばった。


(どうせ死ぬなら……足掻いてやる)


「野助!! もう少しだけ、抑えてくれ!!」

「任せろォ!!」


 野助が全力で踏ん張り、鉄槌を受け止める。


 その隙に、壬生郎は駆ける。


「ポップタウンに――手を出すな!!」


[『水妖術』五月雨突き(さみだれづき)


 激流のような連続突きが、脇腹を貫く。


「だから無駄だって――」


「――これなら、どうだ!!」


 壬生郎は槍を伝って飛び込み、

 再生を始める傷口に歯を突き立てた。


 肉を噛みちぎり、妖力ごと喰らう。


「ギ……ギギャァァァァァァ!!」


 ワロドンの絶叫が、戦場を揺らす。


「野助!! 今だ!!」

「応よォォォ!!」


 野助は鉞に大量の土を纏わせ、振り上げる。


[『土妖術』土塊の斧(つちくれのおの)


「貰ったぜぇぇ!!」


 一閃。


 断ち切られた脇腹から、妖力が霧散する。


「ぎゃぁぁぁぁ!!!」

 

「……ゲケケ……なん、で……オイ……ら……」


 巨体が崩れ落ち、

 ワロドンの身体は妖力と共に消滅した。


「……終わった」

「勝ったぞォォ!!」


 歓声が上がる。


 ――だが。


 誰一人、安堵はしなかった。


 この勝利は、

 次に待つ“本当の地獄”の、始まりに過ぎない。


 ミレと玲の戦場では、

 これまでの人生を塗り替える試練が、

 すでに牙を剥いていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ